名声
ちょっと日にちが空いてしまいましたが、やっと投稿できました。
前回が短めだったので今回はちょっと長めです。
翌日、昼前には俺達トルシェル嬢一行はルガード鉱山の鉱山街に到着していた。
野営を早々に切り上げて出発を早めた結果だ。
いや……いくらお嬢さんに命じられたとはいえ、ダナンの頭を迂闊に撫でたりするべきではなかったな。
醜態をさらしたダナンは雄叫びを上げながら夜の闇に駆け出していき、「だぁぁぁぁぁっ!」「アレは俺では無い、消え失せろ、退散っ!」「違うのだっ! 俺は普通にっ……! お嬢様がっ!」とか叫びながらひたすら大剣で素振りを繰り返していた。一晩中。
これでは寝られない、と言う事で夜も明けきらぬうちに再出発することになった。
流石に移動中はダナンも静かにしていたので、お嬢さん方には馬車の中で仮眠を取って貰ったが、そのおかげで予定よりもだいぶ早くルガード鉱山街に着いたって訳だ。
ルガードの鉱山街は最近(とは言っても数年前だが)発見された鉱山を中心に発展した比較的新しい街で、安定した鉱石の供給量から今も少しずつ大きくなっている街だ。
一見したところ居住区だけでは無く、市場や商店などもちらほらと散見される。
規模としては、村以上町未満……といった所か。
「さて、一旦ここで契約は切れる訳だが……」
「ええ、そうですわね。ご苦労様でした。文句の無い仕事振りでしたわ。ルフちゃんも可愛かったですし! 出来れば帰りもお願いしたいのですけれど」
「ああ、そいつぁ、ギルドを通じてまた別途依頼して下さいや。俺達もしばらくはこの町に滞在してますから、都合が付けば受けることもあるかもしれません」
「分かりましたわ。またご一緒できるのを楽しみにしておりますわね」
そう言うと、俺の目の前にすっと左手を差し出すトルシェル嬢。
……? 何のつもりだ?
握手……にしては……てのひらをこう、下に向けているし、な。
「ジオ様、お手を右手で取って、手の甲に軽く口づけを」
「お、おお、そうか」
戸惑う俺の後ろからユニがそっと教えてくれる。
なるほど、そうか、これは……あれか、姫君が騎士などに褒美としてやる「口づけを許します」ってやつか。
普段そんな習慣とは無縁の生活をしていたからな。まさか騎士でも無い俺にそんな事を許すとはなぁ。
戸惑う俺に、ユニがつんつんと肘を突いて再度口づけを促す。
……しかたねえ。こうなると断る方が無礼だしな。
トルシェル嬢の小さな手を取り、そっと、触れるか触れないか位のキスを落とす。
「あ、ふぅ……んっ」
なにやら艶めかしい声が聞こえ視線を上げると、トルシェル嬢が頬を紅くし、濡れた瞳でこちらを見つめていた。
12歳には似つかわしくない妖艶さだ。
……ダナンの事といい、おそらく神の手ってのの効果なんだろうが、ここまで強力なのか。
こりゃあ、今後迂闊に他人と握手も出来ねえな。
「それでは、名残惜しいですが、我々はこれにて失礼いたします」
俺は素早く手を放すと、トルシェル嬢に暇を請うた。
「……そうですか、仕方ありませんね。あ、でもよろしかったら明日の炊きだしにはいらっしゃいませんか? 旅の間の食事のお礼に、ごちそういたしますわ!」
「ええ、旅の間と違ってこの町でたっぷりと材料を買い込みましたから、炊き出しとは言え、お肉や新鮮な野菜もたっぷり使っていますし……ユニ様に教えていただいた成果を見ていただきたいですわ」
トルシェル嬢に加えて、フィフにまでそう言われては断りづれぇ。
結局、明日3人で邪魔する事を約束してその場を辞した。
「よかったの、ですか?」
「なにがだい」
トルシェル嬢一行と別れて街中を散策していると、不意にユニがそう問うてきた。
