第二十玖話 勇者、罪を認める
明日は分かりませんが今日は投稿出来ました
お暇つぶしにどうぞ
「太原異界管理官、虹の勇者の発言は正しいのでしょうか?」
「私がそんな不正に加担して何の意味があるのか?馬鹿馬鹿しいにも程がある。
戯言に耳を傾けて『月の申し子』と『栄光の七人』にまで嫌疑を掛けるとかどうかしてるとは思わないのか?
悪い事は言わん、祭藤主任はバカげた命令を撤回するべきでそれが賢明だと私は思うが?」
真っ直ぐなアカリちゃんの視線を正面から受けてそう言い放つトカゲ野郎の面の皮の厚さには、ほとほと呆れてしまいますねぇ。あぁ、月の申し子と栄光の七人とは虹の勇者と同様に強盗紛いの手口で不正を働いていると黄原から名指しをされたパーティーですねぇ。
しかしまぁ、トカゲ野郎ときたら何ですか?黄原の自白を虚言と切って捨てて、自分の正当性を誇示しようとでも思っているんですかねぇ?
所長と主任では階級差で揉み消せるとでも踏んでいるから強気なんでしょうかねぇ。
「私は嫌疑を掛けている訳ではありません。任意で証言を得たいだけですから異界管理官はご自由にお帰りになっても構いませんが?」
「汚らわしい従魔に自室を不法占拠されている状態でどこに帰れと言いたいのかな?君は」
その汚らわしい従魔ってぇのはウチのタマなんですけどねぇ?
「不法占拠、ですか?
誰かが花田主任心得に指示をしてその従魔が護るお宝を失敬しようとしなければこんな事態にはならなかったと思いますが?」
「それは私ではない!」
「では、その誰かは北畑課長なのでしょうか?それとも待平係長でしょうか今側班長、竹田班長でしょうか」
今側ってのはトカゲ野郎の一の子分でイエスマンだって有名だし、待平は確か警察からの出向組だった筈。北畑と竹田は印象が薄くて儂はよく知らないんだよねぇ。
バカ花田ときたら上に諂い下を甚振るどうしようもないクソ野郎でしたから、きっと誰の命令でも喜んで手を出したでしょうねぇ。タマの力も自分の実力も解らないような低能でしたからねぇ。
「誰が指令を出したかなんてここで確認をしていたんだから解らないに決まっているだろうが!
君は組織がなんであるかさえ理解出来ない低能だったのか!
上意下達はしかるべき組織の姿では無いのかね?」
「そうなりますと異界管理官が下した命令を花田主任心得が実行した事になりますが?」
「何でそうなる!私が判断するまでもない事案を其々が勝手に判断しただけではないか!」
「戦果品強奪を勝手にギルドが判断して行ったと言われる訳ですね?
そうなると誰が私たちを信用してくれると言うのでしょうか?言わずもがなでダンジョンでの秩序は崩壊しますが?」
おぉ、アカリちゃん、攻めますねぇ。
理詰めされてトカゲ野郎の機嫌が急降下ってところですかねぇ?ここまで鼻息が聞こえてきますねぇ。
「明らかに信用のおけない受刑者が無辜の探索者から戦果品を強奪したと聞けば誰だって悪の手から戦果品を確保しようとするだろう」
「虹の勇者側が鈴木氏の疲労度を推し量ってギルドに入ってから難癖をつけたように見えますが?」
「それこそ虹の勇者を悪者にしようというバイアスが掛かった見方であると私は断言するが?
それに九分九厘仕留めた所で仕上げを攫われたという録音が残っているのはどう説明するんだ」
儂が受刑者だから悪者に出来るというバイアスが掛かっているのはトカゲ野郎の方じゃないか、ねぇ。
「いつまでもこんな不毛な水掛け論をしていても埒が明かないな。誰か今側班長をここに呼んで来なさい」
ほほう、腰巾着を呼び寄せて一気に決着をしようって肚かねぇ。
さてアカリちゃんはどう出るかねぇ。
「いえ、それには及びませんよ所長。副所長の自分がここに来ましたんで」
そう言いながら入室してきたのは特徴的な歩きをする小男でしてねぇ。確かあれはモンスターに片足を食い千切られてポーションが間に合わずに義足生活になったと噂の小田副所長ですねぇ。
あんな咋なビッコをされて覚えていない奴は、重度のアルツハイマーかめく〇かつん〇ってとこでしょうねぇ。
差別用語だコンプライアンスだって言っても現実的にそうなる確率が高い職業してるんですから言い換えたりはしないのが探索者流ってもんですよ。
副所長、言い換えればサブマスター。その野心は深淵より深く業火より熱い。
要はトカゲ野郎にとっては獅子身中の敵って事ですねぇ。
当然、トカゲ野郎は苦虫を纏めて噛み潰したような酷い顔になりまして、一方虹の勇者はと言うと思わず自分の口を押えて小さくなってしまいましたねぇ。
ただこの欲の深い男が敵か味方かは正直判断が出来ない所でしてねぇ。儂を陥れた連中と接点が無いかどうかもよく分からないんですよねぇ。
「虹の勇者がもう一度10階層の裏ボスを討伐してくればいいだけですよ。
鈴木老人の言う通り、こいつらの実力じゃ六人がかりでも殺せないどころか爪の先を削れたら御の字と言うところなのに今は三人。
どうやってオークを倒すのか興味がありますので、自分が付いて行って確認しても構いませんが如何かな?
自分たちの名誉も守れるし実力も示せる。後腐れナシの一発勝負だ。探索者冥利に尽きるだろ?
もし嫌だって言うなら鈴木老人の言い分が正しい、それで終わりだな」
「い、いや、その。六人いたから勝負できた訳ですし今じゃ戦力不足で3階層も危ういんでご勘弁を」
息も絶え絶え10階層から5階層まで逃げてきたような連中に再戦をしろとは中々以って無茶を言いますねぇ。
それに対する虹の勇者の答えは当然Noな訳でして、これまた当然の如く儂の嫌疑は晴れ儂の荷物を守って抵抗したタマは忠義の猫『忠猫』と呼ばれる事になっていくんですがねぇ。
そして忠猫タマが立て籠もっていた通称GMルームからは、色々と資料やら金品やらが発見されましてサブマスターの小田と鑑定の鬼と化した祭藤一尉が眼をキラキラさせてチェックを始めていますねぇ。
これでトカゲ野郎は失脚し、サブマスターが次の所長が来るまでの間我が世の春を謳歌する事になるんですけどそれはまた別のお話(あんまり話が膨らみそうにないから無しかな?)。
儂はと言うと・・・フソウの型なるものを習う羽目になりましてねぇ・・・年寄りの冷や水って言葉を知らんのかい!
この章はここまでです
ストックもほぼ尽き恐怖の取って出し状態になってしまいましたので、これからは土曜更新にさせてください
この話は主人公がジジイだという事でジジイ感を出して見たくて話数を漢数字表記にしています
以前小切手に手書きで書いてあげた事が有って壱(1)、弐(2)、参(3)、伍(5)、拾(10)までは知っていたのですが肆(4)、陸(6)、捌(8)、玖(9)は知りませんでした(知るきっかけは某夏目友〇帳だった事は内緒です)
自分史上最高齢の主人公を出すにあたってこの表記にしたんですが捌とか見つからなくて苦労しました
半年掛かりで書いたものがひと月でなくなる恐怖に慄きながら週1ペースを何とか守りたいと思う今日この頃、どうかなが———い眼で見てやって頂けたら幸いです
一応予定では閑話を挟んで新章という事ですが不定期にならないように頑張ってみます




