新メンバールフ
文中に三人分のステータスを記したので、文字数はいつもと余り変わりませんが内容はちょっと薄いかもです。
『化鳥の谷』でのちょっとしたトラブルの後。
俺は結局、ルフの懇願に負けてパーティ入りを承認することにした。
……正直面倒くさい事態になったなと思ったが、しょうがねぇ。
ルフと一緒に街に帰った後、筋を通すために『アイアンソード』の連中を探したところ、『麦と芋』亭にて夕食を取っているところを捕まえることが出来た。
とりあえず一杯おごって、ルフのチーム移籍の話を切り出すと、予想外にスムーズに話が進んだ。
……どうやら相当、ルフと『アイアンソード』の連中とはそりが合わなかったらしい。
移籍金……というか、わび銭として『無限の矢筒(木の矢)』とヒーリングオーブ2個を進呈すると、それこそ飛び上がって喜んでいた。
ルフの戦闘能力はそれらと引き替えにしても有り余る価値があるとは思うが……『アイアンソード』の連中じゃ扱いきれなかったんだろうなぁ。
「ジオ様……よろしかったんですか? 『無限の矢筒』は相当珍しい魔法武器だと思いますが」
「ジオ、ルフ高かったのカ? 」
「ああ、気にすんなって……幸い、代わりのもんは『エクスチェンジ』で手に入ったしなぁ」
『麦と芋』亭からの帰り道、ユニとルフに問われ、そう答える。
谷からの帰り道、手に入れたジットで早速パーティ強化と『エクスチェンジ』を行ったのだ。
内訳は――
プラチナコースで引き当てたSR破魔矢の矢筒。
こいつは無限の矢筒(木の矢)の上位互換のようなもんだな。
無限に矢が出てくるのは変わらねえが、聖属性を帯びている上に威力もダンチだ。
……試し撃ちであっさり大岩を貫くとは思わなかったがな。
で、次はゴールドコースで引き当てたR装備、中華包丁2本セット。
……中華ってのがなんなのかよく分からんが、こいつは普通の包丁よりもずいぶんと幅広く、厚く重い。
説明を確認するとハンドアックス扱いの包丁らしい。
……なんだそりゃあって感じだが、お玉の付いた杖や、ばかげた威力の包丁が存在している時点で今更だな。
これはハンドアックス扱いならってことで、ルフに預けている。
おまけに防御力の底上げが期待できる『メタルスキンマント』も渡してある。
このメンバーじゃ、ルフが囮役になることも多いだろうしな。
それらの品をルフに渡すと、初めての魔法武具にちぎれんばかりにしっぽを振って喜んでいたな……まあ、それだけ喜んでくれりゃあ甲斐があったってもんだ。
……ただ、喜んでくれるのは嬉しいが、顔をべろんべろんなめ回すのはやめて欲しかった。
よだれでべちょべちょになっちまったじゃねえか……。
続いてステータス強化だが……ポイントの振り分けはこんな感じになった。
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ジオ・ウルマ 42歳
総合 LV37
レンジャー LV37
薬師 LV1
生命力 962/962
魔力 315/315
CP 18/18(レンジャー10+薬師8)
ステータス
基本値 実効値
腕力 15+12+1 129
頑健 11+15 120
精神 15+2 78
速度 16+9 115
器用 17+7 110
賢明 12+2 64
残スキルポイント0
残ステータスポイント0
新規取得スキル
片手剣術(上級) 片手剣の攻撃力と命中率が1.6倍 取得ポイント4
弓術(特級) 弓の攻撃力と命中率が2倍 取得ポイント6
影矢 ダメージ1.3倍、クリティカル率1.5倍。 取得ポイント2
アローレイン ダメージ0.6倍、同時攻撃数『器用』実効値の10分の1。 取得ポイント6
罠感知 『賢明』実効値で判定。 取得ポイント2
罠解除 『器用』実効値で判定。 取得ポイント2
挑発 『精神』実効値で判定。 取得ポイント1
丸薬調合(初級) 自動取得
水薬調合(初級) 自動取得
薬草知識 取得ポイント2
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流石大量にレベルが上がっただけあって、スキルもステータスも取り放題だった。
おまけに俺にはそれぞれ10ポイントのボーナスがあるしな。
あとチャクラの値が劇的に増えていたな。
何が根拠で増えたのか分からないが、スキルの使用回数が増えるのは純粋にありがてぇな。
続いてユニだが
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ユニ・クラウベール 22歳
総合 LV33
