第参拾弐話 乳神様、降臨する
このギルドでデビューしてからもう二月、ですねぇ・・・ここ一月ちょっとはただ只管あぁりぃわぁくでフソウの練習を熟した後、夕方まで侑花ちゃんの射撃に付き合ってその後一時間余りポチやタマの食い扶持と国から背負わされた借金返済の為に7階層をうろつくと言う生活を繰り返して居ましてね・・・侑花ちゃんは的中スキルをゲットし、アカリちゃんはアカリちゃんで(絶対に教えてはくれませんが)何やらスキルを習得出来たみたいでして、かく言う儂もなんと第3のジョブを頂戴してしまいましてねぇ。
「侑花ちゃん、レベルは10位にはなっただろうかねぇ」
「おじいちゃん、またそれなの?もうボケちゃってぇ。まだ9だよ。アーチャーレベルだってやっと3に上がったばっかだもん。
一人前って言ってもらえるのっていつになるんだろ?」
「アーチャーとしてならもう同レベル帯の他のジョブの方たちと遜色はありませんから今だと半人前って事かしら?
アーチャーレベルが5まで来たら堂々と一人前って言っていいわよ」
儂がせっかちなばっかりにボケ老人の称号を貰ってしまいましたねぇ・・・ただ話の切っ掛けが欲しかっただけなんですからねぇ。ちゃんとわかっていますってば!十年前の総理大臣はちゃんと言えますし今のヤツは・・・さぁ、フソウの練習でもするかぁ。
「って事はぁ、やっと並の新人に慣れたってトコかぁ。
でもこれってアーチャーじゃあ凄い事なんだよね」
「もちろんよ。私がギルド職員として関わり合いがあった中では侑花ちゃんの域まで頑張った人って一人しか知らないし胸を張っていいと思うわ」
「『流離いのスナイパー』さん、ですねぇ。
儂も会った事が無いお方ですがどんな方なんですかねぇ」
「探索者歴が侑花ちゃんと同期のおじいちゃんが偉そうにしちゃダメでしょ?
冗談はともかく、あの女は・・・なんて言うか、誰も信じていない目をしてたなぁ」
やっぱりそうですか、アーチャーにとってアタリが強いこの世知辛い探索者界隈で生きていくって事は人間不信が深まっていくって事になるんですかねぇ。
あ、儂は探索者に成る前から人間不信ですけどねぇ・・・今はアカリちゃんと侑花ちゃん、なんて信じてもいい仲間が出来ちゃいましたけどねぇ( ・´ー・`)。
「そう言えば、侑花のレベル気にしてたけどおじいちゃんはレベル上がってるの?」
「急に藪から棒にねぇ・・・気が付いた時は101でしたからずっとそのままですしレベルキャップにでもなりましたかねぇ」
よくゲームとかじゃあるじゃありませんか、キャラのレベルは99が限度ですとか、30で終わりですとか。
ダンジョンが10階層毎にボス部屋があってそれをクリアすると地上への転送がされるようになるだとか昔のゲームでよく見た構造があるんですから、レベルキャップくらいあってもおかしくないと思いますよ?(byヤスウラさん)。
くわぁぁぁぁ ビタンビタン!
タマがこう言ってます、いつまでも喰っちゃべって無いでさっさと前に進めと。
そんな事言ったって10階層のボス部屋前って渋滞してるんですから仕方ないでしょう?まだ前に5組が待っている状態で後ろにもひぃふぅみぃ・・・9組が待っているんですから。
「こんなに待ちがいるって事はダンジョンが栄えているって事ですかねぇ・・・」
「んな事あるかい!今のボスになって強すぎて倒せねぇのと負けを認めると退去を許してくれてるんでリトライがこんなに膨れ上がってんじゃねぇかよ!
・・・っつーか、鬼姫に会長の孫、それから・・それから・・・それかぁらぁ・・(ビタンビタン!)あっ、猫使いのくそジジイか!」
後ろから前の様子を見に来た荒くれ者が儂たちに噛み付いてきましたけど鬼姫(ギルドでの当たりの強さから来たアカリちゃんの渾名)と会長の孫(言わずと知れた侑花ちゃんの事)はすんなり出て儂は自己主張するタマが睨むまで解らないとか知名度に難があり過ぎじゃありませんかねぇ?
それになんです?その『猫使いのジジイ』ってのは。そりゃあ自由に遊び歩くポチと怠惰を託けて儂の腕から離れようとしないタマじゃ存在感に差があるのは分かりますけど、儂ってタマの付属品かなんかですかねぇ?
キャア♡ あぉあぉうぉあぉぅぅぅ
黙っているとあのバカはどこまで遊びに行くか解りませんねぇ。儂がリードを強く2回引きますとポチのヤツが不承不承と言った風情で3個後ろのパーティーの方から戻ってきましたねぇ。
因みにそのパーティーは女の子のみで構成された5人パーティーで女好きのアホウにとっては嘸かしパラダイスであった事でしょう。
何ならあっちに永久貸与しても構わないんですからねぇ。どうせいても役には立たないんですからそれでも構いませんよ、ええ。
「ポチよ、お前は一週間のおやつ抜きですねぇ。一体誰の眷属か解って行動してるんですかねぇ、このアホウは」
「おじいちゃん、これからボス戦なのにそんなにいじめちゃダメだよ?
侑花たちの中じゃ一番の戦力なんだよ?」
あぉあぉおわぉぅぉぅぉぅ!
ちょっと褒められたからって侑花ちゃんに媚びるのは止めなさい。
「静かに出来ないんだったらどっかに行ってくんない?あたしが精神統一出来ないんだけど(# ゜Д゜)」
「すみませんでした。私の監督が行き届かず不快な思いをさせてしまい・・・え?阿莉子さん、ですか?」
騒がしいバカ犬のせいで前の方にいた探索者がクレームを入れに来たのを対応したアカリちゃんが固まってしまいましたねぇ。
すらりとした長身に適当に結んだと思われる長い黒髪。歳の頃なら二十四、五。ダンジョンではご法度とされる昔ながらの煙草を咥え(コンプライアンスを気にしてはいるのか火は点いていない)黒のライダースーツのようなモノをラフに着こなし黒光りするコンパウンドっぽい弓を持つ垂れた前髪を鬱陶し気に撥ね上げた化粧っ気の無い勝ち気な瞳が印象的な美女がそこには立っていました。
それよりなによりライダースーツを押し上げて激しく自己主張する二つの女性である事を詳らかにする塊に儂は眼を奪われてしまいましたねぇ。
でかっ!
侑花ちゃんの弓を引くのに全く邪魔にならないそれは論外として、儂とそう背丈も変わらないアカリちゃんの充実したアレに匹敵すると言うか甲乙付け難い豊かなナニがそこには鎮座ましましていらっしゃいました。
ありがたや、ありがたや
「じいさん、遠慮が無いってか不躾ってかヒトの乳凝視すんのどうかなんない?」
「誠に申し訳ございません、阿莉子さん。これでも実害は無いんですよ?こうして私たち二人が安心して付いていられる位には良識のある方ですんで。んもう!イチじいさん!食いつきが凄過ぎます!」
「・・・はっ?あまりの見事さに意識が飛んでいましたねぇ。
いやいやこれはお恥ずかしいトコをお見せいたしましたねぇ。まさか乳神様が降臨していただけるとは我が生涯に悔い無し!
冤罪は別ですけどねぇ」
これが乳神様と儂ら『ウルフアンドパンサー』のファーストコンタクトでしたねぇ。




