第拾捌話 じいさん、出社拒否をする
明日は分かりませんが今日は投稿出来ました
お暇つぶしにどうぞ
「おやおや、随分な言い方じゃないですか。裏で糸を引く?こんなジジイ一人の為に誰が糸引くのか聞いてみたいものだねぇ。
祭藤主任、君は私が何か解っているのかね?上司だよ、上司。
まぁこの場は会長のお身内もいらっしゃる事だから彼女に免じて今の話は聞かなかった事にしておくよ。
但し、二度目は無いからそう思い給え。君の代わりなんぞいくらでもいる事を忘れないで欲しいものだね」
爬虫類のような体温を感じさせない冷徹な視線をアカリちゃんに突き立て、鼻をフンと鳴らしてギルドマスターは儂らに背を向けましたねぇ。
もしかして親戚にリザードマンでもいるんじゃないでしょうかねぇ。嫌な目付きですよ、ねぇ。
「お言葉を返すようですが、儂は明日もここに潜る事になるでしょうねぇ」
儂の言葉に青筋を蟀谷に立てたトカゲ野郎が振り返ってきましたねぇ。
やだぁ、こわぃ~。ポチやタマの本気を見てきてる儂からしたらイキった小役人なんぞ屁でもありませんけどね。いやぁ、めんどくさい。
「お前に我々の決定に異議を唱える事など許していないぞ!」
「いやいや、規則に従えば政府統括ダンジョンなんてトコに儂なんぞが入れる筈が無いでしょう?」
儂の思わぬ反撃に、トカゲ野郎はその爬虫類染みた眼を細め胡散臭げに鼻をひくつかせましたねぇ。
「何が言いたい」
「政府統括ダンジョンてのは国家として最重要な資源ですよねぇ」
「当たり前じゃないか」
「そんな処に儂みたいな経済犯罪の被疑者を入れるんですかねぇ?」
「お前は被疑者ではない、受刑者だ」
「それは今更儂としちゃどちらでも構いませんがねぇ、身元の正当性が正しく担保されない人間をそれも経済事件の関与を疑われているような人間をどういうレトリックで入れようとしてるんですかねぇ?」
スパイの疑いがあるとか贈賄の経験者であるとか不正経理の常習者であるとかそう言う理由をでっちあげて儂を罪に陥れたのに、不正を見逃さない観点から身柄の確認が厳密な統括ダンジョンに行けってのは道理に合わんでしょ?
儂はてっきりギルド所有の難関ダンジョンのどれかに潜れって言われるのかと思っていましたからね?
そっちなら脛に傷があろうが無かろうが成果さえ出せば文句は言われませんからねぇ。
となると、労働力としての儂が欲しいんじゃないとか邪推してしまうのは心が汚れ切ったジジイだからですかねぇ。
案の定、顔色を赤から青、白から土気色、紫から緑と目まぐるしくカメレオンのように変えながら儂への反論を目論むトカゲ野郎はとうとう何も言い返せなくなって黙り込み、その様子には気分が清々しましたねぇ。
「もう一つおまけに言わせて貰いますとねぇ、祭藤一尉ドノってば儂の鑑定を完全には終了していないんですよねぇ」
「そ、そんな筈は!私の手元にはちゃんとデータが」
「おやぁ?それって本来部外秘の筈じゃないですかねぇ。どうせ大方空いたところは一尉ドノが無い脳みそ絞りつくしてでっち上げた作文なんでしょうけど?
大体レベル50程度で鑑定スキルレベル3の人間程度で儂でさえ100オーバー、ウチのポチとタマに至っては200オーバーの鑑定なんて正しく出来る筈が無いじゃありませんか、ねぇ?」
儂を召集する根拠が揺らいでトカゲ野郎の眼が泳ぎまくってますねぇ、ざまぁですねぇ。
抑々身元の証明と共に政府統括ダンジョンに入るには正確なステータスの提示が必須だった筈ですねぇ。だってそうでしょ、嘘のステータスで潜り込んで好き勝手にされちゃあ国のメンツなんて奴が丸つぶれでしょうから詳細なスキルまで確実に把握しなきゃなりませんもの。
ところが祭藤一尉ドノの鑑定程度じゃワシやポチやタマのレベルだけが漸く鑑定出来ただけで肝心なパラメーターは不明のまま、当然持っているスキルも不明じゃ何があっても誰が責任を取れるのかって小田原評定が始まっちゃいますって。当てずっぽでくそバカ無能のレベルを推測しましたけど、多分そんなに外れていないと思いますよ?
