**第八話──影の歩み、支援者の試練**
生後九ヶ月。
ワシの赤子生活もついに“歩行の完成”へと近づきつつある。
歩くこと自体は既に習得したが、次なる課題は──**環境適応**じゃ。
「……歩けるだけではまだ半人前よな。支援職たる者、どんな状況でも動けねばならぬ」
単純な歩行ではなく、家の中のあらゆる場面において移動を円滑にする。
これこそが支援職の真なる基礎である。
* * *
ワシはその日から、母上や祖母上の行動を観察することにした。
家の中での移動ルート、人の流れ、障害物の位置──すべてを把握せねばならぬ。
「ふむ……この時間帯、母上は台所へ向かい、祖母上は窓際で編み物……なるほどのう」
支援職に必要なのは、**事前に動きを予測する力**じゃ。
いかに仲間の行動を先読みし、最適なタイミングで動くか。
それが、ただの“歩く赤子”と“影の支援者”との違いとなる。
そしてワシは、ついに試してみることにした。
母上が動き始める──
ワシはタイミングを見計らい、歩みを進める。
──スッ。
母上の足元に転がった布きれを、ワシはさりげなく拾い上げる。
「おや? トク、これ……拾ってくれたの?」
母上は驚きながらも微笑む。
ワシはただ静かに頷いた。
「ホッホッホ……これぞ、影の支援者の役割よのう」
小さなことかもしれぬ。
だが、仲間の動きを見極め、最適なタイミングで手助けする。
これがワシの目指す支援の本質なのじゃ!
* * *
その夜、ワシのステータス画面に新たな称号が刻まれた。
**【称号獲得:影の先読み】**
効果:状況把握力+10%、支援行動時の敏捷性+5%
「ふむ……これでワシは、一歩先を読める支援者となれるのじゃな」
ワシの冒険は着々と進んでいる。
次なる課題は、“声による直接的な指示”──
支援者として、仲間へ正しく伝えられる言葉を習得する時が近い。
──異世界赤子伝説、影の支援者としての真価が試される!