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彼女は生き物に好かれやすい  作者: 彼岸花
第十六章 異種族帝国

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幕間十六ノ十七

 深い、深い、森の中。

 彼女はそこにぽつんと位置する、小さな池で目覚めた。

 キョロキョロと辺りを見渡す。濁った水は見通しが悪く、十数センチ先を見るのがやっと。そのたった十数センチの範囲内にあるのは積み上がった落ち葉と、貧相な水草が数本だけ。彼女にとって見慣れた景色であったが、しかし彼女のちっぽけな脳は別の事を考えていた。

 ――――なんと地味で変わり映えのしない景色なのか。

 彼女は思った。こんなところに居ても仕方ないと。これまで『食事』と『睡眠』と『恐怖』ぐらいしか感じた事のない脳が、初めて『飽き』を覚えたのだ。そしてその飽きは、彼女に外の世界への『好奇心』を与える。

 この濁った水の外にある世界は、どんな世界なのだろう?

 薄汚れた水と、腐りかけた落ち葉と、枯れかけた水草以外の何かが、この薄汚れた水溜まりの外にはあるのだろうか?

 彼女は夢を抱いた。しかし彼女の頭は、彼女の夢を砕くぐらい聡明だった。彼女は、自分が水の外では生きられない事を知っていた。

 水の外への想いを募らせていると、ごぽごぽと水を掻き分ける音が聞こえてくる。何か、大きな生物が迫っている……彼女は危険を察知し、何処かに隠れようとした。されど今の今まで考え込んでいたが故に、彼女の行動は間に合わなかった。

 濁った水の彼方から、大きなナマズが姿を現した。

 しまった、と思った時にはもう遅い。ナマズは大きな口を開け、周りの水ごと彼女を飲み込もうとする。彼女は咄嗟に泳いだが、ナマズの吸い込む力には抗えない。

 死にたくない!

 彼女は恐怖を感じた。けれどもそれでナマズが食べるのを止めてくれるなら、食物連鎖は成り立たない。迫り来るナマズの口に、彼女は最後の抵抗とばかりに渾身の力で尾ビレを振るい、

 ナマズの頭が、ぐちゃりと潰れた。

 本当に、ぐちゃぐちゃになっていた。頭の骨などないとばかりに、或いは透明な巨人の手が握り潰したかのように。

 どんなに恐ろしいナマズであっても、頭が潰れては生きていけない。ぐったりと横たわり、動かなくなる。

 彼女は天敵の亡骸をしばし呆然と眺めていたが、ふと、動けと念じながら腹ビレを振ってみた。

 すると池の中の水が、まるで嵐でも起きたかのように掻き回される。落ち葉の層が舞い上がり、水草が千切れ飛んだ。止まれと念じてみれば、ヒレの動きがなくとも水の流れは止まった。幻覚か夢かとも思ったが、水中を漂う落ち葉の一欠片が自分の頭に落ちてきたので、本当に起きた事なのだと分かる。

 彼女は理解した。自分には、水を自在に操る力があるのだと。

 この力があればどんな敵も恐ろしくない。ナマズも、ザリガニも、大人も、兄弟姉妹も、自分を襲おうとする奴等は全員皆殺しに出来る。何も恐れる事はない。

 いや、それだけではない。

 上手く水を操り(・・・・・・・)自分を水で(・・・・・)包み込めば(・・・・・)……

 彼女は思った事を実践した。周囲の水を操り、自分の周りに固定。操作している水を動かし、岸辺を目指す。

 そして彼女を包み込む水は、丘の上へと上がった。

 水は崩れず、球体のような形を維持したまま。どうして液体の水が地上で崩れないのか? そもそも自分はどうやって水を操っているのか? 彼女にはよく分からない。分からないが、そんなのは大した問題ではなかった。

 彼女にとって大事なのは、焦がれていた外の世界を見る事が出来たという事実のみ。

 正面にそびえる崖と、その崖の上に鬱蒼と茂る森。池の真上にぽっかりと開いた空から見えるのは、どんよりとした曇り空。お世辞にもこれらは、明るくて眩いものとは呼べない景色だ。

 だけど、濁った水と腐ったゴミしか知らない彼女にとっては、心奪われるほど素敵なものだった。

 彼女は思った。もっとたくさん、綺麗な景色を見たいと。

 彼女は知っていた。この世界にはまだまだ色んな景色があるという事を。

 彼女は求めた。知識にしかない、見た事のない世界を。

 そして彼女は決めた。


















 まずはこの山の麓に広がる人間の世界を見てみよう、と。























 第十七章 ベイビー・ジェネレーションズ







なんとも見覚えのある能力。

それから分かりやすいサブタイ。

まぁ、何時ものです(それで許されると思っている)


次回は8/23(金)投稿予定です。


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