第弐拾参話 駄犬、じいさんを裏切る
明日は分かりませんが今日は投稿出来ました
お暇つぶしにどうぞ
さて、侑花ちゃんの今日の訓練は終わり、という事で儂は二人と別れて5階層へと行きましょうかねぇ。
「おじいちゃん、今日もこれからポチちゃんたちのお散歩なの?たまには侑花たちと一緒に帰ってもバチは中らないと思うよ?」
「もしかして不埒な輩が心配なんですかねぇ?
でも考えてみないさいな、祭藤さんが一緒について行くんですよ?ギルド職員がいるそこに態々絡んでくる程のバカは普通にそんなにいないんじゃないですかねぇ?」
「でも訓練で集まった石がこんなにいっぱいあるんだよ、ねっ、ほらこんなに?これ替えたら結構なるんだよ?だからいつも迷惑掛けてるんだもん、侑花に奢らせてよぉ」
侑花ちゃんったら殊勝な事を言ってくれちゃって、じいちゃん眼から汗が大量噴射しちゃって脱水で死んじまうかもじゃないですかねぇ。
心根の優しいその言葉ってとっても嬉しいんですけどねぇ、孫に集るジジイって外からどう見えるかって考えたら二の足を踏んじまいますよねぇ・・・年寄りの見栄ってヤツですかねぇ。
アカリちゃん、黙って無いでなんとかフォローとかしてくれませんかねぇ?
そう思ってアカリちゃんを見てみると化粧が崩れる程の大号泣の真っ最中でしたねぇ・・・どこかぶつけましたかねぇ?
くわぁぁぁぁっ あぅあぅあぉぅ!
懐ではタマが尻尾をビタンビタンと打ち付けながら大欠伸をかましてくれてます。これはさっさと5階層に行けというこいつなりの合図ですねぇ。横では、ポチはポチで居ても立っても居られない様子で足踏みしながら儂の方を見上げてきますねぇ。涎を拭けぇ、儂なんて喰っても鳥ガラより不味いんだからそんな目で見るんじゃありません!
だからといってここでリードを放そうものならダンジョン中が『すわ迷宮氾濫が発生した!』って大騒ぎになる事は必定でしょうから絶対に放しませんからねぇ、ステイだよステイ!
まだ2階層にいるんだから自重しなさいって言ってるでしょうが!今まで我慢してたのは解ってますから落ち着いて伏せてなさいねぇ。
「侑花ちゃん、我儘言っちゃいけませんよ。イチじいさんはいろんな事情があって物凄い借金を負っているんです。
それを少しでも返さなきゃいけないからこれから多分5階層か6階層にでも行って稼がないといけないんですよ」
「それは解ってるけど・・・ポチちゃんやタマちゃんともっとお友達になりたいだけなのに」
復活したアカリちゃんったらそれって理由の半分ですからね?メインはポチとタマの食費を稼ぐ事とコイツラの運動不足の解消にあるんですからね?
ぶっちゃけ借金なんて踏み倒してこの国捨てる位の覚悟は出来ているんですから。こんなでっち上げの借金なんて真面目に返す気なんて起きる筈無いじゃありませんか、ねぇ?
それから侑花ちゃん?儂ってポチとタマのおまけって事ですかねぇ?
眼がセクハラって言われてしまいますと言い返しが出来ませんけどね、儂としては単に保護者として暖かく見守っているだけなんですからねぇ?
まぁ、ケガをしないか心配で腰回りやら胸周りやらに視線が集まりがちなのは否定しませんけどねぇ。
このいやらしそうな目付きは生まれつきなんですから仕方が無いじゃないですか、ねぇ!
じぃぃぃぃぃっ
・・・なんですか、タマや。その疑わし気な目付きは。60年の付き合いで儂の事はよくわかっているでしょ?
いえすろりいたのぉたっち、ですよ!手は出して無いじゃないですか、ねぇ。
いえいえ、本来筋金入りのおっぱい星人のこの儂が、侑花ちゃんの何と言えばいいか流石に抉れているとかってのは失礼に当たりますけどなだらかな曲線と言うには曲線に失礼なほぼ直線のような胸とかに何かしたいとかは思っていませんからね?
まぁその代わりにっと言っては何ですがあのボリューミィなお尻は、どういう構造か確かめてみたくなるのは否定しませんけどねぇ。
いやいや犯罪臭のある発想では無くてですね―――
「あー、またおじいちゃんが変な事考えてるぅ。ああなったらしばらく戻ってこないもんね。
キョーカン、あきらめて帰ろっか?」
「そうね。アレが無ければ頼りがいのあるおじいちゃんなんですけどね、ああなっちゃったら仕方がないものね。
ポチちゃん、タマちゃん。また明日もよろしくね」
に゛ゃっ! あぁぁぁおぅぅぅ!わぅあぅあぅ!
突然の衝撃と共に儂はダンジョンの地べたと熱いキッスを交わしていました。
平たく言うとリードに引っ張られて10メートル程地面を引き摺られたんですねぇ。
状況から判断すると別れの挨拶を二人が切り出した時にタマは儂の腕の中から『に゛ゃっ』とかカッコよく返事をしたんだと思うんです。でも駄犬ときた日には儂の事なんて忘れて侑花ちゃんの元に駆け寄ろうとしてリードを持つ儂ごと二人の許にすっ飛んで行ったに違いありません。
それを証拠にあの沈着冷静なアカリちゃんが自分のハンカチを取り出して儂の擦り傷を拭おうとしてくれてますし、泣きながら抱きしめる侑花ちゃんに身を預けてポチがウットリしてますからねぇ。
こういう時、タマは傍観者の地位を譲りませんから儂の腕の中でただ欠伸をしているだけですねぇ。
という事はこの駄犬は自分の食い扶持も忘れていつも遊んでくれる相手に媚びたかったという事ですね。
「祭藤さん、儂の方は大丈夫ですからねぇ。
ダンジョンの中じゃ破傷風とかの心配はありませんから傷が悪化する事は無いでしょうからねぇ。
大方、このボケ犬は自分が食事する事を忘れているんでしょうから気にしないで構いませんよ。
ポチよ、お前のエサは儂がやらないといけないんじゃなかったかねぇ?
でもお嬢ちゃんと一緒にいる方を選ぶんですねぇ。
ひもじくて死にそうになってもお前ならそう簡単にくたばったりはしないでしょうからそっちについて行けばいいですねぇ。
物覚えの悪い駄犬だとは思っていましたが飼い主が誰で何をしようとしているのかさえ理解出来ていないとは思ってもいませんでしたねぇ。
お嬢ちゃん、迷惑を掛けるとは思いますけどコイツの世話をお願いできますかねぇ?」
ポチよ、テイマーと従魔の契約を甘く見るんじゃありませんねぇ。
なにも喰えずに明日ヘロヘロになって詫びを入れて来てもそう簡単に許すとは思わない事ですねぇ。
ここは侑花ちゃんに迷惑を掛けますけど放置一択でいいでしょうねぇ。
儂はニコニコとした笑顔を浮かべて侑花ちゃんへポチのリードを渡しどっこらしょと立ち上がってタマを抱え直して5階層に向かう事にしましょうかねぇ。
5階層ぐらいならタマだって無双できますから心配なんてしませんよ。




