兄に勝る弟などいないっ! 6
「へへ、伯父貴。俺はギリシャじゃヘッポコだが、ローマにいけば違うんだぜ? 何せ建国者の父親だからなあ!」
「なん、だって……!?」
そう。ギリシャでは人気がなかったアレスだが、ローマでは地位がグレードアップしている。名前もマルスというものに代わり、市民から多くの信仰を集めたとか。
ちなみにハーデスは、ローマでもあまり扱いが変わらない。
「はは、俺は伯父貴とは格が違うのさ。ついでに言っちまうと兄貴ともな」
「ぐ、ぐぬぅ」
「ふっ、僕にも一つ、君には出来ないことをやってのけたけどね」
自信満々に言うヘパイストス。確かに、彼の鍛冶の上では相当なものだ。神々や英雄の使用する武具は、有名どころを彼が抑えていることも珍しくない。
例えばアポロン、アルテミスの二柱。二人がそれぞれ使う弓は、ヘパイストスが制作したものだ。
また、トロイア戦争に参加した大英雄アキレウス。彼の武具一式も、この鍛冶神が作り上げた逸品である。ハーデスたち兄弟に武具を与えたキュプクロスを従えているところも、その腕を証明する根拠だろう。
しかし彼には、まだ自慢の品? があった。
「なにせ僕は、美少女をこねくり回したことがあるんだよ!」
また違う方向性で、空気が白けた。