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兄に勝る弟などいないっ! 4
「なるほど、確かにね」
同調を見せたためか、アレスは焦りを表に出す。
……しかしまあ、彼も懲りない男だ。以前ヘパイストスに浮気を見抜かれ、神々の前で見世物にされたというのに。
地上世界に例えて言うなら、有名芸能人が不倫現場を押さえられ、週刊誌に掲載されるようなものだ。ハーデスやペルセポネは現場を目にしていないが、不倫現場を押さえられたのは事実らしいし。
「伯父上、アレスに一言お願いします。どう考えても、彼に非があるのは事実です」
「おいおい兄貴、アンタの嫁さんは夫婦生活に納得いかねえから浮気したんだぜ? その事実を認めろよ」
「貴様のような脳筋と本気になるほど、彼女は甘くないぞ」
「ああ!? 文句あんのか兄貴!?」
「あるとも。なんならこの場で実力行使と行こうか?」
「はっ、望むところよ!」
激しく火花を散らす二柱。ハーデスは面倒臭そうに溜め息を零し、宴会の参加者たちは彼らの対立にまったく興味を向けていない。それぞれがそれぞれのことに夢中だった。