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色ボケジジイのダンジョン散歩  作者: BANG☆
閑話 その2

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第弐拾話 性悪狐、古狸に勝つ

明日は分かりませんが今日は投稿出来ました


お暇つぶしにどうぞ


番外編 祭藤一尉とギルマスです

 然程(さほど)広くないこの関東ギルドダンジョン6壕のギルドの三階にある所長室では、二人の男がお互いに苦虫を潰し飽きたようなしかめっ面で対峙をしていた。


 片や空輸も途絶え海での輸送も頻繁には出来なくなったおかげで貴重品と成り果ててしまった葉巻を咥え懸命に火を付けようと悪戦苦闘をしているギルドマスター太原、そして自衛官というプライドだけでその場に居続ける事を強要される一等陸尉祭藤である。


 炎が揺れる事で誰の眼にも手の震えを隠せていない事に気付いていないギルマスと本来なら目敏(めざと)くそれに気づかなくてはならないのに心ここにあらずですっかり見逃している鑑定士の対決にもし第三者の眼が有ったなら茶番の一言で片づけられるこの状況はカオスの一言に尽きていた。


「・・・祭藤一等陸尉。貴方、あのくそジジイに何をやらかしたんですか?」

「現状の把握と秘匿情報の開示を(うなが)しただけだが何か問題でも?」


 鑑定スキルの持ち主が秘匿情報の開示を要求するとか語るに落ちるとしか言いようが無いのだが、当の本人は悪びれもせずに面の皮のぶ厚さを誇っている。


「あの偏屈な大ウソツキが教えてくれましたか?」

「もちろんだがそれがどうかしたのか?」


 尊大な態度を示しつつも祭藤の背中には冷たい汗が流れる。実際には30分も掛けて鑑定をしてみたものの何の情報も得られていないのだからそれこそ大ウソをついているのは祭藤であるのだから。


 ただ、幸か不幸かこのダンジョン近辺に祭藤以外には(たと)え低いランクであっても鑑定スキルを持つ者など存在しない。


 鑑定スキル持ちは希少なのだ。それだけにこの無能な男は組織から放逐される事も無くのうのうとふんぞり返っていられるという訳だ。


 自信ありげに書き並べた嘘八百の鑑定結果を乗せたファイルをひらひらとさせて無能は(うそぶ)く。


 本人からの申告がこの結果と食い違いを見せたから詰問して不正を認めさせたと。


「ほほう、それはどのあたりが食い違っていたのですか?」

「確か細かい数値やらが違っていたね。まぁ誤差の範囲と言えば聞こえがいいが本人はえらく恐縮していたがね」


 先日本人に会ってきた時の印象と違う事に気付いた太原が切り込んでも証拠も何も無い事を良い事に祭藤は適当に流す事にする。


「確認をさせて貰っても?」

「何言ってるんだね、これは国に提出する極秘資料だぞ?

 例え服役中の受刑者であっても緊急時でも無いのにギルマス程度が見られる筈無いだろうが、身の程は知らんと身を亡ぼすぞ」


 実のところギルドマスターこと異界管理官の権限は少ない。ダンジョンの氾濫でもあれば最前線で指揮を取らねばならない立場であるにもかかわらず、セキュリティの壁に阻まれて個々の探索者の実態を知る事など出来ないのだ。


 ましてや最も重要なスキル構成ともなると個人情報保護に拘束されて身動きが取れないのだから指揮の取りようもないというものだ。


「それでは一つだけ教えて貰えませんか?」

「スキル以外なら答えても構わんが」


 それはそうだろう、祭藤にとってはスキルは全く知る(よし)も無かったのだから簡単にウソがバレてしまう。


「では防御力を」

「・・・あー、13だな。それを知ってどうする」


 (ようや)く火の()いた葉巻を(くゆ)らせて太原は事も無げに言ってのけた。


「あのくそジジイが妖怪(会長)の孫と妙な事をしてたのが気になっただけですよ」

「妙な事?」

「自分が的代わりになってアーチャーに目覚めちまった孫に撃たせていたんでどの程度の防御力なのかと思いましてね」

「13でも防具を付けりゃあ矢なんて大丈夫だろうが」


 さも馬鹿馬鹿しいといった顔つきで太原をねめつける祭藤に太原が衝撃の言葉をぶつけた。


「あのジジイの格好はご存知でしょう?いつもと同じジャージ姿でしたよ。

 それでいくらレベル1でも目の前で撃たせる矢なんて下手すりゃ貫通ものですがあのジジイ涼しい顔して撃たせ続けているんでどれくらいあるのか気になりましてね・・・13でしたか」


 ステータスの基準は成人男子の平均が10で表示される。13では一般人の中じゃ強めだけど飛びぬけて堅いというものではない。ただ、本人からは33と聞かされているがそれを真実だとは思っていないから適当な数字を言ったに過ぎない。


 なのにジャージ姿で至近距離で弓で射られて平気とか数字との齟齬(そご)が大きすぎる。


「インナーに何か付けているんじゃないのか?探索者ならそれくらいしてるだろう」

「・・・どうされました?顔色が悪いようですが。医者を呼びましょうか?」


 意地の悪い笑いを隠そうともせず太原がさも親切そうに祭藤に声を掛ける。


 舐めて掛かった祭藤の負けだった。


「医者?そんなものに掛かる暇が有ったら葉巻を寄こせ・・・いつから分かってた」

「貴方自身のレベルが30前後なのにくそジジイのステータスがレベル100を越しているにもかかわらず確認できたという違和感と貴方の挙動ですね」

「・・・最初からって事か。

 で、どうする?上に突き出して点数稼ぎでもするか?」

「いえ、このままここで専属の鑑定士としてやっていって呉れれば文句はありませんよ」

「それは!

 俺はこの地区5つのダンジョンを統括する鑑定士だぞ?ここに掛かりっきりになる訳には・・・」

「じゃあ、破滅して貰うだけですよ。スキルに目覚めそうな奴も出てきましたしそんなに困る事にはならないでしょうが」

「くっ!!」


 祭藤は軍門に下った。


 太原の高笑いがダンジョンにまで届きそうな程にギルドの中に響き続けていた。

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