「帰りの護衛も請け負っておけば……その、トルシェル様とそういうことになる機会も増えると……そうなれば男爵家と縁も出来て……その」
顔を赤くして話すユニ。
ああ、つまりはトルシェル嬢をたらし込んで、あわよくば男爵家に入り婿に……って事か。
ふん、つまらねえ事言いやがるな。
「ふん、そうさな、あれだけの美貌だ。あと5年もすれば大輪の花のような美女になるだろうな」
「は、はい……」
「男爵家とはいえ、貴族の世界に足がかりが出来れば色々と有利な事も多い。税の優遇とか、割の良い指名依頼を回して貰ったりとか、な」
「で、ですよね……」
しゅん、とするユニの頭をぐしゃぐしゃとかき回してやる。
「……が、まあ、こっちは誰かさんに毎日搾り取られて手一杯なんでな。複数の女を満足させられるほど俺の腰はタフじゃねえ」
「も、もう! ジオ様ったら!」
赤くなった頬を隠すようにユニは俺の胸に顔を埋める。
「で、でしたら今夜はたくさんご奉仕して差し上げます。トルシェル様の分まで」
「うん。まあ……お手柔らかに、な」
※
そして翌日。
俺はユニとルフを引き連れて約束通り鉱山の作業小屋へと行く事にした。
昨夜?
いや、何も無かったぞ。
宿が大部屋しか空いてなくてな……流石にルフの前でそういう事をする訳にもいかねぇだろ?。
おとなしく風呂に入って寝たよ。
ああ、この辺は温泉も出るらしくて、宿にも湯が引いてあってな。
月を見ながら露天を満喫したから、ある意味色々と骨休めが出来たいい夜だった。
この露天風呂は時間帯で男湯、女湯、混浴と分けてあって、俺が入った時は混浴時間だったらしくてな。
ユニなんかは「お背中お流しします」つって一緒に入ってこようとしたんだが、いくら混浴だからって他の男連中にユニの玉の肌をサービスするのも業腹なんで丁重にお断りした。
「さて、トルシェル嬢達が炊き出しをやっているのは町の南の作業小屋だったな」
「ええ、そう聞いております。直接鉱山へ向かう馬車があると聞いていますので、それで向かえば良いでしょう」
「そうだな……そうするか」
護衛の時に使った馬は護衛のために馬喰から借りた馬で、この街の馬喰にすでに返却している。だから、今現在俺達には足がねえ。
だから別途足を用意しないといけない訳だ。
ここは鉱山街だから鉱山へと向かう乗合馬車はそこそこ行き交っている。
そう時間も掛けずに一台の乗合馬車を見つける事が出来た俺達は、御者に運賃を支払うとその馬車に乗り込んだ。
馬車の中には俺達の他には子どもが3人乗っているだけだったので、意外と広い。
これならゆったりと乗って行けそうだな。
同乗の子ども達はまだ幼さの残る風貌で、女の子が2人、男の子が1人。
3人ともやせ細って継ぎ当ての目立つ服を着ている。
あまり良い生活はしていないように見えるな。
はて、この馬車は鉱山への乗合馬車のはずだが……こんな子ども達が何をしに行くのかね。
「おっちゃんら……鉱夫には見えんけど何しに行くんだ?」
そう声を掛けてきたのは最年長――13歳位に見える赤い髪の少女だ。
……向こうも同じ事を思っていたようだな。
「おお、知り合いがな、鉱山の作業小屋で炊き出しをするんだ。で、その様子を見にな」
「おっちゃん、本当か!!」
ガタガタッと馬車の中で立ち上がって詰め寄ってくる子ども達。
「ん、本当。トルシェル達、昨日街で食べ物買い込んで鉱山へ行っタ」
「フィフ様の調理の手腕は中々でしたから期待できると思いますよ」
子ども達はルフとユニの言葉に「マジか」「お肉あるかな!?」と、喜色を溢れさせ騒ぎ出す。
「その様子だと、今日、炊き出しがあるって分かってて鉱山へ行くつもりじゃなかったみたいだな? 坊主らが何の用で行くつもりだったんだ?」
「鉱石拾いに決まってんじゃん」
「鉱石拾い?」
採掘、じゃなくて拾うのか?
