兄に勝る弟などいないっ! 10
「えっ、い、今は?」
「ナヨナヨですかねえ」
トドメの一撃だった。
ハーデスは今度、哀れな顔つきのまま机に突っ伏す。犯人は笑ったままで、何一つ深刻に捉えていなかった。
まあ、ハーデスにとってはいつもの痛撃である。
「ゼウスみたいに皆が慕ってくれるようになるには、どうすればいいんだろうね……」
「え、旦那様は皆の人気者ですよ? 今日だってあのお二人、来たじゃないですか」
「それもそうだけどさ……こう、たまには威厳を振り撒きたいよね。我こそは冥界王、ハーデスであるぞ! みたいな感じで」
「えー、似合いません」
ますますショックの度合いを深めていくハーデス。
でもまあ、こんな主人だから冥界はのんびりやれてる気もする。地上で大手を振ってるゼウスやポセイドンと違って、大騒ぎを起こすような人ではないからだ。
「よぉし息子よ! 今宵はワシとヤケ酒じゃ!」
「え、いや、我お酒苦手なんだけど……って父上くさい! 酒くさい!」
「気にするな! ほれ、飲め飲めぇーい!」
「うぼぼ……!」
滝のような酒を浴びせられるハーデス。
ケルベロスとペルセポネは、それを笑いながら見届けていた。