ソーサリス LV33
生命力 528/528
魔力 479/479
CP 5/5
ステータス
基本値 実効値
腕力 8+2 42
頑健 8+8 67
精神 18+11 122
速度 13+2 63
器用 15 63
賢明 17+10 113
残スキルポイント2
残ステータスポイント0
新規取得スキル
初級水魔法 (水弾、水浄化)取得ポイント4
初級土魔法 (石弾、硬化、柔化)取得ポイント4
中級無属性魔法 (魔槍、解錠、施錠、念動)取得ポイント6
魅惑 交渉事の成功率に+40%補正。(魅惑30%+傾城10%)取得ポイント2
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使える魔法のみで言えば、ユニはもう上級冒険者とも遜色ねえと言える。
おまけにステータスポイントを加算できる影響で威力も並じゃないしな。
欲を言えば上級無属性魔法も取ってやりたかったが、ポイントが足りなかった。
魔法消去とか飛行とか便利な魔法が多いんだがな。
で、最後はルフだ。
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ルフ・ウォルフ 14歳
総合 LV36
獣戦士 LV36
生命力 864/864
魔力 198/198
CP 12/12
ステータス
基本値 実効値
腕力 16+12 126
頑健 16+8 108
精神 10+1 50
速度 17+7 108
器用 11+6 77
賢明 8+2 45
残スキルポイント0
残ステータスポイント0
新規取得スキル
忍び足 取得ポイント1
気配察知 取得ポイント2
咆哮 取得ポイント2
投擲(中級) 投擲の攻撃力と命中率が1.4倍 取得ポイント3
斧術(中級) 片手斧の攻撃力と命中率が1.4倍 取得ポイント3
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いやはや流石獣人だな。
腕力、頑健、速度の値が高え。
まあとにかくだ。
それほどの戦力強化があったから無限の矢筒(木の矢)位は出しても良いだろう、と折り合いを付けた訳だ。
「まあ、だから本当に気にすんなって」
「うぅ~……」
半分涙目になって俺を見上げてくるルフの頭を、ぐしゃぐしゃっ……と、少し乱暴に撫でてやると、ルフは気持ちよさそうにふんふん言いながら首筋を俺にこすりつけてくる。
って、おい、マーキングか。
「ルフちゃんズルイ」
そう言いながら今度はユニがすり寄ってくる。
……いや、大変によろしいんですがね。場所柄を考えて欲しいね。
今はまだ夕刻。人出もそれなりにある時間だ。
視線がいちいち痛いのよ。「オッサン爆発しろ」とか聞こえてくるし。
……はあ。
「……ところでルフはどこに住んでいるんだ? もうそろそろ日も落ちるぞ」
「森っ!」
「森……?」
「街の近くに小さな森あル。鎮守の大木の洞、雨も当たらなイ」
えっへん、と言わんばかりに胸を反らせて説明するルフ。
……えーと、つまり野宿ってか?
「だめよルフちゃん! 年頃の女の子がそんな……お肌にも良くないわ!」
ユニがルフの肩をつかんで揺らしながら力説している。
ユニは元々愛玩用の高級奴隷として育てられたからな。
ルフの女というより野生動物に近い現状が我慢できなかったんだろう。
「そんな生活していたら、寄生虫や吹き出物も……って、ああっ! やっぱりっ!」
ルフの髪を手でかき分けて絶句するユニ。
相当ひどかったみたいだな。
「…………ジオ様っ……この子、家でお世話させて下さい! このままでは衛生観念的に一緒のパーティでやっていくのに支障がありますっ!」
「お、おう……まあ、部屋もまだ余ってっからかまわんが……」
「ありがとうございますっ! さ、ルフちゃん、行くわよ。まずは全身洗いからね!」
「水浴び? 水浴びか?」
「んー……今の季節だとちょっと寒いから、お湯で洗いましょうね」
「お、お湯、浴びるのか? ルフ、煮られるノか?」
涙目になり、慌てて逃げ出そうとするルフ。
だが、ユニにしっかりと上着を掴まれて逃亡は失敗に終わる。
「もう、そんな熱いお湯じゃ無いわ。ぬるま湯よ。むしろ気持ちいいわよ~」
「ホントか? ホントに熱くなイか!?」
「熱くない熱くない。ほら、だからお家帰るわよ」
「むぅ~わふぅ~……」
ずるずるとユニに引きずられていくルフ。
――こうして、俺の家には同居人が1人増えたのだった。
※
「ほら、気持ちいいでしょ?」
「わふん……ン……ユニの指、気持ちイイ」
