第七話──一歩目の先へ、歩みの始まり
生後八ヶ月── ワシの赤子生活は新たなる段階へと突入し、次なる試練が目の前に立ちはだかっていた。
「……歩行じゃ」
つかまり立ちを習得し、すでに数週間が経過した。 この間にワシは“膝の強化”を意識し、少しずつ足を安定させる鍛錬を続けておる。
しかし、歩くとなると、話は別じゃ。 立つだけならば支えがあればよい。 だが、歩くためには“重心の移動”と“推進力”が必要となる。
まさしくこれは、“冒険者の初歩”と同じことよな。
「ホッホッホ……ならば試すしかあるまい!」
* * *
最初の挑戦は、母上の前に立ち、手を伸ばして向かうことから始まった。 母上は優しく手を広げ、ワシを誘う。
そしてワシは──そろり、そろりと片足を出す。
「う、ぬ……!?」
──ガクンッ。
思った以上に重心が前へ傾き、ワシは危うく前のめりに倒れそうになる。 しかし、母上がすぐにワシの身体を支えてくれた。
「大丈夫よ、トク。少しずつでいいからね!」
ワシは小さく息を整え、再度試みる。
一歩、二歩。 まだよろめきながらではあるが、確実に“歩みの始まり”を感じる。
「ふふ……これが、“歩く”ということよな」
ただの赤子の成長ではない。 ワシにとってこれは──冒険の第一歩なのじゃ。
* * *
数週間の試行錯誤を経て、ワシはついに、“数歩の歩行”を達成した。
最初は母上の支えありきだったが、次第に自力でバランスを取れるようになり、 ついには短い距離ならば、完全な二足歩行が可能となったのじゃ。
そしてその瞬間、ワシの脳裏にひとつの確信が宿る。
「これこそが、支援職の土台よのう……!」
支援役とは、ただ立っているだけでは務まらぬ。 必要な場所へ素早く駆けつけ、確実な支援を行うためには、自由な移動が不可欠。 この歩みこそが──ワシの支援力を根底から強化する鍵となるのじゃ。
* * *
その夜、ワシのステータス画面に新たなる称号が刻まれた。
【称号獲得:歩む者の決意】 効果:歩行バランス+10%、移動時の魔力効率+5%
「ホッホッホ……これでワシも、動ける支援者となる準備が整ったわい!」
だが、まだ始まりにすぎぬ。 次なる課題は、“瞬発力”と“状況判断”── 支援役としての真価が問われる時は近い。
──異世界赤子伝説、歩みを得て、さらなる挑戦へと進む!