第参拾参話 じいさん、モテ期が到来する
明けましておめでとうございます
順調に遅れて今日の投稿になりました
「我が生涯に悔い無し!冤罪は別ですけどねぇ」
思わず乳神様に拝みながら頭を下げると乳神様の本体が・・・どっちが本体だ?とにかく乳神様が毒気が抜けたみたいなカラカラとした男っぽい笑いを上げて儂の肩を叩いてきました。
「ここまで邪気がねぇと怒る訳にもいかねぇな。
これも生まれ持った宿命の一つってもんだ、諦めるしかねぇか。ハッ!
イチじいさん、だっけ?あたしは熊谷阿莉子ってんだ。
いつもはソロでやってっかパーティーにスポット参加してるかなんで『流離いのスナイパー』なんて二つ名があるみてぇだ、けど乳神様?神様まで行っちまうと逆に清々しいってもんじゃねぇか。
こんな若造だけど気楽に付き合ってくれや」
おぉ、神様が儂を赦して下さったねぇ。ではでは儂らも自己紹介をば。
「乳神様に許していただけるとは望外ですねぇ。
不躾なのは生まれ持った性でございまして他意は無いんですねぇ。
申し遅れましたねぇ、儂は探索者に登録して早二月のど新人。鈴木一郎って言いますねぇ。
70過ぎのジジイでポーターでテイマーって言う足手纏いなジョブ持ちですねぇ。ここにいるポチとタマは建前は従魔ですけどホントの事はギルドにも教えていないトップシークレットなんですねぇ。
で二つ名は・・・最近『猫使いのくそジジイ』ってのが流行っているらしいですねぇ」
「改めてお久しぶりです。ギルド職員で現在このパーティーに出向中の『鬼姫』こと祭藤亜華莉です。
ジョブはxxxですが大っぴらにはしていませんのでご勘弁してください」
「侑花は市原侑花なの。ジョブはアーチャー、です。ジョブレベルは3になりました。
えっと、的中スキルが付きました・・・二つ名は、まだありません」
「ここにいる三人がパーティー『ウルフアンドパンサー』の全員ですねぇ」
儂がそう言うとアカリちゃんが頭を振って来ましてねぇ。
「イチじいさん、ポーターでテイマーなんですからちゃんと紹介してあげないと」
そう言って儂の腕の中で大欠伸をするタマと女の子に気の済むまでチヤホヤして貰って気が済んだのか戻ってきたポチの方を指さします。
「えぇ、訳アリだって言ったばかりじゃないですかねぇ。
・・・じゃあ他言無用でお願いしますねぇ。これは祭藤さんもお嬢ちゃん同様にお願いしますね。
ポチはとあるダンジョンでダンジョンボスをやっていた狗神、タマは自称288歳の猫又なんですねぇ」
意を決して声を潜めてポチとタマの正体をお披露目したって言うのに、女性陣の反応は芳しいものではありませんねぇ。
「自称とか言ってもウチのバカ叔父の鑑定結果でも、タマちゃんは288だったじゃありませんか」
えぇ、そっちの方に食いつきました?
「でも鑑定結果では「おじいちゃんってもしかしたら鑑定で何でも見れちゃうの?」
自分の分とか眷属とかに限定ですけど見えますねぇ「「「ええ!!!」」」
どうかしましたかねぇ?」
鑑定どころかその上位規格の鑑識スキルを持ってるなんて絶対には言えませんからね、ここはどうにか誤魔化しときませんとねぇ。
バレたら死ぬまで狭い部屋に拘束されて気が狂うまで何かとにらめっこを続けてタダ働きを強要されなきゃならなくなるって眼に見えてるんですから、今の政府には意地でも貢献したくないんでそれこそ死んでも嫌ですからねぇ。
「ポーターには呪い耐性と鑑定が生えやすいって聞いていたから納得すっけどさ、それってパーティーメンバーでも適用すんの?」
「ポーターの職業柄、呪われてようが毒を持っていようが回収しないと仕事にならないから必然的に呪い耐性毒耐性は付きやすいですし、実際儂にも付いてますよ。
同じように拾得物がどんな害を持っているかを見極めませんと心構えってものもありますから鑑定とかも生えやすいのは事実でしょうねぇ。
でも儂のは自己完結してますからねぇ、きっと繋がりが密でないと無理でしょうからポチやタマ程度に繋がりが無いと見えませんよ」
物凄い食いつきを見せてくれました乳神様でしたけど、儂の答えにはややがっかり気味でして何とも申し訳ない思いになってしまいますねぇ。
「イチじいさん、阿莉子さんには随分と親切に対応されているようですけど?」
「へっ?いやいや何をおしゃりますやら儂は祭藤さんを差し置いて事を為すようなジジイではないですからねぇ。推しが一番ですよ、えぇ一番ですとも」
「・・・目が泳いでますけど?まぁいいでしょう、じゃあもし家族になったらその鑑定の範囲には入ってこれるんですか?」
「物凄く無茶苦茶な仮定の話ですけどねぇ・・・ポチやタマとの繋がりを考えますと一考の余地はあるかも知れませんねぇ」
「よーし分かった!あたしを嫁にしろ!」
一瞬、何を言われたのか分かりませんでしたが、能々言葉を反芻して出た答えは、
「無茶は言わないでくださいねぇ」
「何でさ、そんな歳でこんなところに入って来るくらいだから家族はいない金は無い地位も無いってトコだろ?
