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閑話:なでぽ

短いです。

トルシェル嬢視点の

外伝的なお話。

 わたくしの名はトルシェル・ミル・シュタット。

 ルスタールの街に居をかまえる、レンドルフ・ミル・シュタット男爵の実妹ですわ。

 先頃12歳となったわたくしは、婚活……あ、いえ、貴族の義務ノブレス・オブリージュの為にルガード鉱山……とやらに慰問に行くことになりましたの。

 そしてそこでわたくしは運命に出会ったのですわ。


 ひこひこと動くかわいらしい耳!

 白銀の柔らかな毛並み!

 ふさふさのしっぽ!

 ぷにぷにの肉球!


 それらをもってわたくしを一瞬で魅了したのは――護衛に付いた冒険者の1人で、まだ少女と言って良い頃の白狼族じゅうじんだったのです。


 実を言うとわたくし、犬や猫といった動物が大好きですの。

 小さい頃は薄茶色の小さな犬も飼っていましたわ。


 名前はシバ。


 わたくしに良く甘えてくる、巻きしっぽの可愛い子でした。

 まだ小さいときに馬の蹄に引っかけられて死んでしまいましたけれど……

 そのシバに毛色こそ違え、しっぽの巻き具合やぴんと立った耳などがこの白狼族の少女――ルフちゃんがそっくりなのです!!

 サロンに出席できる年齢になってからは、毛の抜けるペットそのものを飼うことを禁止されていましたし、こんなに間近でもふもふを見たのは本当に久しぶりなのです。


 ――そのせいでしょうか、気がついたらわたくしは冒険者のリーダーであるジオ様に、旅の間だけでもと、わたくしの馬車にその娘を同乗させてくれるよう頼んでいたのでした。

 ジオ様は快くわたくしのお願いを聞き入れて下さって、それからわたくしの至福の時が始まったのです。


「あらあらまあまあ……ルフさんとおっしゃるの? ささ、こちらですわよ?」

「わ、わふん?」

「まあああ! 可愛いお耳! 本物? 本物ですの!? ちょっと動かしてみて下さいまし!」

「や、やめ……キャイン!!」

「しっぽ! モフモフ! しっぽ! モフモフぅぅぅぅ!! ……………ふひ! ふひひ! 天国ですわぁぁぁぁぁ♪」

「きゃうぅぅぅぅぅぅん……」


 ……っは!?

 ……わたくし、何をやっていたのかしら。

 あら。

 ルフちゃんが馬車の隅で丸まっているわ。

 そんなところに居たら寒いし痛いですわよ?

 ……何か怯えた目で見られているのは気のせいかしら。気のせいね!

 ……ああ、でも……そんな怯えた目で見られるのも、なんというか……背徳感が。

 何かイケナイ扉を開きそうですわ。


          ※


 あれから数日経って、とうとう明日は鉱山都市に着いてしまいますわ。

 その間ルフちゃんの可愛さとモフモフを堪能させていただいたので、あっという間でしたけど。

 ……名残惜しいですわ。

 結局最後までわたくしの物にはなりませんでしたわね。

  ……あんなに可愛がってナデナデしてあげたのに。

 隙を見てはジオ様の後ろに隠れてしまうんですから……ちょっとジェラシーですわ。

 それにしても……ジオ様もルフちゃんと行動を共にするようになってからまだ日が浅いと聞きますのに、どうしてあれほど懐かれているのかしら。

 何かコツとか秘伝とかあれば伝授して欲しいものですわ。

 帰りの護衛もジオ様達に頼めれば、その辺り是非に詳しくお聞きしま……


「あの子の触りかた気持ちよくナい。ジオに触って貰うノがずっと気持ち良い……もう、ジオ以外じゃ(グルーミングが)満足できなイぃ……」


 ……何か今、聞き逃せない言葉がルフちゃんの口から出てきましたわ。

 そうなの!? そうなんですの!?

 種族問わないのですね?

 人間と獣人の禁断の愛、みたいな!?

 ああっ! でもわたくしの方が女同士の分、より禁断具合では負けていませんわ!

 後はテクニックだけ!

 そう、わたくしに足りないのは絶対的な技術なでぽ


「ジオ様、その……わたくしの頭をちょっと……撫でて下さいますか?」

「「お嬢様っ!?」」


 ええい、邪魔しないで下さいまし。ダナンにフィフ。

 実地に体感しなくては技術の習得には至らないでしょう?

 ささ、ジオ様、遠慮無く。

 なにやら困惑していらっしゃるジオ様に、わたくしはずいっと頭を差し出します。


「いや……撫でるって、これでいいのか?」


 すりすり。すりすり。すりすり……


 怖々とジオ様の無骨な手がわたくしの頭を撫でています。

 ん、どうって事無いですわね。

 これでどうしてルフちゃんが……


 あ……

 こ、これは……

 あ、そこ、もっと……

 ……はふん。ごろごろごろ。

 …………………………っは!?


 気がつくと、わたくしはジオ様に全身を投げ出して甘えていました。

 ……お、恐るべし。何という技術!


「ジオ! き、貴様、お嬢様に対してなんと破廉恥なことを!! うらやま……じゃない、無礼だぞ!!」

「あ……ふう……落ち着きなさい、ダナン。これはわたくしがお願いした事よ。ジオ様の実力を見誤ったが故の事故……というより不可抗力だわ」

「事故……不可抗力ですと!?」


 涙をお拭きなさい、ダナン。いい年してみっともないですわよ?


「嘘だと思うならあなたも撫でて貰いなさい」

「はぁ!? この冒険者に私がでありますか!?」

「いや、こんなごついのを俺が撫でるのか!?」


 お二人してものすごーく嫌なお顔をされていますわね。

 なんか逆にやらせてみたくなってきましたわ。面白そう。


「ダナン。命令ですわよ? ジオ様、雇い主の意向は最大限遵守されるものだと思いますわ」

「~~……分かりましたよ、こう、でいいんですかね」


 ぐりぐりぐり。


 わたくしの時とは比べものにならない位ぞんざいなナデナデでしたが、その効果は劇的でしたわ。


 ……男の人もああいう声出せるのですね。

 なんか配下の3騎士もどん引いてましたわ。

 ……でも正直に言えばわたくし、少しだけドキドキしましたの。




 渋いおじさま×筋肉マッチョ騎士とかアリだと思いません?









称号『神の手(ゴッドハンド)』パねえ……と言うお話。

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