43:パーティーに新メンバー加わる!
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
このエピソードからはSeason2ー新たな出会い編ーのスタートです。
実はシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズンが終わった後に公表したいと思います。(文芸:ヒューマンドラマにて)
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
リンダが、「よっしゃ、これで決まったわね!それじゃ遠慮なくあなた達のパーティーに入れてもらうわよ! じゃー今夜は一緒に飲んで語り明かしましょう!」といきなり陽気にノリノリになっていた。「絶対仲間の仇を取るわよ! みなさんよろしく頼むわ!!」と固く握手を交わしている。
聞くところによると、彼女はやはり29歳で10年近く冒険者としてパーティーのメンバーの男3人とクエストをこなしながらの放浪生活をしていたらしい。黒海沿岸を通りがかった時に立ち寄ったそこのギルドで丁度このクエストが持ち上がったらしいのだ。彼女らのパーティーはギャラが半端じゃなかったためAランクという自負もあり早速受けたようだ。前情報を確認せず、今まで負け知らずのパーティだったため俺たちに不可能はないと思い込み軽い気持ちで受けたとか。気づいた時に仲間3人は血まみれで死んでおり、すでにアンドロイド達の姿はなかったという。話し方やその態度が男勝りで竹を割ったような性格でジュリアとしては好感が持てた。
そもそもジュリアがこのクエストを冒険者として受けることにしたのは・・・本来アンドロイド達をEBSでやっつけてしまえば手っ取り早い話なのではあるが、海上都市は中立を保っているため、その武力介入が原因で政治的に各国から余計な勘違いをされる可能性が高いと考慮した結果であった。また他に今のところ日本に頼らないとEBSをセバストポリまで空輸できる手段がないためでもあった。
ジュリアは今回の滞在では、城には泊まらずこの街中の簡素な旅籠屋に宿を取っていた。もちろんリンダは所持金なしのために泥酔した彼女を3人で介抱しながらその部屋に運んできた。そしてツインルームのベッドに彼女は倒れ込んで熟睡してしまった。ジュリアはマルク達に斬鉄剣が作れる鍛冶屋を探す依頼を再確認して送り出した。そして寝息だけが聞こえる簡素な部屋でジュリアはじっとリンダの寝顔を眺めている。なぜかこの女性とは長い付き合いになるような気がした。
翌朝リンダがシャワーを浴びる物音でジュリアは目を覚ました。
「リンダ、よく眠れた?」と声をかけると
「私、潰れちゃったわね。迷惑かけちゃったわね。」と少々恥ずかしそうである。
彼女は酔っ払いの昨晩とは違い少し落ち着いた様子になっており、ジュリアはもしかしたら、こっちの彼女が素の彼女なのではないかと感じた。
「昨日はあなたかなり呑んで盛り上がっていたわよ!記憶はあるの?」
「あっ、ごめんごめん、飲んじゃうと私陽気になっちゃうらしいのよ。」とやはり恥ずかしそうに言った。こんな彼女であればもっと深い話ができるような気がしてきたので、踏み込んで聞いてみたのだった。
「ねえ、リンダ、あなたはどこの出身なの?」
「バイエルンよ。でも、もう生まれた家も家族もいないけどね・・・あなたは?」
「私は日本で生まれたの。一卵性双生児のそっくりの姉がいるわ。私も彼女以外は身寄りはいないわ。」
「酔っててよくは覚えてないんだけど、確かあなた、アンドロイドだっけ、そのロボットを倒したことがあるとか言っていたような気がするんだけど、その細い体でどうやってできるのか不思議だったのよね。これからパーティーを組む仲間になるわけだし一度お手合わせ願いたいわ。」
「わかったわ。初対面の人にはよく言われるから。そうそう、昨日いた私の仲間2人は覚えている?」
「覚えてるわ。キュートな子達でしょ?」
「マルクとヒデと言うんだけど、彼らにアンドロイドに対抗する武器を作れる鍛冶屋を探してもらっているの。あなたは確か二刀流とか言っていたけど、同じ剣を2本てことでいいのかしら?」
「あなたの剣はロングソードよね?私のは通常の長さの2本ね。」
「わかったわ。鍛冶屋が見つかったら、元になる剣を見せにいくことになるわ。特殊な加工で斬鉄剣になるんだけど長くは持たないの。でも、1体でもやれれば助かるわ。」