あたしも似たようなもんなんだしさぁ、似たもん同士一緒になったって構わねぇっつーか都合がいいだけだろ?」
乳神様の勿体無くも有り難いお言葉ではございますが、儂には重大な瑕疵情報があるんですよねぇ。
「儂には2億ちょっとの借金があるんですよねぇ。そんなもんがあるのに嫁になんてとてもじゃありませんが無理ですよねぇ」
「でもそれって冤罪が原因だって言ってたじゃないですか。だったら晴らせばいい訳ですし何の問題もありません!
私が妻になります!」
「泥棒猫が横から口挟むんじゃねぇよ!あたしが嫁になるってんだからそれでいいじゃねぇか!」
「ゆ、侑花もお嫁さんになるもん!」
儂、なんか悪い事でもしましたかねぇ?意味も無く神と推しと愛弟子から求婚をされるとかどうなってるんでしょうかねぇ。歳も歳ですから子作りとか期待されても無理がありますし国家が相手の冤罪を覆せるビジョンもありませんからお金に苦労をさせる事は間違いないというのにこの人たちは何を血迷っているのでしょうか?これって夢?はっ、もしかして寿命が尽きかけているんでしょうかねぇ!
「・・・取りあえず前が移動しましたから動きませんかねぇ」
気付けばまた一組フロアボスに敗れたらしく、ボロボロになった集団が肩を落としながら通り過ぎていきます。一人はケガが酷いのか仲間に肩を貸されての退場ですねぇ。
そしてひとグループ分繰り上がって、儂らも一歩前進という訳です。睨み合う三人を促して前進すると前から肩を怒らせた中年男が儂ら目指してやってきますねぇ。
顔中無精髭で一杯で清潔感とは無縁そうな男で、薄汚れた鎧を身に纏って金ぴかに磨き上げた楯を大事そうに持っていますねぇ。
さしずめ乳神様に応援を頼んでいたクランやらパーティーやらのリーダーと言ったところでしょうか?
「おいアリス、何水を売ってんですか。次、僕らの番だよ」
見た目と喋りのギャップで耳がキーンってなりそうですねぇ。
「あ゛、何言ってんだよタコ。こっちは真実の愛に目覚めたんだからお前らの茶番に付き合ってるヒマなんてねぇんだよ」
「で、でもアリスがいないと僕たち完全に負けちゃうんだよ?」
「いても勝てねぇよ。楯磨いてるだけでタウントも取れねぇへぼタンクの分際でどこに勝ち筋が有んのか言ってみろや」
「だから、アリスの先制攻撃で怯んだすきにワーって行ってあっちが慌ててる隙に出口に飛び込むの」
「・・・その鈍足で本気でそんな事出来ると思ってんのか?もし出来たとしてもそんな卑怯なマネやったらお前ら挽肉にされっぞ」
表情が解りづらい髭面でもこっちから怯えてるのが丸分かりな顔してオロオロし始めるへぼタンク。
「でもアリスがいてくれるから僕たちここまで頑張ってこれたのにどうしたらいいんですか?」
「・・・そのような事は私たち部外者に尋ねるのではなく、ご自分たちで分析をされて初めて理解が出来るというものです。
敢えて私の立場から言える事は、少なくともあなたにはフロアボスに挑戦する為の資格には欠けているように感じますが?
まずは態勢の立て直しから始めることが肝要かと」
アカリちゃんの冷たくも現実的な助言にこれじゃあ鬼姫なんて呼ばれるのも当たり前か、なんて思いながらもこいつと乳神様の関係がちょっと気になってしまいましたねぇ。
だってそうでしょう、アリスって呼び捨てにしてるんですから。
「つかぬ事を窺いますが乳g、いや熊谷さんと貴方とのご関係をお教えいただけると助かるんですが」
「夫婦です。たった三人で挑戦するとか狂気の沙汰だと思いますけどウチのアリスを引き抜こうとか思ってるんでしたらお門違いです」
儂のモテ期はこうして泡と消えたのでした。えーとこう言うのを何と言うんでしたっけ・・・そうそうイミフですねぇ(´;ω;`)。
まぁリアクションもほぼありませんし辞めてもいいかなと思う今日この頃
もしかしたらこれで最後かもしれません
尻切れトンボになるのは忸怩たるものがありますが需要も無ければ才能も無いという事でご容赦を