石畳の上にスノコを敷いた浴室で、ユニが泡立てたルフの頭に指を滑らせる。
かしゅかしゅかしゅかしゅ……
ルフは素っ裸でおとなしくスノコに座り、ユニに身を任せている。
そのルフの表情は今にも蕩けそうだ。
早速、家に連れてきたルフをユニと二人がかりで丸洗いし、汚れを落とすと、地黒に見えていたルフの肌は驚くほど真っ白だった。
当初は石鹸の泡にびっくりして暴れ出したりしたが、それに慣れてしまえば抵抗することは無くなった。
種族的な物なのか、ルフに裸に対する羞恥心はあまり見られないしな。
今も、手足を弛緩したかのようにだらーんと、浴室に投げ出している。
そのため、ルフの少年のように引き締まった体が色々と丸見えである。
……いやはや、ここまで来るのはなかなかに大変だった。
お湯で軽くすすいだだけであっという間にタライの中は真っ黒になっちまって……。
大ダライのお湯を三度変えて、ようやくルフはまともに泡立つようになったのだ。
ユニの『水弾』で水を作り出し、『炎弾』で加熱する、という裏技が無ければ、いちいち外の井戸まで何往復もするハメになっていたな。
ユニの豊富なMPあっての技だが。
「ユニ、石鹸はまだいるか?」
「あ、はい、すみません、あと5~6粒あれば助かりますっ」
「ほいよ」
俺はユニの要請に応えるべく、台所用の油壺からコップで適量をすくい上げ、あらかじめ小分けしていたカマドの灰と混ぜ合わせる。
そしてそこに香草油を一差し。
で、あとは『丸薬調合(初級)』を発動するだけだ。
すると油はみるみるうちに固まっていき、直径1センチほどの玉状の石鹸がころん、と6つ転がり出た。
「ほれ、石鹸」
「ありがとうございます、ジオ様。よかったね~ルフちゃん。石鹸なんて高級品、本当はこんなにふんだんには使えないわ」
「むふーっ、ジオの石鹸……イイ匂いすル」
好評なようで何よりだ。
まあ、こちらとしても新しいスキルの練習にはちょうどいいってなもんだが。
しかし新しいスキルの使い道がユニ共々入浴関係とはな。
……まあ、生活環境が良くなる分には文句はねえな。
いっその事、タライじゃ無くて浴槽を設置するか。
要懸案事項だな。
……等と考えながら、カマドの上の鉄板で焼いていた一センチ厚にカットした牙大蜥蜴の肉を鉄串を使ってひっくり返す。
すると、肉汁が鉄板にジュッと染み出て、香ばしい匂いが辺りに漂う。
「ん、もう少しだな……」
俺は肉に軽く串を刺して状態を確かめると、その焼き加減に集中する。
こいつの肉は焼きすぎると堅くなるし、生では匂いがきつすぎる。
美味く食うには絶妙のさじ加減が必要な肉なのだ。
「む、こんなもんかなっ……とね」
中心まで火が通った頃を見計らって皿に盛りつける。
味付けは塩、胡椒にスディチ(酸味の強い柑橘類)を絞っただけだが、滋味の強い牙大蜥蜴の肉には良く合う。
これに黒パンとワインを添えて本日の夕食の出来上がりだ。
「……! すみませんっ! ジオ様に食事の支度をさせてしまうなんて」
ルフの体を拭いてやっていたユニが、慌ててぱたぱたと駆け寄ってくる。
「ああ、気にすんな。魔物肉の扱いは慣れているしな」
そもそもユニが来るまでは自分で炊事洗濯やっていた訳で。慣れたもんだ。
「肉の匂イ……はぅ……」
肉の匂いにつられてルフもふらふらとやってくる。
風呂の後、着替えが無かったルフには、とりあえずユニの予備のワンピースを着せている。
「これ、トカゲ肉か? ルフの分もあるカ?」
「おう、たっぷり捌いてあるからな、好きなだけ食え」
「わふっ!」
テーブルに着く間も惜しげに、フォークで肉を刺して口に運ぶルフ。
ガツガツ、ムシャムシャ、ごっくんと、肉はあっという間にルフの胃の腑に消えていく。
「んぐっ、んぐっ……美味イ! 本当にトカゲ肉か? 柔らかイし全然臭くナい!!」
どうやら相当気に入ったようで、何よりだな。
おっと、さっさと食べねえと無くなっちまうな。
肉はまだいくらでもあるが、焼くのに時間がかかるからな。
「ユニ、疲れたろう。さっさと食って寝るぞ」
「は、はい、ジオ様……も、もう……ルフちゃんが聞いてます……」
赤くなって小声で抗議するユニ。
……いや、その『寝る』じゃねえからな?
今日は本当に疲れて……え?『閨房術』がある?
あ、そうですか……
エンディングは決まっているのにそこに至るまでの道筋が見えない。
うわーどう書けば良いんだ~と悶々とプチスランプに悩んでました。
……何とか方向修正できたようです。
※追記 本文中ステータスに記載してあるスキルはあくまでも新しく入手したスキルです。
全部乗せると冗長になり過ぎるのでカットしてあります。