来ちゃったよ!? 7
兜作戦は失敗に終わり、ハーデスの部屋にはいつも通りの光景が戻ってくる。
地上にペルセポネを戻したい気持ちも、今は薄そうだ。夫婦で仲睦ましく、何かのゲームをプレイしている。
「いやー、パル〇ナの鏡、面白いですねー。また旦那様がラスボスですけど」
「うん、そうだね……まあでも、エロス様が相手じゃ仕方ないかな。あの方もけっこう苦労してるしね」
「気付いたら幼児化ですもんねー」
影分身もだよ!? と自虐していたこともあったとか。
エロスはギリシャ神話において、四柱の原初神、その一画を担っている。人間界ではキューピットでお馴染みだろう。ハーデス達がプレイしているゲームの主人公も、そこから取ってピット、という名前だそうだし。
とはいえ彼、古代ローマの時代には幼児化し、更には複数体存在することになっていたとか。元からあった青年、あるいは髭の生えた男性というイメージは、人間界だと馴染みの薄いものだろう。
「やっぱり旦那様としては、エロス様に同情します?」
「うーん、難しいかな。ほら、我ってローマの人にはちょっとした恩があるし。あ、いや、ギリシャの人たちが嫌いってわけじゃないからね?」
「ほほう。で、恩ですか?」
疑わしい眼差しを向けつつ。ケルベロスとペルセポネは思案する。
ローマと彼の関係と言えば、ギリシャから影響を受けた神話だろうか。ハーデスのローマ神話における名は――
「ああ、富める者、ですね?」
嫁ですから、と言わんばかりに、ペルセポネは自信の籠った解答を出す。
「そうそう。我、ローマだとプルートン、富める者って意味があるんだよ」