「一番手強いって評判の統括7壕で政府に楯突く鈴木サンを抹殺しようとかだなんて他所のダンジョンの連中が聞いたらきっと日本との通商は終わっちゃうかもしれませんね」
「祭藤!お前は誰に文句を言っているのか?言ってみろ!」
「あら、所長。私はこの界隈に詳しくない市原さんに事情を説明していただけですけど?
何か不都合がありましたか?もしあったらきっちり文章で教えていただきますと幸いです」
どうやらアカリちゃんと儂は相性バッチりみたいだねぇ?お互いにトカゲ野郎の事が大嫌いみたいだからねぇ。
「う、煩い!可愛げのない女なんぞゴミ以下だ!ちょっと見た目が派手なだけで大きい顔をしやがって!
そ、それからす、鈴木!お、お前の都合なんか聞いていない、聞いていないからな!
ただ明日は先方の都合がだな、・・・確認の上で後日連絡する!クソ!覚えてろ、ビッ〇め!」
貧相な肩を怒らせて足早にトカゲ野郎が去っていきますねぇ。世間じゃアレを『逃げた』って言うんですけどねぇ?
それにしても難しい大学を出た筈なのになんて品の無い大人なんでしょうかねぇ。アカリちゃんにケチをつけるとか万死に値する大悪事ですよねぇ。ここには探索者協会会長の耳と目があるってのにダイジョウブ、ですかねぇ?ねぇ、侑花ちゃん。
「おじいちゃん、機嫌治ったみたいだね。慣れたらその笑い顔も可愛くなるみたいだね、エヘ♡」
あ、油断してたら侑花ちゃんの笑顔が飛び込んで来ちゃいましたよ。その笑顔は反則だからねぇ?
イエスロリータノータアッチ?いやいや、ロリータは小学生以下でしょ。でもおっぱいはちっぱいだからろりいたで。いやいや、お尻は立派だからあれは痴漢誘引装置になる。いやいや、抑々年が離れすぎてる。いやいや、何を破廉恥な事を―――
「でも今のおじいちゃんはキライ」
「へ?」
儂が何をした?この世界一安全なジジイに何が起きたと言うの、ねぇ?
「・・・イチじいさん、侑花ちゃんの胸を見過ぎよ。穴でも開いちゃったらどうするんですか?
それより明日の予定をどうしましょうか。さっさと決めないとまた面倒な事になるかも知れないしね」
平常営業のアカリちゃんが妬ましい。もうちょっとなんかありませんかねぇ?
「あいつに面と向かって逆らったのってイチじいさんが初めてじゃないかしら」
あっ、アカリちゃんったらさり気なく儂を矢面に立たせようって魂胆ですかねぇ?
「儂より先にちょっかい出してたのは祭藤さんだと思いますがねぇ」
「あら、そうでした?」
「ふふっ、でも二人ともカッコよかったよ」
あぅわぅおぅおぉぉぉ!
くわぁぁぁっっ
こうして儂ら『ウルフアンドパンサー』の第一日目は終わっていくのでした。
パーティー名はポチがハスキーに似てるからウルフ、タマが黒豹みたいだからパンサーなんですと・・・それだと飼い主の儂はどうなってるのかねぇ。儂だったら『女王様と下僕たち』・・・これじゃ侑花ちゃんの立場が無いから『女王様親衛隊』・・いやこれも儂とポチの事しか言って無いから『イエスロリータノータッチ』・・・これは違う『富士山と甲府盆地』・・・由来がバレたら侑花ちゃんに殺されそうだねぇ『シェスタ』・・・昼寝ってタマの事だけだねぇ―――
儂の脳内井戸端会議は延々と続くのであった 完
まだ終わらないんだからねぇ!
次回は閑話になります