疑問に思って話を聞くと、坑道の浅いところでは小石サイズの鉄鉱石や銅鉱石が時折拾えるのだそうだ。
しかも一回の採取量は少ないが、日を置くと再び拾えるようになっているという。
拾った鉱石は鉱山の作業小屋で買い取ってくれるそうで、子どもや浮浪者が良く鉱石拾いをしているのだそうだ。
……なんだそりゃ。
銅や鉄が入り交じって採取でき、しかも採掘しないでも枯渇しない? おかしいだろ?
「本職の作業員や犯罪労働者はもっと奥で普通に採掘しているけどな。そこだと俺達が行けるところとは比べものにならない位いっぱい掘れるみたいだぜ」
「でもそこも一日経つと掘った場所が元通りになってまた掘れるんだって!」
ほう、それは便利な……って、おい。
……そりゃもしかして鉱山が迷宮化しているんじゃねえのか?
それとも鉱山型迷宮と分かってて隠蔽していたのか。
迷宮は資源の宝庫だが、魔物が溢れ出す『海嘯』の恐れもある事から国家単位での管理が義務づけられているはずだ。
数年単位で迷宮の魔物討伐が行われていなかったとしたら……
「ちくしょう、嫌な予感しかしねぇな……」
俺は馬車の中で思わず頭を抱えたのだった。
※
鉱山に着くと、子ども達は我先にと炊き出しの大鍋に向かって突進していき、先に並んでいた作業員に混じって雑炊の椀を受け取っている。
ほう、鶏肉入りの雑炊か。
他にも白菜、にんじんと具沢山で結構旨そうだ。
「旨ぇな! これ!」
「凄いよ、お肉も入ってる」
「はふっ……はふっ……あちっ、でも……美味しいね!」
「たくさんありますから落ち着いてお食べなさい! ああ、ほら、火傷しますわよ。お水もあるから……」
「あち……ありがと、お姉ちゃん!」
早速がっついている子ども達の給仕をしているのは……お、トルシェル嬢じゃねえか。
金を出すだけじゃなく、自ら給仕までするたぁ、えれぇもんだ。
おっと、こっちに気が付いたみてぇだな。
「ジオ様! 来て下さいましたのね。約束通りご馳走しますわよ! ジオ様の分は特別にお肉マシマシですわ!」
トルシェル嬢が自ら椀に雑炊を盛り手渡して来たので礼を言って受け取り、早速口を付けてみる。
「うん、旨ぇな」
お世辞抜きで旨い。
味付けはユニの雑炊に近いが、なんと言っても鶏肉の旨味が違う。
こいつは山鳥なんかじゃなく餌をたっぷり与えられて育った食肉用の鳥だ。
滋味という点では山鳥に劣るが、たっぷりの鳥の脂が体に活力を与えてくれるようだ。
手間暇がかかっている分、狩猟の肉より割高なはずだが。
……炊き出しの材料にしてはずいぶんと張り込んだもんだ。
「……美味しいです」
「鳥、うまイな! ユニのと同じぐらい!」
「ふふ、そうでしょう? フィフがユニに習った技術を込めて作った特製雑炊ですからね! 思わず張り切って上物のお肉を使ってしまいましたわ!」
「こいつぁ、相当評判になっただろう?」
「ふふん、当然だ。犯罪労働者などはお嬢様を女神と呼ぶ者までおる程よ」
いや、金を出したのは男爵家で作ったのはフィフ嬢だろう。ダナンよ、なぜお前が得意がる?
