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ポイント

ジオさん達パワーアップ

 窓からの明かりで目覚めた時、俺の目の前にあったのは心配そうなユニの顔だった。

 なにやら真剣に、じー……っと俺の顔を注視している。


「おい、なんだユニ。昨晩あれほどサービスしたってのに、まだ物足りないか?」

「じっ、ジオ様っ……違います! ただっ! ちょっとこれが気になっただけでっ!」


 と、顔を赤くしてユニが指さしたのは俺の顔から30センチほど離れた空間・・

 そこには何も無い。例の『窓』が小さくなって浮かんでいるだけで。


「……おい、まさか見えるのか? その窓?」


 思わず半身をベッドから起こしてユニに問いかける。

 昨日は確かにユニには見えていなかったはずだ。

 ヤボーや、ギルドの者達にも見えてはいない様子だったし、てっきりこの窓は俺だけにしか見えないものだと思っていたが。

 俺は『窓』を通常のサイズに戻し、ユニの目の前になるように体勢を調節する。


「あ、大きくなった……やっぱりこれ、ジオ様が操っているんですね。よかったぁ……」

 

 手を胸に当てて息を吐くユニ。

 ああ、そうか、こんな得体の知れないもんが俺の側に浮かんでりゃ心配するわな。

 それで気になって見ていたのか。


「そうか、心配かけたな」


 しかし何でいきなり見えるように……って、そういえば夢現にユニがパーティにどうとか……『声』が言っていた気がするな。

 ……もしかしなくても、やっぱり『声』のせいかよ。


「でもこれ、古代語と高等古代語で書かれてますね。アイテム、スキル、装備……一体何に使う物なんですか?」


 ……おい、今、すらすらっと……え? 読めるの? 高等古代語?


「おい……ユニ、お前高等古代語、読めるのか?」

「はい、全部では無いですけど……私の母はまじない士でしたし、奴隷商の元でも付加価値を付けるために勉強はさせて貰ってましたから……」


 おおう。

 奴隷商がユニは教養がある、とは言っていたが……まさか高等古代語が読めるレベルだとは思わなかったな。これは嬉しい誤算ってやつだ。


「ふむ……よし、ユニ、ここに書かれている文の意味を一通りざっと教えてくれ」

「は、はいっ。私でお役に立てるのでしたら!」

「おう、立つ立つ。ユニのおかげで色々分かりそうだ」


 目の前にあったユニの頭を右手でぽんぽんと撫でてやる。


「ん、んぅー……」


 気持ちよさそうに目を細めるユニ。


「よし、それじゃあ早速……朝飯を食ったら、外で色々試しながら確認してみるか」


 ぐりぐりと俺の右手にすり寄ってきたユニの頭をもう一回ぽん、と撫でて俺はリビングに向かったのだった。


          ※


 朝食後、家の外に出て、早速ユニと『窓』の検証を始めることにする。

 その前にざっと化鳥の谷で起こったことをユニに説明した。


「……聞いたことがあります。いにしえの英雄達は、今とは比べものにならない位多種多様なスキルを持ち、信じられない力を発揮したと。これはその秘密の一端なのかもしれません」


 きらきらと知的好奇心に瞳を輝かせて、こっちを見つめてくるユニ。 

 ふうむ。古の英雄達もこんな『窓』を持っていたって事なのか?

 ……まあ、その辺は今考えてもどうしようも無い。

 この『窓』がどういう物なのか、を把握するのが先だな。

 とりあえず窓の一番最初の画面を表示させてユニに見せる。

『声』が『しすてむうぃんど』って呼んでいた窓だ。


「これは……窓枠に書いてある文字は……し……システムウィンドウ、ですか。右上にはMAP……地図と。……窓の中には上から順に『アイテム』『スキル』『装備』『ステータス』『ポイント使用』『エクスチェンジ』……と書いてありますね」


「おう、アイテムとスキル、マップはいい。問題はそれ以外だな。まずこの……なんちゃらって字が装備って読むんだな? ……しかし何の意味があるんだ? 装備は装備だろうに」

