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秘密の友達


「もう、最悪だよ。引き受けなきゃよかった」

「気にするな。おまえの芸術性をわかってないあいつらが悪い」

「そうだよね! 一生懸命描いたのに、あそこまでぼろくそに言うことないよね!」

「ああ。おまえはよくやった」


 あたしの秘密の友達は、いつだってあたしの味方だ。


「でも、クラスのみんなから、軽蔑されちゃったかも。明日からはぶられたらどうしよう」

「心配するな。なにがあっても俺が一緒にいてやるから」


 自分の部屋でひとり。

 応援幕を床にひろげて、余白に会話を書きつけていった。


うん、イタイ子なのはわかってる……。

 

 でも、いつも落ち込んだり嫌なことがあったときには、こうして自分の描いたイラストに話しかけて、なぐさめてもらってる。

 

 人には絶対言えないけど、相手が自分ならおもいきり甘えられるから。

 それに、会話しているうちに我ながらいい答えが生まれることもあるんだよね。


でも今回は、ちっとも気が晴れない。


はぁ。むなしい……。


あたしは、応援幕のうえに寝ころんだ。


 実をいうと、自分でも、こんな大役を引き受けるだけの腕がないのはわかってた。


 それでも無理をして引き受けてしまったのは……。


 柏木くんに喜んでもらいたかったから。


 柏木くんは、クラスのアイドルみたいな存在。ほとんどの女子は彼のファンだ。


 そりゃそうだって思う。かっこよくて、きさくで、運動も勉強もできるし、完璧だもん。

 ほとんど話したこともないけど、あたしもひそかに……。


 あたしは身体をおこして、応援幕に描かれた柏木くんをじっと見た。


「たしかに、へた、かも……」


 あらためて見ると、身体のバランスとか、色の塗り方とか、やっぱりいろいろ違和感がある。

 でも、顔だけはかっこよく描けたって自信があったんだけどな。


 ……ああ、もうどうでもいいや。なんにもできないくせに、でしゃばったのが悪かったんだ。やっぱりあたしには、地味で目立たない日かげ人生が合ってるんだ。


 こんな応援幕、もう見たくもない。クローゼットの奥にしまっちゃおう。


そう思い、はしからくるくる巻き始めた。


 ――と、そのとき。


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