第4話 涙
更新遅くなりましたが4話…設定も入れれば5話目です!
やはり文章力と構成力の欠如は大きいです(;;)
「でもよ、そいつ行方不明者だぜ?まずっこっちに通報しなくて良いのかよ」
水を差すように言ったのは、太一だった。太一は雑誌を左の手の平で強く叩いた。いかにも不満そうな顔だった。
「笠倉君。草薙君は“今は何も聞かないでほしい”って言ったんだよ。君は、どんな事情を抱えているかも分らないのに、クラスの友達をあっさりと突き出す気かい?」
「はぁ!?元はと言えば、あいつが何も話さないのが悪いんだろ!何も聞かないでほしい?バカじゃねーの!!クラスの友達とか言って、大事なことは結局話さないんじゃねぇか。お前らそんな奴信じんのかよ」
太一が叫ぶように言った声は、シンとしている教室内で響いていた。クラスの中心となっていた彼の言葉に逆らう生徒はほとんどいない。だからこそ、少数派の基悠は強く出られるのだ。
「確かに笹倉君の言い分のほうが正しいのかも知れないね。でも、人を信じるって大切なことなんだよ。例え裏切られても、信じないで後悔するより、信じて後悔したほうがよっぽど良い」
シンとしていたクラスから、基悠の言葉に拍手がわいた。基悠たちにとっても、愁にとってもうれしい限りだった。
直人はひとり自室に篭っていた。シュウが生きていることに疑いはない。しかし、問題なのはなぜ光熱反応も生命反応しらもないのか。その疑問は、どうにも直接確かめないことには憶測の域を出ない。それが直人にとって、魚の骨が喉に引っかかっているようなもどかしいイライラの原因となっていた。いつしか彼は頭を垂れ、額の前で懇願するように手を組んでいた。
「シュウ。頼むから早く帰ってきてくれ」
その言葉が静寂の中に消えていったのと同時に低いノック音が響いた。
「どうぞ」
そう短く言うと、一呼吸おいてからドアが開き、低い声で「失礼します」と言って入ってきたのは、ヴェルディア副長官の綾崎一成だった。一成は直人と同い年だが、声や容姿はとてもそうは思えない男だ。
「あぁ、綾崎か」
直人は力を抜き自然に笑う。元アトルム操縦士を育成するATRM操縦士学校の教官長だった直人が、ヴェルディアの長官になれたのは、当時ヴェルディア職員で、昔からの友人だった一成の推薦があったからだ。
「お久しぶりですね志岐長官」
一成もまた安堵したように笑う。
「綾崎。2人の時は敬語も長官もなしだと言っただろう。俺はお前に感謝しているんだ」
「しかしだな……」
「はっ。堅っ苦しいところは相変わらずだな」
「いや、俺は昔から老け顔なだけだ。それ以外は変わっているよ」
「そうか……」
他愛もない会話が楽しい。
「志岐。悩みは、シュウ君のことか?」
急に核心を突かれ、驚いたが、一成が直人のことに関して敏感なのは知っていた。しかしまさかすべてお見通しとは思っていなかった直人は、自嘲した。
「未確認体に生命反応が出ないことは周知の事実だろう。だが、なぜシュウの……息子のものまで出ない?それに光熱反応があるということは、未確認体の排除はできていないということだ。このままでは火星が消える。そうしたら、木星も、地球も危ないんだ」
直人は友人にすがる思いで話した。息子が生きていることは確信している。しかし、その中に少なくとも疑いがあることも確かだ。一成はいつもと違う友人に困惑した。
「まず落ち着け。そうやすやすと火星が消えたりしないさ」
「綾崎は未確認体の恐ろしさをわかっていない!あいつらは俺の部下……仲間を一瞬にして消し去ったんだ。もしかしたら、シュウだって……」
「志岐!!シュウ君を信じろ!お前のたった一人の息子だろう!!辛いなら泣けばいい。だが、それでも信じることを諦めるな!」
「だめだ。長官たる者が私情で涙を流すなど許されない」
直人は必死に涙を堪える。大丈夫だシュウは大丈夫だ。そういい聞かせて堪えることができた。一成は肩を震わせて堪えている直人の肩をそっと抱き寄せた。
「――――志岐。今は長官ではなく、志岐直人として俺と会っているんだろう?2人の時くらい枷を外してもいいんじゃないか?」
「一成……」
最も信頼する友人の名を呼んだ直人の目には涙があふれていた。一成の温かさが唯一の家族である息子の存在の大きさを感じさせた。ついに堪え切れず嗚咽する。
「直人……」
一成は白髪交じりの頭を撫でた。
「シュウ君の帰りを信じよう」