「……確かに。ですが、先ほどのお話を聞いたところでは、それぞれ信じられない効果があるように思えますが」

「ふうむ……まあ意味からすれば危なくはないだろう。とりあえず押してみるぞ」

「は、はい」


 今までの例からして俺に不利な現象は起こらないはずだ。

 俺は意を決して、『装備』の文字を押した。

 すると、『窓』の表示が切り替わり、剣や鎧のマーク、それに古代語がいくつか現れる。


「あー……? 『アイテムうぃんど』と何が違うんだ? 『アイテムうぃんど』はこのマークを押すと武具が実体化したんだが」


 ちょい、と鎧のマークを触ってみる。すると――


「うぉっ!?」


 俺は上着とズボンだけの軽装だったのだが、一瞬で硬革の鎧(ハードレザーアーマー)の姿になっていた。

 これはあれだな。化鳥の谷で、俺が『アイテムうぃんど』に格納した鎧だ。


「……すごいです。一瞬でこんな……」


 ユニが惚けたように俺の姿を見て絶句している。


「どうやら『装備』は文字通り……一瞬で装備品を交換する機能があるようだな」


 鎧ってのは脱着するにもいちいち手間と時間がかかるもんだ。

 軽鎧程度ならまだましだが、全身板金鎧フルプレートアーマーなんざ、1人では着られもしねぇ。 それが一瞬ですむってのは、かなり利便が良い。

 更には複数の装備を『アイテムうぃんど』に入れておけば、相手の攻撃に対して最適な装備を切り替えながら戦える、という訳だ。

 意外と使える機能かもしれんな。


「ふむ。『アイテムうぃんど』から実体化させて装備するのが基本だとしたら、こっちは応用か。よし、じゃあ次だ。『すてーたす』ってのは?」

「……たぶん、地位……とか、状態って意味だったと」


 ユニが首をかしげながらも教えてくれる。

 ふむ、状態、ね。

 とりあえず、押してみると、新たな窓が2つ開いた。


「2つ?……『すてー……たす……うぃんど』?」

「はい、どちらにも『ステータスウィンドウ』と書いてありますね。ええと、これは……どうやら私達の状態を数値化して表したもの、らしいですね」


 む。確かにそれぞれの『窓』には俺とユニの名前が書かれている。

 所々高等古代語部分は読めないが、ユニが訳してくれたので以下にその内容をまとめてみよう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ジオ・ウルマ  42歳

 総合    LV18

 レンジャー LV18

 生命力ヒットポイント 198/198 

 魔力マジックポイント 135/135 

 CPチャクラポイント  10/10 


ステータス

    基本値    実効値 

 腕力 15+1   43

 頑健 11     30

 精神 15     41

 速度 16     43

 器用 17     46

 賢明 12     32


 残スキルポイント18 

 残ステータスポイント18


称号

 『不死者』『不屈の挑戦者』『導く者』『ガラスの腰』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ユニ・クラウベール  22歳

 総合    LV4

 ソーサリス LV4

 生命力ヒットポイント 32/32 

 魔力マジックポイント 36/36 

 CPチャクラポイント  5/5 


ステータス

    基本値    実効値 

 腕力  8     10

 頑健  8     10

 精神 18     23

 速度 13     17

 器用 15     20

 賢明 17     22


 残スキルポイント4 

 残ステータスポイント4


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 こうしてみると、どうやら『LV』というのは総合的な強さ、のことらしいな。

 ギルドで言えば、○○級とかに近い概念だろう。

 魔物を倒せば倒すほど、比例して身体能力が上がっていくのはよく知られた現象だが……

 魔物とほとんど接触したことの無いユニのレベルが低いことを考えれば『LV』=『総合的な強さ』としても辻褄つじつまが合う。

 強さがすべて数字で割り切れるか、というと複雑な思いもあるが……

 あくまで目安としてなら有効だな。


「次は『ポイント使用』か。何のポイントなんだ?」


 ポイント。ポイントなぁ……そういえば、ハーピークイーンを倒した時に、あの『声』が『~ポイント未使用で……』とかなんとか言っていたな。

 とりあえず危なくなさそうなので押してみる。

 すると今度は『スキルポイント』『ステータスポイント』と言う古代語が表示された。

 それらをユニの力を借りながら色々いじってみた結果、『ステータスポイント』は『ステータス』基本値に振り分ける事が出来る……ということが判明。


「……おいおい……これ、振り分けた途端に強くなるって事か?」

「おそらく。古代の勇者様の反則的な能力もこの方法を知っていたからかもしれませんね」


 ……なんか反則くせえが……強くなれるかもって誘惑には勝てねえな。

 振り分けられるのは……俺が18ポイント。ユニが4ポイントか。

 ということは、LVと同じだけポイントがある……ってことか?


