第四話「ブブブはバフの兆し!? 話せぬならば音で支援じゃ!」
──新たな朝。
赤子としての五ヶ月を過ぎ、今やワシの“支援力”は身体の成長だけでなく、声の表現力へと進化を遂げつつあった。
「うむ……言葉はまだでないが、我が声なき声で支援せねばならんのう」
これまでの泣き声制御はあくまで“鳴かぬ赤子”であったが、今度は逆に、
“意図的に発声し、家族を動かす”ことを試みる段階に入ったのだ。
* * *
日中。
ワシは布団の上で小さく唸る。
「ぶぶぶ……ぶぅ!」
奇妙な音が連続して出るが、これこそが“赤子語”という新たなスキルの芽生え。
この“ブブブ”音には意味がある──実は母上の“抱っこ”を誘う合図であった。
母上はそれに気づき、すぐさまワシを優しく抱き上げた。
「ほっほう……これは……コミュニケーションの第一歩よな」
そう、まだ言葉は出ぬが、音で意思疎通を図るのだ。
これが通じる喜びは、戦場で仲間とジェスチャーや合図を交わす感覚に似ている。
* * *
しかし、それは簡単ではない。
“ブブブ”だけでは足りぬ、他にも様々な音を使い分けねばならぬ。
たとえば──
・「アーッ!」は空腹のサイン
・「グルル」は眠気の合図
・「ブフッ」は興奮や嬉しさの表現
これらを混ぜながら母上や祖母上を“支援”していくのだ。
もっとも、母上はまだ怪訝そうにしながらも、
「おお、何か言いたいのね?」
と根気強く話しかけてくれる。
まさにこれが、支援者と支援される者の信頼の礎となるのだ。
* * *
夜。
赤子は再び“忍び寄る影”のように動き始める。
寝返り、ハイハイ、そして音の駆使。
ワシは家族の動きを見極め、適切な音を出し、的確な支援を試みる。
この頃になると、母上はすっかりワシの“音のパターン”を理解し始めており、
「ブブブは“抱っこ”、アーッは“お腹すいた”ね!」
と、コミュニケーションが少しずつ成立し始めている。
これこそが“言葉以前の絆”であり、支援職に必要な“意思疎通の基礎”じゃ。
* * *
──そんなある夜。
ワシのステータスに、新たな称号が浮かんだ。
【称号獲得:音声支援の開拓者】
効果:コミュニケーション効果+5%、初期魔力制御+3%
「ふははは! 言葉なき音で支援するとは、支援職の真髄よのう!」
これからは、言葉を待つだけではない。
赤子という制限を逆手に取り、音を駆使して“戦況(家庭情勢)を支える”のじゃ。
──異世界赤子伝説、音の支援による新たな章が、今始まった!