ようこそタルタロスへ! 5
「しっかし、お前がこんな美人を連れてくるとはなあ。どうやって捕まえた?」
「いや、それはまあ、いろいろありまして」
「なんじゃ、ハッキリせんやつめ。ゼウスにそそのかされたか?」
ギク、と言わんばかりにハーデスの肩がふるえる。
さすがに父と言うべきか、クロノスは息子の表情で事実を悟った。
「まったく、あやつは。……ワシがお主らを吐きだした時もそうじゃった。父上! これマジ美味しいッスよ! とか真顔で言って、物凄くマズイもん飲まされたんじゃぞ!?」
「ああ、あれは酷かった……」
「ぬ、お主らワシの体内におったから、あの味を少しは分かるわけか」
「一応は……」
やっぱり思い出したくない過去なのか、ハーデスの顔色がみるみる悪くなる。
そんな主人に同情しつつ、ケルベロスは肉を頬張っていた。
チラリと横目を使うと、息子の小さな背を励ます父親の姿がある。食べて元気を出せと促しているようで、クロノスは巨体に相応しい食いっぷりを見せていた。
そこへ訪れるのは。食事を運びまわっている一人の人間。
「あれ、シーシュポス君?」
ハーデスとペルセポネ、ともに見覚えがある罪人だった。