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洗濯機が壊れたからコインランドリーに来たら冒険が始まったんだが  作者: ただの斧好き


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10話:崩落

10話:崩落


立ちすくむ椿から鏡を借りて背中越しに見ると、目に映る道とは別に、確かに鏡の中には今、目に映るものが存在していなかった。


「おいおい、なんだよこれ…口は災いの元ってか?」


慣れてしまったせいだろうか、誰に対して言うわけでもなく皮肉を口にする。

椿の言う通り目の前には確かにまだ先に続く道はあるが、やはり鏡の中には何も見えない。

となるとだ。


「…ここから先は運任せっていうのか?」

「そんなの流石に無理だよ結衣ちゃん」

「うん…今まで適当に歩いて来たけどやっぱり出口っぽい場所もなかったし…」


希望を抱いていたからだろうか、流石の椿もどうやら不安…というよりも悔しそうに歯切れの悪い言葉を口にしている。

らしくない椿を見ているとどうも腹の奥が煮え切らない様な感覚に襲われる。

何か、何かないだろうか。せっかく前に進んだのに、ここに来てまた振り出しに戻るなんて私だって勘弁してほしい。

椿から借りた鏡で手探りに手がかりがないかと探す。


「えっ…?」


不意に鏡を持ち上げた時、今まで見たことのないものがその中に映る。

椿が落ちていったこの空間にある"底なしの底"の一部に、明らかに異質な雰囲気を纏った、見えない黒い空間のようなものがあった。

白色に包まれたこの場所には似つかない黒い空間は、黒い渦が蠢いているようにも見える。

視線を鏡の中からその黒い空間があった場所に戻すと、その場所には当然何もない。


「椿、ちょっとあそこを鏡で見てくれ」

「うん」


椿たちに鏡を渡す。二人で覗き込むには少し小さいかもしれないが、彼女たちは私が指差した場所を背に鏡を覗き込んだ。


「…何これ」

「黒い…渦?」


当然困惑するように、彼女たちは鏡の中と実際に目に映る視界を交互に見る。

いつもは突拍子のない行動をする椿もその異質さからか戸惑いながら立ち尽くしてしまっていた。


「結衣ちゃん、あれ、なんだと思う?」

「さあな」


いつもの明るい雰囲気とは違い、どこか神妙な椿たちと反するように私は冷静さを保っていた。

わかりきった理由だ。ここまで来たんだ、こんなところで諦めるわけにはいかない。

思考の沼に浸る。椿たちが怯んでいるのだから、こういう時こそ私が何か策を考えるべきだ。とは言うものの、今ある手がかりはあの黒い渦くらいしか思いつかない。

もし、黒い渦の中に落ちたらどうなるのだろう?

普段の私じゃ思いつかないような考えが頭に浮かび上がる。


「なあ椿」


飛躍的すぎる思考を咎めるために、一度椿たちとも話そうとしたその時、異変は起きた。

ゴゴゴッ…


「なんだ!?」


突然、足元の階段が揺れ始める。

けたたましい轟音があたりに響くと同時にあたりの階段が次々と下へ下へと崩れ落ちるのが見える。


『結衣ちゃん!』


椿たちもその異変に気付いたのか、急いでこちらに走って来たと思った矢先──


「なっ…」


みるみるうちに足元の階段は崩れていき、私たち三人は重力に従うように落下して行く。

落下の間際、危険な状況とは裏腹に一つの考えが浮かび上がる。

なぜ、浮いていた階段は下に落ちた?

今まで階段を歩いていた時も、私たちは上下左右様々な方向へと移動していたはずなのに…なぜ今は下へと落ちて行く?

異質な空間に合わない常識的な考えが頭に浮かび上がる中、私たちは落ち続ける。

素早く移り変わる視界の先、先ほどまで別の場所にあった黒い渦が私たちの真下に移動しているのが見えた。

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