迷惑千万な女神たち 2
しかし言葉の意味に気付いたようで、ハーデスの表情は徐々に歪んでいった。
「調べるとなると、外に出るんだよね……?」
「はいっ。いいですよねー、日本! 私、一度観光してみたかったんですよ! 二人も初めてですよね?」
「いや、俺は行ったことあるッスよ。ハーデス様のパシリで、裁判官の人と一緒に」
「ぱ、パシリって言わない! 確かに通販で頼んだゲーム取りに行かせたけど!」
「それってパシリじゃないですかね……?」
「うう……」
嫁と愛犬の波状攻撃に、反撃の手段を失うハーデス。
すっかり落ち込みながら、彼はテレビのチャンネルを戻した。こっそりポーズ画面にはしておいたようで、ゲームの進行状況に異常は見られない。
「……でも確かに、放置しておくのもマズイよね」
「ですよね!? これはもう、私達が直に調査を行うしか――」
「け、ケルベロス、お願いできるかな?」
「嫌ッスね」
玉砕だった。
しかしハーデスはどうにか解決策を導きたいようで、しきりに喉を唸らせている。
「……?」
と、部屋の外から足音が。
誰の者か判別できるような、特殊能力を持ったヤツはこの部屋にいない。しかしは来客の予定はない筈で、二柱と一匹はそれぞれ首を捻った。
「ハーデスちゃん、ハーデスちゃーん!」
「む……!」
声を聞いた途端、ペルセポネの眉に力が籠る。
ハーデスとケルベロスも、厄介な吾人が迫っていることに溜め息を隠せない。
「ハーデスちゃんっ!」
「あ、アプロディテ……」
部屋に入ってきたのは、美の女神。
三人が同時に悟った。
ああ、こいつが黒幕なんだろうな、と。