第弐拾伍話 じいさん、トレインをかまされる
明日は分かりませんが今日は投稿出来ました
お暇つぶしにどうぞ
「ジジイ、命が欲しけりゃ身ぐるみ置いて跪け」
見ず知らずの年寄りになんて酷い事を言うんでしょうねぇ。
まぁ、犯罪者まがいやら犯罪者そのものや脱獄犯やらが隠れ蓑にしている事も多い探索者ですからこんな輩が混ざり込んでいても驚きはしないんですけどねぇ。かく言う儂だって言われも無い罪を背負わされて弁済をさせられ続けてる受刑者なんですけどねぇ。
タマはと言うと儂の事は気にもせず、曲がり角から現れるであろう敵に向かって爪を研ぎ始めてますねぇ・・・儂の事は心配せんのかい。
「どこのどなたかは存じませんが相手を見て強請った方がいいんじゃないかねぇ」
「おれたちが誰だって関係ねぇじゃねぇか!おれたちは10階層の裏ボス相手に敗れて逃げてる最中なんだ!それもこんなトコまで追って来やがってる!こりゃあもうオーバーフローだ!
そうだ、このままじゃオーバーフローが起きちまうからお前はここで見張っていろ、おれたちはみんなを呼んでくる!
おれたちにはギルドにホーコクギムがあるんだ!だからお前の装備を・・・装備を」
「こんな汚いジャージが欲しいんですかねぇ?」
10階層から逃げてきた敗残兵(自称)は漸く見掛けた見るからに弱そうな儂から毟り取れるだけ毟り取ろうとでも思ったんでしょうけどねぇ・・・ジャージにサンダル履きでリュック背負ったジジイから何を毟り取ろうとでも言うんでしょうかねぇ?
「なんでそんなカッコでここに居やがるんだ!ここはダンジョンだぞ!」
「来たからに決まってるじゃないですか、ねぇ」
「おい青木、このジジイヤバい奴じゃないのか?」
「うるせぇ!名前で呼ぶなってあれだけ言ったじゃねぇか!赤尾!こいつは赤尾だからな!」
「くそっ!なんで俺の名前までバラしてんだよ!おい黄原!お前もなんか言え!」
「こんな事してないでさっさと逃げようよぉ」
はい、気の弱そうなひょろっちい黄原君の意見が一番正解に近いですね・・・トレインをする気が無きゃねぇ。
「青木赤尾黄原ねぇ。お前さんたちこのまま逃げる気かねぇ?」
「逃げるんじゃねぇ!知らせに戻るだけだ!」
「このまま上に戻るって事はトレインが原因の迷宮氾濫が発生するって事じゃないんですかねぇ?」
「オーバーフローはオーバーフローだろうが!時間がねぇ!赤尾、木原!逃げるぞ!」
時間が無いならすんなり行けばいいのにねぇ?
でも儂に絡んだ事はきっちり思い知らせてあげませんとねぇ。
儂は、さっきゴブリンの腰巻を掴んでた火ばさみで青木の襟首を引っ掛けると真上に放り上げますねぇ。
然程高くない天井にぶち当たって『ぶげぇ』なんて無様な声をあげて青木が落ちてきますねぇ。その青木の腹を先程オークのキンタ〇を蹴り飛ばしたサンダルで踏みつけて残りの二人を見つめますねぇ。
これが筋骨隆々の壮年だったら天邪鬼を踏みつける多聞天みたいで様になったでしょうが生憎と儂は事務職で涸れ果てたジジイ、何とも締まりのない絵になりましてねぇ。
「あ、青木を返せぇ」
「そんな事より早く逃げようよぉ」
おや、裏ボスとやらが曲がり角を曲がって来ちゃいましたねぇ。
「黄原さんでしたかねぇ。もう遅いですよ、あれ、何やらかしたんです?」
儂の見る方に顔を向けた途端、黄原が腰を抜かして座り込み失禁をしちゃいましたねぇ・・・最近、失禁やら脱糞やらによく遭遇するんですけど、儂何か悪い事しました?
目を瞑ってどこかの神様に祈りを捧げ始める赤井と一人だけでも逃げようと黄原が作った水溜りの中でもがく青木。
やらかした事の責任は取らなきゃダメでしょ?儂だって嫌々だろうと弁済に勤しんでいるんですからねぇ。
さてさて、戦闘意欲も戦闘能力も喪失した敗残兵どもを絶望の淵に追いやった敵は・・・バカでかいオーク、6つのおっぱいをプルンプルンさせていますからメスなんでしょうねぇ。
ぴぎぃー!ぷぎゃー!
とっても五月蠅いですねぇ。興奮しているにしてもそんなに甲高く吠えなくてもいいでしょうが、ねぇ。威嚇する為でしょうか手に持つ長柄の斧、というか他に穂先も見えますからハルバードなんでしょうか、それを振り回して見せてますねぇ。
それに対峙するのは我が相棒のタマ。
静かに身を低くしながら2本の尾を上下にリズムよく揺らしていますねぇ。
ぴゃー!!!
一瞬の対峙の後、口から涎を飛ばしながらメスオークが手にした無骨なハルバードを振り回してタマに襲い掛かります。戦いに慣れたというより怒りに任せたと言う感じの動きですねぇ。
余裕でオークの一撃を躱し、腕から駆け登ってタマがメスオークの喉笛に牙を立てますねぇ。血の代わりに喉から噴き出す黒い粒子がそれが致命傷である事を物語ってますねぇ。
そして、タマを振り解く事も出来ず膝から崩れ落ちるメスオーク。
その時に取り落としたハルバードがカランと乾いた音を立てたのが妙に耳に残ってしまいますねぇ。
たったそれだけでこの勝負は終わってしまいましたねぇ・・・レベル200越えは伊達じゃないという事ですねぇ。
そして残されたのは茶色い拳大の魔石に大きな肉の塊、そして小型ペット程の瓶。倒れる前に手放したハルバートも消えずに残っていますねぇ。
そこに脱兎のごとく駆けよるのは赤井。大方ドロップ品の先制権でも主張するつもりでしょうねぇ。
ふしゃぁぁぁ!
それを見て毛を逆立てて威嚇する我が愛猫、タマ。
途端に腰を抜かしてワタワタと逃げ出す赤井には失禁脱糞のおまけが付いていますねぇ。
な”~ごな”~ご!
嫌そうに顔を顰めて儂に訴えてもお前さんのやった事だから仕方ないでしょうがねぇ。
そうは言ってもちゃんと褒めるべきは褒めるのが飼い主としても道と言うものですねぇ。
小便に塗れた青木を蹴飛ばしタマの許に駆け寄ると一頻り撫で回して労を労い戦利品を回収しますねぇ。
連中が見ている前ですからアイテムボックスは使わずに手で拾い上げますねぇ。
連中がどんなに物欲しそうな眼で睨み付けた所で儂に擦り付けて助かろうとした事実は変わらないんですよねぇ。
ところでドロップ品に鑑定を掛けてみるとどれも呪いは掛かっていませんねぇ。あのハルバートは『貞操の守護者 ドゥバルゥダ』の銘があるようですねぇ、それから瓶に入っていたのは『美しき魔獣のプラセンタ』・・・あんなぴゃーぴゃー五月蠅い豚が貞操の守護者で美しき魔獣?ネーミングに詐欺罪を適用してくれませんかねぇ?