「ジオ様?」

「お、おお……そうだな、とりあえず試してみるか。まずは……頑健に5ポイント」


 そう意識した途端、ポイントが18から13に減少。それと同時に体がやけに調子が良くなる。

 というか、ギックリ腰のわずかな違和感も綺麗さっぱり吹き飛んだ。


「……おお……すげえな。こんなに違うもんか」


 後は……腕力に4。ハーピークイーンに碌にダメージ与えられなかったからな。

 速度と器用に2ずつ。

 残りは……5か。ええい、これも頑健に入れちまえ。健康で悪いことは無かろう。


「体が軽いな。体の動きもなめらかだし、柔軟性も上がっているようだ」

「すごい……ジオ様のお肌……頑健を上げた途端、ぴっかぴかのさらさらです。まるで20代のお肌です」


 気にするのはそこか。まあ、女性ならではの視点ということだな。


「それで……どうする? ユニの分も4ポイント振れるみたいだが」

「はいっ! あの……その。ぜ、ぜひ『頑健』に! 全部!」

「……全部か? ユニは頭も良いし、長所を伸ばすという意味で精神や賢明を伸ばしても……」

「いえ、ぜひ頑健に!」


 ふむ。ユニは『頑健』が低かったし、そこを補強するという意味では悪くないか。

 病み上がりでもあるしな。

 ………よし、これで頑健に+4と。


「ああ……すごい……10代の頃のお肌だわ……これで、ジオ様にご奉仕……ふふふ」


 ああ、そっちがメインの目的か。肌が綺麗になるのは副次的な効果だと思うんだが……

 いや、さわり心地が良くなるのは俺としても歓迎だから、文句は無いが。


 結局振り分け後、『ステータスウィンドウ』の数値は以下の通り変化した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ジオ・ウルマ  42歳

 総合    LV18

 レンジャー LV18

 生命力ヒットポイント 378/378 

 魔力マジックポイント 135/135 

 CPチャクラポイント  10/10 


ステータス

    基本値     実効値 

 腕力 15+4+1   54

 頑健 11+10    57

 精神 15       41

 速度 16+2     49

 器用 17+2     51

 賢明 12       32


 残スキルポイント18 

 残ステータスポイント0


称号

 『不死者』『不屈の挑戦者』『導く者』『ガラスの腰』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ユニ・クラウベール  22歳

 総合    LV4

 ソーサリス LV4

 生命力ヒットポイント 62/62 

 魔力マジックポイント 36/36 

 CPチャクラポイント  5/5 


ステータス

    基本値    実効値 

 腕力  8     10

 頑健  8+4   16

 精神 18     23

 速度 13     17

 器用 15     20

 賢明 17     22


 残スキルポイント4 

 残ステータスポイント0

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 うん。すげえな。

 特に頑健が上がったのに引っ張られたのか、生命の上がり方が異常だ。

 これだけの力があのハーピークイーン戦の時にあればもう少し……いや、結果エリクサーを手に入れたんだから良かったのか。

 それに、今気付いたが……ユニ、女魔術師ソーサリスの才能があるのか。

 呪い士だったっていうお袋さんのおかげかもな。


 そして次にスキルだが。

 今までの例からするとポイントを割り振るだけでスキルを覚えられるって事か?

 なんか怖くもあるが……やらんという手は無かろう。

『ポイント使用』から『スキルポイント』を選ぶと、予想通り、スキルが多数窓に表示される。

 中には古代語じゃなくて高等古代語のみで書かれたスキルも多く、ユニに訳して貰いながらポイントの範囲内でスキルを選んだ。


 内訳は

  隠れ身  1分間、姿が見えなくなる。       4ポイント

  影撃   背後から攻撃した際に3倍ダメージ。   5ポイント

  空中回避 跳躍中、一回のみ任意方向に回避出来る。 3ポイント

  俊足   1分間、移動速度が倍になる。      4ポイント 

  健脚   1時間、移動速度が1.2倍になる。   2ポイント



 ちなみにユニは取ろうとした初級火魔法や水魔法がすべて5ポイントだったので、ポイントを貯めておくことにした。 


「で、問題はこれだな」

「ええ……一体『エクスチェンジ』って何でしょう?」

「とりあえず……押してみるか?」

「……ジオ様のお好きなように」


 ほかの項目はなんとなく予想が付いたのだが……これだけは何が起こるのか分からない。

 かといってこのまま放っておくのも、なあ。


「ええい、押すぞ!」


 俺が半ばやけになって『エクスチェンジ』を押すと、


『〔エクスチェンジ〕機能のチュートリアルを開始します』


 例の『声』が再び頭の中に響き渡ったのであった。 





ステ表記が嫌いな方はすみません。

今後なるべく必要以外全部は表記しない方針ですが。

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