「もう……ダナン、女神様に喩えるなど不敬ですわ。それよりジオ様、まだたくさんありますからお替わりも遠慮無くして下さいませね」
「お、こりゃあすみませんね。遠慮無く……」
「ルフも! ルフもお替わリ!」
冒険者や貧困層の人間にも偏見無く接する事が出来るトルシェル嬢。
ふむ、案外とダナンの言う通り女神に喩えられるべき人物なのかもしれんなぁ……。
※
食休み後、1時間ほどトルシェル嬢達と世間話をしたり、炊き出しを手伝ったりして時間をつぶした。
そのついでに気になっていた坑道の迷宮化について、作業員や子ども達に聞いてみた。
すると今のところ、魔物らしいものは出現していないらしい。
鉱石や坑道の復元現象など、迷宮とかぶる特徴はあるにせよ、魔物の発生が無い事から迷宮扱いはされていないとの事だ。
しかも、その復元現象のため、新たな坑道を掘ったり、より深く掘り進めなくとも鉱石は尽きず、毎日一定量を確保できているらしい。
と、なると……浅層部分で魔物の脅威も無く無限に掘れるこの鉱山は、まさに宝の山だな。
ここの鉱山街がこの数年で急速に発展したのも、それによる好景気が原因なんだろう。
「だが、そんなうまい話がそうそう続……」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
かねぇ……って、おい、言った側から厄介事かよ。
「こ、坑道に……魔物がっ! 地面からっ!」
「た、助けてくれぇぇぇぇ!!」
悲鳴の響いた方に目をやると、数十人の作業員達が必死の形相で坑道から逃げ出してきた所だった。
そしてその後を追うように這い出てきた異形の怪物が数十匹。
固い殻と平たい前足を持った茶褐色の虫型の魔物。
「あれは……土竜虫か!」
主に地中をテリトリーとする螻蛄型の魔物だ。
ランクとしては上級冒険者が度々討伐依頼を受ける位だからかなり高い。
とは言え、これほど大量に発生するとは聞いた事が無いが……
バグモールL26
HP■■■■■■■■■■ 390
MP■■■■■■■■■■ 60
CP■■■■■■■■■■ 15
表示設定で確認してもこの間のトカゲより格上だということが確認できる。
「ぬううう! 化け物め! 我が魔剣のサビにしてくれるわ!!」
と、大剣を手に飛び出したのはトルシェル嬢一行の騎士ダナンだ。
「ギィギィギィ……ギュバッ!」
「ぐほうっ!」
ああ……案の定はじき飛ばされやがった。
つうか、いま魔物のヤツ、赤い光を纏っていたな。攻撃スキルまで使えるのかよ。
「ぬう……我がオリハルコンの鎧をへこませるとは! 相当高位の魔物と見た!」
いや、真鍮の鎧だしな。それなりの衝撃を受ければへこみもするわな。
……仕方ねえな。
「ダナン卿! 卿は主の守りを! 露払いは引き受ける!」
「ぬっ……ジオかっ! ……ここは借りを作っておくとしよう。騎士の勤めは第一に主の守護である故にな!」
素直にトルシェル嬢の側に駆け戻ってくるダナン。
うむ、物わかりが良くて大変結構だ。
旅の間のコミュニケーションが生きているな。
「接敵までに弓とユニの魔法で数を減らすぞ! その後は俺とルフで壁を作って敵を止める!」
「はい!」
「分かっタ!」
二人に指示をすると、まずは複合弓を構え、習得したばかりのスキル『アローレイン』を発動。
すると破魔矢の矢筒から、ずらずらずらっと独りでに矢が飛び出し、弓の側に整列する。
「食らいやがれ!」
その空中に並んだ矢を次から次へと弓につがえ、スキルに導かれるままに射る。
このスキルは一発一発の威力は低くなるものの、使用者の器用さに応じて矢を複数連続発射できるというスキルだ。
その数、実に11本。
つまり11本の破魔矢がほぼ同時に――まさに雨のように魔物の群れに降り注いだ訳だ。
