第陸話 じいさん、使役士を撃退する
明日は分かりませんが今日は投稿出来ました
お暇つぶしにどうぞ
「いつまでそんなトコで油売ってんだよ!こっちは先を急いでんだからサッサとどけよ!」
微妙な空気が流れて中々出発できない儂らに、今し方後ろからやってきた事情を何も知らない若造が文句を言ってきましたねぇ。
見れば貧相なゴブリンに荷物を背負わせ粗末な斧や棍棒で武装させた2頭のコボルトを引き連れた若造が、天狗の鼻ももう少し低かろうとばかりにいきり倒してこっちを睨んで来ていますねぇ。
確かテイマーとしては、ゴブリンを精々2匹ぐらいも使役できればスジがいいって座学で聞いてましたから、まぁテイマーとしてはきっと優秀なんでしょうけど今回はちょっと、いや滅茶苦茶相手が悪かったですねぇ。
懐のタマが不機嫌そうに鼻を鳴らして短くニャッと鳴くとその場の空気が凍り付き、憐れなゴブリンはガタガタ震えたかと思うと泡を吹いて失神し生意気そうなコボルトたちは一斉に尻尾を股間に巻き付け腹を上に向けて手足を縮めて寝転びましたねぇ。所謂服従のポーズですか。
コボルトもやるとは知りませんでしたねぇ。連中は飼い主と違って身の程を弁えてますねぇ。どう考えても逆立ちしたってレベル288のタマに勝てる訳が無いじゃないですかねぇ。
若造の方は、何が起きたか理解できずに呆然と立ち尽くしてしまってますねぇ。あんちゃんは『井の中の蛙大海を知らず』って言葉知ってますかねぇ?相手が格上か格下かを嗅ぎ取る嗅覚を養わないとダンジョンどころか一般社会でも冷や飯を喰らう事になりますよ?
儂のようにね。
「急いでいるならソレをサッサと回収して行ってください。数は確保できてもまだまだ練度が足りていないんじゃないですか?」
アカリちゃんから冷たい一言を喰らうと、若造は慌てて使役している筈のゴミを引きずってそそくさとその場から逃げていきましたねぇ。
「テイマー一人じゃアレが限度だろうだから少々力を付けたとしてもあれじゃあ3階層に辿り着けるかってどうかってところか。
それに引き替えこのじいさん、いや鈴木サンはどこまで行けるんだろうな」
そんなもの日帰りできる範囲に決まっているじゃありませんか。この大喰らいどもに毎日満足に喰わせるのってどれだけ大変か解って欲しいものですよ、ええ。
「もしかして鈴木さ、いえ、イチじいさんはポチちゃんとタマちゃんに狩らせてドロップ品を持ってきていたんですか?」
あぁ、昨日の納品の事ですか。昨日どころかずっとポチとタマに狩って貰ったドロップ品を納品してますよ。
因みにドロップ品の拾い漏れを搔き集める所謂『落穂拾い』は儂はやった事が無いんで要領がよくわからないですよねぇ。
それにしてもアカリちゃんは流石ですね。儂が『イチじいさん』って呼ばれて喜んでいるのを思い出して呼び方を戻してくれるなんてまたまた惚れ直してしまいましたよ。機転が利いて器量が良くておっぱいが・・・おっとこれ以上はセクハラ案件になってしまいますねぇ。口に出して無いからセーフって事で。
キツイ言い方も痺れるんですけどその裏で相手への配慮が隠されているとかギルド職員の鑑ですね、こっそりギルドに納品に来るようになってまだひと月ぐらいしか見てませんけどねぇ。
「儂は戦闘力の無いポーターですからねぇ、誰も手を出さないお宝を外に出してあげてるだけですよ」
そう、誰が狩ったかは不問に付さないと一般人は面倒なんですよねぇ。漸く昨日から探索者(仮)になりましたけどねぇ。
「もうバレてるのにまだ韜晦するのかい?ホントは研修が終わってからやるんだけど鈴木サン、今鑑定して見ていいかい?」
「随分砕けた言い方になりましたねぇ。
どうせ隠しても仕方ないんですからどうぞ見てくださいな」
吹っ切れたのか祭藤一尉が半ば自棄になったかのような言い回しで行ってきましたんで自由にさせてあげるようにしましょうかねぇ。
あんたの技量でどこまで見えるかは知りませんけどねぇ。
鈴木一郎 71歳 レベル101
職業 ポーター レベルMAX エルダーテイマー レベル5
ポチの主君 タマの※※
委細不明
ポチとタマより100以上もレベルが低いせいでしょうか職業までは鑑定出来たようですねぇ。
「レベル101、ですか。正しければ世界の十傑に入って来るんじゃないんですか?「私の眼が節穴だとでも言いたいのか!」
煩い外野は無視してくださいね、それからポーターっていうのは散々聞かされていましたけどエルダーテーマ―という職業は初めて聞きましたが、イチじいさんは何かお知りでしょうか?」
「あの時のアナウンスは一方的に言われただけですからねぇ、ただのテイマーじゃゴブリンとかコボルトくらいしか従えられないってのに対してエルダーなんですからもっとすごいのを連れていけるって事でしょうかねぇ。
レベル200越えのポチとタマを見て貰えば分かると思いますけどねぇ」
愛しのアカリちゃんからのたっての御指名なんですけど、儂もどこからも詳しい説明を受けていた訳じゃ無いんですから尤もらしく憶測でしゃべる他ないんですよねぇ。
「このワンちゃん、ポチちゃんでしたっけ?鑑定が正しかったらものすごいレベルですよねぇ。「鑑定出来たモノは正しいものしか表示されないんだ!私の鑑定結果を疑うのか!」
うわぁ、おっさんウザすぎ。ただ確認してるだけじゃん。信用してないって言ってんじゃないよぅ、信じらんないって言ってるだけじゃん」
あぅあぅ おぅぅぅふ
自然体の娘っ子侑花ちゃんの素直な感想が、祭藤一尉はお気に召さなかったようで大変ご立腹ですねぇ。
どさくさに紛れてポチめ、美人の娘っ子が気に入ったのか色目を使って構って貰おうとか百年早いからとっとと伏せでもしなさいよねぇ。
はぁ、ダンジョンの外じゃまぁデカいだけの駄犬みたいなものですから、そう思われても仕方が無い訳なんですけどねぇ。
「一尉殿の鑑定もレベルとやらが上がれば精度も変わってくるでしょうからこれからのお楽しみって事でよろしいじゃありませんかねぇ。
そろそろ中に入らないと日付が変わるんじゃないですか?
こんな可愛いお嬢さんをそんな遅くまで束縛してたりしたら人権団体からトツられるでしたっけ?そう言う事になりはしませんかねぇ。
さっさと前に行こうじゃありませんか」
そう何時間も経ったわけじゃありませんけどねぇ、周りを刺激し続けるのは得策じゃない・・・もうそう言うレベルの騒動じゃない気がしますけどとにかくさっさと研修を終わって貰わないといけませんねぇ。
このままじゃ研修が終わる前にお迎えが来ちまいますよねぇ。




