第弐拾肆話 じいさん、猫と散歩する
明日は分かりませんが今日は投稿出来ました
お暇つぶしにどうぞ
5階層にやってくるとタマは儂の腕を離れブルリと身震いをしてますねぇ。
するとその姿はどんどんと膨れ上がり黒豹そっくりとなりますねぇ。
ただ本物の黒豹と違うのが尻尾が2本になっている事ですねぇ。
本来ダンジョンにはいない種類の生き物なので冗談半分にコイツはクァールだって事を言ってますけど、儂の中の認識できるステータスではタマは猫又なんですねぇ。だから言ったでしょ、妖怪だって。
実は儂は鑑定が出来る・・・と言うかその上位スキルの鑑識を習得しているんですよねぇ。だからあの無能が鑑定出来なかったポチやタマのステータスもしっかり理解しているんですよ、実はね。
猫又で黒いシャムとかかなり珍しい属性の持ち主なんですけどコイツの攻撃手段は・・・っと早速獲物がやってきましたねぇ。
儂らの存在に気付いて殺気を振り撒きながらやってくる連中に、気付くとも気付かないとも知れない自由さで素知らぬ振りをしながら背伸び&欠伸を見せるタマ。
雄叫びを上げて飛び掛かってくるのはちょっと大きめの青鬼と棍棒に振り回されながら走ってくる小さな5匹の緑鬼。ホブゴブリンとデミゴブリンの組み合わせですねぇ。
スライムやらゴブリンやらってやたら種類が多いんで覚えるのが大変なんですけど5階層からはこうやって違う種類がパーティーを組んで襲ってくるんですよねぇ。
因みにデミゴブリン<ゴブリン<ゴブリンソルジャー<ゴブリンアーチャー<ゴブリンナイト=ホブゴブリン<ゴブリンマジシャン<ゴブリンリーダー<ゴブリンコマンダー=ホブゴブリンナイト<ゴブリンキング<ゴブリンロード=ホブゴブリンリーダー<ゴブリンエンペラー<ホブゴブリンコマンダー<ホブゴブリンキング<ホブゴブリンロード<ホブゴブリンエンペラーの階級があってこの15階級18種の全ての討伐に成功した者にはゴブリンスレイヤーの称号が、更に別系統らしいゴブリンアサシン、ゴブリンヒーラーの討伐に成功した者にはゴブリンスマッシャーの称号が付いてくるんだそうですねぇ。
実際世界でレベル100を超す探索者たちは、そのほとんどがゴブリンスレイヤーの称号を持っているそうでゴブリンスマッシャーに至ってはレベル87のゴブリンだけを追い求めてきた探索者一人が達成出来ているんだとか。
もちろん、儂は例外ですがねぇ。ポーターでテイマーなのにそんな戦闘最前線の称号を持てる筈が無いでしょうがねぇ?
さて、儂が長々と蘊蓄を垂れている間にタマは3つのゴブリンパーティーと2つのコボルトパーティーを壊滅させてしまいましたねぇ。
儂はその辺に散らばった魔石を拾い集めて、おや、珍しくドロップ品がありましたねぇ。
ダンジョン内のモンスターは死して屍を晒す、なんて事は無く魔石を残して霧のように消えてしまいますねぇ。極稀にドロップ品と呼ばれる様々な物品を残すんですけど・・・5階層のゴブリンやらコボルトやらが落とすものって大したモノが無いんですよねぇ。
現に鑑識を掛けてみると、『ホブゴブリンの腰巻(切れ端)』『コボルトの体毛(抜け毛)』・・・拾ったところで何十円もしないものですよ。
腰巻なんて実際に臭いし触りたくも無いんですけどねぇ、探索者の規則で放置すると追徴課税対象にされてしまうんですよねぇ。こんなもので何百万も追徴されるなんて真っ平御免ですからねぇ。
思わず溜息を吐きながら今や貴重品となったビニール袋を拡げ(海外との通商がほとんど途絶えていますからねぇ)火ばさみでドロップ品を摘まんで収納し、周囲に人がいないのを確かめて散らばる魔石をスキル『アイテムボックス』で一気に収納してしまいますねぇ。
世界中の探索パーティーが儂を狙う最大の理由は、アイテムボックスを習得していると思っているからですから自衛の為にも取り扱いは慎重になりますねぇ。
アイテムボックスというスキルは、ポーターやその上位ジョブのサプライヤーが習得可能であるとされているスキルでダンジョン外でも使用可能な万能スキルですからねぇ。
ダンジョンで一番あの世に近い一般人なんて揶揄されるポーターやサプライヤーですが、その1%弱が保有しているスキルであるとパーティーの生存率が爆上がりするとまで言われていますからねぇ。
レベル100まで上がっているんだから持っていて当然と言われていても必ず発現する訳では無いスキルですんで儂としては無いものと偽装を続ける訳ですよねぇ。
露見したら死ぬまで行きたくもないダンジョンの奥まで連れていかれるのが確定するんですからこっちとしても必死ですよ。
な゛~ご
おや、タマは仕事が早いですねぇ。
儂がぼぉっとしている間にまたゴブリンやらコボルトやらを殲滅していたみたいで・・・小粒が多い魔石の中に茶色い二回りほど大きい魔石が混ざってますねぇそれにドロップ品も。
『オークの睾丸』
性欲の塊で襲われたら女性は100%妊娠させられると評判のオーク、要するに豚のバケモノ猪八戒の親戚筋のキン〇マ、ですかねぇ?
ちょっと待ってくださいねぇ。オークってこのダンジョンじゃどの辺から出るんでしたっけ・・・9階層から出没、ですか、ねぇ。
タマや、オークが出たんですかねぇ?
タマは素知らぬ振りで欠伸をするばかりですねぇ・・・こんな時まで猫っぽくしなくてもいいのにねぇ。
60年の付き合いでしょ?
どどどっ!
地響きが伝わってきましたねぇ。儂は急いでオークのキ〇タマをビニール袋に蹴り込み(素手じゃ触りたくありませんよ、ねぇ)、魔石を一気にアイテムボックスに吸い込ませますねぇ。
「何かあったのかも知れませんねぇ。とにかく上に戻りますよ、タマ」
タマはフッと太い息を吐きながら首を振りますねぇ。どした?
『アーッ助けてくれーっ!』
そんな声と共に先の曲がり角から中年の集団が倒けつ転びつ息も絶え絶えに現れてしまいましたねぇ。
えぇ、現れてしまいました、ですよ。
これは今更逃げる訳には行かないじゃありませんか。例えトレインされる事が確定だとしてもジジイ一生の沽券に係わりますからねぇ。
石畳なのに泥に塗れた装備が破れたり剥がれ落ちたりした集団ですねぇ。武器はと言うと精々長めのナイフ程度、逃げるのに一生懸命で全てを放り投げてきたといった雰囲気ですねぇ。
血走った眼で儂を見つけるとそいつら三人が這うようにやってきましたねぇ。
そしてこう言うのです。
「ジジイ、命が欲しけりゃ身ぐるみ置いて跪け」




