来ちゃったよ!? 2
「うー、どうしてですかっ? 私は旦那様とイチャラブ夫婦生活を楽しもうと思ったのに……」
「いやいや、地上の方さ、いま春でしょ? 君がいなくなったらデメテルが仕事サボるじゃないか」
「鏡を見てから言ってくださいっ、旦那様!」
「うっ」
一撃必殺の言葉であった。
三つの顔を駆使して頷くケルベロスだが、ハーデスの指摘にも正当性はある。
ペルセポネの母、デメテルは豊穣の女神だ。人間界の気候にも関係があり、彼女の機嫌を損なうと冬が訪れるという出来事もあったりする。
具体的に言うなら、ハーデスによるペルセポネの誘拐。
「確かにお母様は、私が冥界にいる間、地上を冬にするとお決めになりました。ゼウスお父様に対する嫌がらせとして」
「まあ確かに、アイツの無責任なアドバイスと約束は、批難しなきゃいけないことだけど……」
死者が増えると嫌なんよね、とハーデスがぼやく。ペルセポネには聞こえていたかどうか。
ハーデスによる嫁の誘拐事件は、人間界における四季の発生源として語られている。豊穣の神であるデメテルが、娘の誘拐に悲しんだためだ、と。
勿論、この当人達に当てはまることではない。確かにこっちのデメテルも冬を起こしているが、あくまでもゼウスに対する非難声明。自分のミスを認めろ、というやつである。