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兄に勝る弟などいないっ! 3
実はアレス、軍神という肩書きがありながら、ヘパイストスに敗北しているのである。まあ彼も武器を作る神様なわけで、戦いとまったく無関係ではないのだが。
「ああもう、その辺りにしなよ」
これ以上の言い合いを聞かないようにするため、ハーデスは嘆息混じりに呟いた。
甥たちは納得していないものの、一先ず言葉の矛を収める。……さて、問題はここからだ。冥界の主として調停の経験はあるが、どう上手く収めるか。
「うーん、アレスはどうしてもアプロディテから手を引きたくないの?」
「あたりめえだろ伯父貴。あんないい女が他にいるかってんだ。伯父貴も分かるだろ?」
「そりゃあ美の女神だし、もの凄い美人――痛い痛い痛いっ!」
テーブルの下にある足を、強烈に踏みつける誰か。言うまでもなくペルセポネである。ああ見えて、夫の不貞には監視の目を開かせているようだ。
「……へ、ヘパイストスは、見逃す気はないんだよね?」
「もちろんです。確かに彼女は貞操観念がユルいですが、アレスについては一線を超えていますからね。肉体関係までは許容できません」