「ギャバッ」
「グギッ」
「ギィィィィッ!!」
11本の破魔矢はそれぞれ正確にバグモールの頭部を貫通し――てか、吹き飛ばし、きっちり11匹の息の根を止めた。
……強えな、破魔矢。
「続いてっ! 行きますっ! 魔槍!!」
俺のアローレインに驚いて立ちすくんだ所に、今度はユニの魔槍が突き刺さる。
魔槍は魔力の尽きぬ限りその発射数を増やせる中級無属性魔法だ。
ある程度、発射後のコントロールも効き、実に使い勝手の良い攻撃魔法で、今回ユニはこれを8本同時に作り上げ、撃ち出した。
これでまた数匹、バグモールが消滅する。
残りは10匹ほど。
俺は、『窓』の『装備』をタッチして、弓と矢筒を雷鳴の包丁にチェンジする。
……便利だな。まあ、あまり人に見られたくはないんだが、非常の時だし、これだけ混乱していれば気付かんだろ。
「ルフ、行くぞ! 後ろに通すなよ!」
「分かっタ! ルフに任せロ!!」
ルフはルフで、幅広の包丁二刀流というある意味怖い装備で、嬉々としてバグモールの群れへと突っ込んでいく。
そして見る間にすぱーんすぱーんと首を切り落としていく……。
いや、だから後ろに通すなと言っているだろうが。一人で突っ込んでどうする。
仕方がねえから漏れた敵は『挑発』を使って俺に引き寄せ始末する。
……『片手剣術(上級)』の効果だろう、大体2匹に1匹の割合で一撃で葬れるな。
俊足や弱点看破も使ってねえんだが。
素のステータスがだいぶ上がったからな……。
結局、ものの5分もしないうちに30体近いバグモールはことごとく大地に屍をさらす事になったのだった。
「ジオ様、お怪我は!?」
一応念のために生き残っている魔物がいないか確認していると、ユニが俺の側へと息せき切って駆け寄って来た。
「ああ、無い無い。……ま、良い運動にはなったかね」
「ジオ強イ、ルフも強イ、ユニも強イ。だから怪我しなイ」
いや、まあ。
そういう単純なものでもねえんだが。
「す、凄いな、あんたら……助かったよ」
ユニ達の様子を見て、危険は去ったと判断したのか、坑道から飛び出してきた鉱夫達がそろそろと近づいてきた。
「あれだけの魔物をいとも簡単に……さぞや名のある冒険者なんだろう?」
「見ろよ、この死骸……矢の一撃、剣の一振りであの硬い魔物を仕留めているぜ……」
「シュタット男爵様のお妹様と一緒に居たって事は……お嬢様に雇われた護衛なのかい」
「流石だな、これだけの腕利きの護衛を雇っているたあ……おかげで命拾いだ!」
おや、図らずもトルシェル嬢の名声を上げる手伝いをしちまったみてえだな。
今現在は雇われているって訳じゃねえんだが。
さて、どうしたもんか……
……おや、フィフ嬢がなにやら一生懸命ジェスチャーをしているな。
黙る……金……アップ? なるほど。
「いかにも! 我らはシュタット男爵の妹君様のご命令で万が一に備え待機していたのだ! 諸君らが無事でさぞトルシェル様も安堵なされている事であろう!」
俺は精一杯芝居がかって男達にそう答えた。
つまりこういう事だろ?
これで追加ボーナスを支払うと。
フィフ嬢の方を見ると右手でこっそりOKサインを出している。
「大した先見の明だな!」
「トルシェルお嬢様バンザーイ!」
「バンザーイ!!」
「うぉぉぉぉ! お嬢様、嫁に来てくれぇぇぇ!!」
「馬鹿野郎! 女神様になんつう不敬なことを言うんだ!」
もはや作業小屋近辺はむさい男達の興奮のるつぼと化している。
嫁とか言い出した大男はまわりの鉱夫にタコ殴りにされているしな。
……まあ、これでこの鉱山街でトルシェル嬢の名声は比類無きものとなるだろう。
お安いご用ってもんだ。
こういう辺りジオはそつが無いのです。