第伍話 じいさん、使役士になる
明日は分かりませんが今日は投稿出来ました
お暇つぶしにどうぞ
「今日は3人だけだから第1層をぐるっと回ってお嬢さん、えーと市原侑花サンの職業が見つかるまで全員で回ってもらいます。
花田泰生サンは戦士レベル3ですか・・・この前に潜ったのは?」
「丁度1年前、です」
緊張の色が隠せないアホウは、ダンジョン前のゲートにいるにも拘らず乾いた唇をしきりに舐めて目が泳ぎ回ってる癖して態とらしくえへんと咳をして平常心をアピールしてますねぇ。完全に逆効果ですけどねぇ。大方、前回の研修でミソ付けてそのまま入らずにいたんでしょうねぇ。まさに自業自得ですねぇ( ´艸`)。
儂からポチを奪い取ったにっくき侑花ちゃんは、初めてのダンジョンにこれまた緊張しているようですがポチが態々尻尾をモフらせて落ち着かせていますねぇ・・・あの駄犬はサービスのし過ぎですねぇ。
エサは一週間半分にします!飼い主を舐めたらいかんでしょうが、ねぇ。
あぅあぅ、うぉぅうぉぅ!
今更こっちに媚びてきても判決は覆りませんねぇ・・・まぁ、これからのお前のフォロー次第じゃ考えない事もありませんがねぇ。
「んでもって問題のじいさん、鈴木一郎サンね・・・鈴木サン、ポーターに目覚めたのはいつだね?」
「一尉殿、んなもんちゃんと資料に書いてあるでしょう?字が読めないんですかねぇ?
仕方がありませんねぇ。2か月前に落とし穴に墜ちてからですねぇ。
アレは痛かったですねぇ」
思わずあの時を思い出して腰を擦ってしまいましたねぇ。
「『落ちた』じゃなくて『墜ちた』のかね?
どんだけ下に墜ちたのかね?」
「さぁ、どれだけ墜ちたかは定かではありませんがねぇ。
気が付いた時には、尻の下でコイツがノビてて『ダンジョンが攻略されました』なんて声が聞こえてましてねぇ。
『ポーターが発現しました』とか『エルダーなんとかが発現しました』とか散々煩かったのを覚えていますよ。
その時どさくさに紛れてコイツが眷属になってて、仕方がないのでポチって名前つけて現在に至るって感じですかねぇ」
儂の説明にいきなり周りが静かになってしまいましたねぇ。なんか変な事言いましたかねぇ?
祭藤一尉やアカリちゃんどころか周囲のダンジョンに入る順番待ちしてた連中までもが、固まったみたいに静まり返ってしまいましたねぇ。
「・・・イチじいさん、因みにどうやって穴から出てきたんですか?」
「ポチが儂とタマを背に乗せて運んでくれましたねぇ。
丁度穴に墜ちた時に腰を打って動けなかったですからねぇ、そん時だけはこいつも孝行してくれましたよ」
「そう、ですか・・・」
愛しいアカリちゃんからの問い掛けですから満面の笑みでお答えしたんですけど、それに対する周りの反応が冷たすぎませんかねぇ。あっそうだ。アカリちゃん、肩凝ってませんか?何ならマッサージをして差し上げましょうかねぇ?胸なんかを重点的に。
みんな静まり返っちゃってまるで国葬かなんかでもあってるみたいじゃありませんかねぇ?
あぁぁおぉぉぉぅぅぅぅ あぁぁおぉぉぉぅぅぅぅ
それまで尻尾を弄ってた侑花ちゃんがひっそりと手を引っ込めてしまって、ポチが悲しそうに遠吠えを始めてしまいましたねぇ。
ざまぁ、と一瞬思いましたけどその寂しそうな眼を見たら少し可哀想かなって思ってしまいますよねぇ。少しだけですよ?浮気したバツもあるんですからねぇ。
「眷属になってたって事はこいつはモンスターだったって事ですか?」
アカリちゃんったらそんなに目を血走らせて鼻水を垂らしながら儂に問い詰めないで下さらんか?流石の美人さんもその形相では百年の恋も覚めてしまいますんでねぇ。
「モンスターじゃないと思いますよ。妖怪ですからねぇ」
再び凍り付くギルド。
ギギギッと音立てそうな感じで首を儂の方に向けた祭藤一尉が、何か言いたそうに口をパクパクしてますねぇ。顔から血の気が引きまくって死人みたいなんですけどねぇ。
「祭藤一尉さん、何か言いたければはっきり言って貰わないと年寄りの耳には届かないんですけどねぇ。時間は有限ですからねぇ、無駄は省きませんとねぇ。『光陰矢の如し』って言うじゃないですかねぇ。黙っててもいいですけどねぇ早くして貰わないと儂の寿命が来ちゃうでしょ?」
「ポ、ポチちゃん。侑花を食べちゃうんですか?」
あぅあぅ おぅふ うぉうおぅ!
ポチがハッとした顔になって首を振りながら慌てて喋り出しましたねぇ。そんなに侑花ちゃんに嫌われたくないんだ、へぇ~。
「お嬢ちゃんみたいに可愛い子を食べるとかそんな事をチラッとでも考えた日にはこいつのエサはひと月砂にしてあげますから大丈夫ですねぇ。そんな度胸はこいつには端っからありませんからねぇ」
ほれちゃんとフォローをしておいてあげたから有難く思いなさいな。その泣きそうな眼は止めなさい。
・・・仕方ない、撫で回して落ち着かせるしかありませんねぇ。
「モンスターじゃないとの事ですが一応鑑定で確かめさせていただけますかね?」
「どうぞご随意に」
祭藤一尉のスキルのレベルがどれだけのものかは知りませんが儂がいる限りポチやタマが暴れるなんて事は無いんですから安心していて欲しいものだねぇ。
ポチ 365歳 レベル210
鈴木一郎の眷属
委細不明
これが祭藤一尉の見立てたポチの鑑定結果でモンスターかどうかは不明、という結果でしたねぇ。何のモンスターなのか何も教えてくれない、ですかねぇ」
ついでにタマは、
タマ 288歳 レベル288
鈴木一郎の※※
委細不明
という事でこっちも祭藤一尉のスキルでは判別できない事が判明したんですよねぇ。
どちらにしてもレベル200越えのバケモノであるという事だけが判明してその場の空気を更に凍らせたのは事実ですかねぇ。
「こんなの、いえこれほどの魔物を従えられるってどれだけの実力を持ってるんだね?」
「実力はどうかは知りませんけどねぇ。タマは60年前から飼っているし、ポチは儂の尻に敷かれて恭順してるみたいだからそれ以上でもそれ以下でも無いんじゃないのかねぇ」
こんなの呼ばわりされて一瞬ムカッときましたけど、祭藤一尉程度のスキルじゃ測れないんですもの仕方ないと笑って流してあげましょうかねぇ。
「でもこの子たちって明らかにゴブリンとかコボルトとかよりランクが高そうですよね?
魔物使いって言われる人たち、つまりテイマーやサマナーでは従う可能性が無いのにイチじいさんには従っているんでしょうか?」
さっきの座学で聞いた範囲じゃ所謂魔物使いと呼ばれる職業使役士が扱えるのはゴブリン、コボルト。召喚士が呼び出せるのがスライム、ゴブリン、キラーバットぐらいだそうそんなにレベルは高くないだろうからねぇ。
どう足掻いてもゴブリンをレベル200を超えるほど鍛えてたらこっちの寿命の方が終わっちまうからねぇ。ポチやタマがレベル1でもコボルトより下とは思えないしねぇ。




