第九話──声の力、支援者の言葉
生後十ヶ月── ワシの赤子生活は歩行を得て、ついに“言葉による支援”の段階へ突入した。
「……支援職たる者、ただ動くだけでは不十分じゃ」
歩けることは重要。 しかし、それ以上に重要なのは──仲間へ正しく伝える力じゃ。
言葉とは、戦場においても支援の要となる。 いかに仲間へ適切な指示を送り、状況を整えるか。 それが、支援者としての本当の役割なのじゃ。
* * *
ワシはまず、日常の言葉を積み上げることから始めた。
これまでの発声練習を活かしながら、徐々に単語を明確な形で発する。 まず最初に取り組むべきは──母上への呼びかけじゃ。
「マ……マ……」
以前よりも確実に音が整い、母上はすぐに反応する。
「トク! また言えたね! すごいよ!」
しかし、ワシの目標はこれだけではない。 支援者として、もっと“意味のある言葉”を操らねばならぬ。
ワシは観察した── 母上が食事を用意する時、祖母上が手を伸ばした時、父上が何かを探している時。
その時に最も適切な言葉とは何か? どうすれば、ワシは仲間を正しく補佐できるのか?
その答えは──
「……て、て」
──手。 祖母上が何かを取ろうとしている時、ワシはとっさにその言葉を発した。
祖母上は驚いたようにワシを見た後、優しく微笑んだ。
「まぁ、この子ったら! ちゃんと言えたわね!」
ワシはただ静かに頷く。
「ホッホッホ……これぞ、“支援者の言葉”よな」
* * *
その夜、ワシのステータス画面に新たなる称号が刻まれた。
【称号獲得:言葉を紡ぐ者】 効果:発声精度+10%、支援時の意思疎通+8%
「ふむ……これでワシは、言葉を操る支援者へと近づけるのじゃな」
次なる挑戦は、より複雑な言葉の習得。 そして、仲間との連携を深める支援の基礎を固める時が近い。
──異世界赤子伝説、言葉を得て、さらなる支援へと歩み続ける!