第拾弐話 美人指導者、降臨する
ギルドから何の音沙汰も無いまま、新人研修を受けてから早三日が経っちゃいましたねぇ。
儂はと言うと、暇つぶしとポチとタマの運動不足解消と懐事情の改善の為にこっそりダンジョンの5階層をうろついた挙句に換金の時にアカリちゃんにバレて説教という名の公開処刑に晒されていました。
アレは、傍目を気にしなければマンツーマンの至高のひと時でしたねぇ。
ただ、一応言い訳させて貰えるならねぇ。
よく考えても見てくださいよ、こっちとしちゃあテイマーレベルが『かんすと』してエルダーテイマーになってる上、身体レベル101ですよ?探索者歴は浅くてもある程度下に行かないと食えないんですけどねぇ(それでなくても大飯ぐらいが2匹もいるんですからねぇ)。それに他にも金が色々と必要ですしねぇ。
まぁ儂としても2匹のおかげでレベルが100を超えているという事実もありますけどもし動かないと運動不足のストレスで暴れ出すんですよ、アイツら。
それにタマときたら、未だにあんなばっちぃもんあたしに運ばせやがったと言わんばかりの冷たい目で睨み付けて視線だけで儂を射殺そうとしてくるんですよねぇ。まぁあん時は、離れてた儂のこのジジイの鼻でも結構来ましたからねぇ。
何はともあれ、咄嗟の機転より野生の勘が勝ったって事で諦めて欲しいもんだけどねぇ。
一方ポチの方はと言うと、お気に入りの侑花ちゃんを乗っけて臭くない方を運んだんですから浮かれ気分の平穏そのもの、ってトコでしょうかね?今日も元気でご機嫌にあぅあぅあぉあぉってお喋りしてますよ。言っている内容は未だにさっぱりわかりませんけどねぇ。
これでもし侑花ちゃんが駄犬の言ってる事を解りでもしようもんなら、絶対コイツ儂の眷属なんか辞めて侑花ちゃんの舎弟にでもあっさり成り下がるんじゃないでしょうかねぇ?
喜んでなるに違いないですねぇ・・・あの節操無しならきっとそうでしょうねぇ。
まぁそれはともかくとして、今日もギルドからは何の連絡もありませんし暇で仕方ありませんから、アカリちゃんから刺されてるぶっとい釘を引っこ抜いてこっそり5階層辺りを散歩でもしましょうかねぇ。
ん?タマがまた儂を睨みつけてますねぇ。もう5階層は飽きたんでしょうかねぇ?
「それじゃあ今日は6階層に潜りましょうかねぇ?「ほほう、イチじいさん。
昨日の今日であれだけこっぴどく怒られたにもかかわらず、5階層どころか6階層に行こうとは中々太々しい神経をお持ちのようですね。
何ならこの宿舎を引き払って頂いても構わないんですけどね?」
え?」
そっと振り向くと、怒りのオーラを全開にして仁王立ちしていらっしゃるアカリ様ではございませんか。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏———そんな顔してたら百年の恋も覚めちゃいますよ、ねぇ?
って事は、タマはアカリちゃんに気付いて慎重に行動しろって合図をしてくれていたんですかねぇ。
一方のポチときたら精一杯尻尾を振ってお座りからのお手をして見せたりと一匹だけいい子ぶって愛嬌を振りまいてますねぇ。
あ、ひっくり返ってお腹を見せた降参のポーズになっちゃいましたか・・・お前さん、世渡りが上手じゃないかねぇ?
とはいえ、ここはダンジョンの外ですから儂はレベル101のスーパージジイではなくただの事務員上がりのか弱い年寄りなんですんで優しくして貰えると爺ちゃん嬉しいなぁ。
「年寄りだと思って優しくし過ぎましたかねぇ?
イチじいさん、いえ鈴木一郎サン。貴方は現状で世界で3番目の高レベルの探索者である事は事実です。
然しながらあなたには三日前に交付された初級の免許しか無い事を自覚してください。
レベル100を超えたポーターなんて世界に一人もいないんですから貴方には公的な依頼が殺到しているんです。まぁ其処迄高レベルなら運び屋を越えて運び手でもしていても当たり前かと思いましたが、探索者にとして登録したまだ数日ジョブに目覚めた時から数えても3ヶ月も経ってない現状では致し方ありません。
ただ既に貴方には高レベルのパーティーに付随して難度が高いダンジョンの踏破をされる事を政府および国際社会から強く要望が出されています。
これには拒否権はありません。ええ、無いんです(# ゜Д゜)!
諸外国も貴方の貸し出しを政府に大変強く要望を出しているとギルドの上の方から通達が来ています。
その点を鑑みてまだ初級の貴方には上級者と同等のダンジョンでの常識、秩序、等々を教育しなければならないと言う事で諸般の事情でアーチャーとして修業をしなければならない侑花ちゃんともども私がお世話をする事になりました(# ゜Д゜)!!!短い間にはなりますがパーティーを組む事になりますのでご了承ください(# ゜Д゜)!
尚、この件につきましてもあなたやあなたの眷属の方たちに一切の拒否権が無い事を改めて通達させていただきます(# ゜Д゜)!!!」
ダンジョンの外なのに怒りのオーラが可視化出来ていますねぇ・・・逃げちゃダメですかねぇ。高位のポーターって事でアイテムボックスを体得しているとでも看做されているという事ですかねぇ。だから本音じゃ鑑定になんて掛かりたくはなかったんですよ。・・・幸か不幸かスキルを見透かされた訳じゃありませんからみんな推測で動いているのか余程儂が憎くて抹殺でもしたいのか、後者の可能性大?儂に冤罪を被せたアヤツラとか色々身に覚えがありますからねぇ。
「いずれ最下層、でしたっけ?そこまで降りるんだったら5階層ぐらいでガミガミ言わなくてもいいんじゃないのかねぇ。
それに探索者は最低限の決まり事を守るんだったら後は自由だって聞いていたんですがねぇ・・・アレはウソって事なんですね?」
「・・・ッ!実は、方々で色々悪知恵がある連中が蠕動しているらしいんです(# ゜Д゜)。貴方や私に恥をかかされたと主張している輩どもが故意に外国に貴方の個人情報を漏洩したらしい・・・という事でもうこのギルドだけでは抑え込む事の出来ない事態になっているのです。
貴方が受刑者の身であるという事も連中の要望が通り易かった一つのファクターであったと思われます。
どちらにしろ仲間を守り切れなかった時点でギルドは敗北しているんです」
悔しそうに血を吐くようなセリフを吐くアカリちゃんに何故でしょう儂は違和感を覚えてしまいました。
「実刑が付いている身といっても冤罪ですからねぇ。いつか雪辱する機会があればいいなぁとは思っていますけど・・・今のが全部じゃないでしょう、祭藤さん?」
アカリちゃんは、唇を噛み締めたまま何やらメモをタマに預けて黙って部屋を出て行きましたねぇ。
デートの誘いなら直接儂に渡してくれたらいいのに・・・今のテンションでそれやられたら地獄へのジェットコースターお一人様ご案内って事になりそうだから今はいいですけどねぇ。