「この私のロングソードは特殊な属性の剣で半永久的な斬鉄剣なのよ」
「ここは安宿だけど、ブレックファースト付きだから下に降りて食べましょう!」
と言い2人は降りていった。
その頃マルクはジュリアにお願いされた通りに鍛冶屋ギルドに聞きに行き、斬鉄剣を打てる職人を探していた。だが、残念ながらギルドに登録されたメンバーにはそんな鍛冶屋は存在しなかった。しかし噂ではポジョニ郊外の廃村に残って鍛冶屋をやっている変わり者がいるとかいないとか・・・行って確かめるしかなさそうである。そこでマルクはヒデ以外の斬鉄剣が必要な2人に声をかけてその村に行ってみることにしたのだった。
ポジョニから北東に向かってマルクは彼のバギーを走らせている。その廃村は山の麓にあるらしい。なだらかな緑の丘を過ぎて山が見えてきたところでスピードを落としてマップを確認する。
「あそこに見えている村だと思いますよ。」とマルクが指を刺した。
ジュリアが「とりあえず煙突から煙が上がっている家を探してみましょうか?」と言い、村に入ってから3人はバギーを降りた。本当に小さな村で廃村となった理由はかつて伝染病が流行ったことによるらしい。家々は原型を留めずに屋根は崩落し窓ガラスは割れ放題になっていた。
「本当にこんなところにいるのかしらね?」とリンダが不安そうに言った。
「まあ、せっかく来たからとりあえず小さい村だから回れるでしょう。」と、3人は小径をくまなく探している。人影は全くなく、猫が主人になっている家々が多いのだ。村の奥に入ってみると、遠くにカンカンカンと金属を叩く微かな音が聞こえてきたので、3人はその音を頼りに距離を詰めながら探している。すると村の外れあたり山の麓に煙が上がる家を確認できたのだった。「あれだ!」とマルクが言った。
今3人はその家の前に立っている。確かに小さな荒屋のようではあるが、窓ガラスははまっており屋根も落ちてはいなかった。マルクがドアのノックを叩いたが鉄を打つような金属音は止まらない。彼がドアを動かしてみると施錠させておらず入ることができた。
「たのもーう!」とマルクが大きな声で気を引いた。すると仕事場で打っていた男が振り返った。髪も髭も伸ばし放題の浮浪者のような男だった。そして「お前ら、何者だ?」と驚いた顔で叫んだ。
マルクが、「城から来たものだが噂を聞いてきた。是非ある刀を打って頂きたい。」と言うと、ジュリアがその男に近づいていき、彼女の斬鉄剣を抜いて見せた。
鍛冶屋は彼女からロングソードを受け取り斬鉄剣の歯を真剣な表情で眺めている。
「すげえ!これはどこで?」と目を輝かせてジュリアに聞いた。
「これは私の故郷で有能な刀鍛冶に作ってもらったものなんです。いわゆる斬鉄剣なのです。製作方法は知っているのですが自分では打てないのでそれをできる鍛冶屋を探しています。」と説明した。
するとそれを確認しようと近くに置いてあった鉄製の武具に力一杯その剣で切り込んでみた。亀裂が少し入ったがキレはしなかった。ジュリアがその剣を取り同じように切り込んだところその武具を貫き2つに割れてしまったのだった。「この剣を扱うにはコツがいるのですよ。」と説明した。続けて、「私たちは、この歯を持つ片槍と両槍、そしてソード2本が必要なのです。どうか、打っていただけないでしょうか?」と丁寧にお願いした。
ジュリアの剣捌きに驚いていた鍛冶屋は説明を聞いて「なんで、そんな斬鉄剣が必要なんだ?」と聞き返してきた。「信じられないと思いますが、実は、アンドロイドがセバストポリを征服しようとしている最中で奴らを撃破する必要があるのです。この2人は私のパーティーメンバーなので是非彼らの武器を作って欲しいのです。」と正直に答えると、その鍛冶屋は興味津々のようで、「アンドロイドって、ロボットみたいなやつだろ?・・・なるほど、それを切るためなのか!? 」と言いながら腕組みをして少し無言になった。
「わかった!ただ条件がある。俺もあんたらのパーティーに加えてくれ! 俺の剣の効果を確認したいんだ。それと斬鉄剣といえども1回の戦いで刃こぼれをおこすから研がなければならないぞ。付いて行ってそれもやってやるよ。」と答えた。
「ただ、命の保障はできないから、戦闘への参加は難しいと思いますよ。」とマルクが言うと、「俺はここで自給自足をしていて、弓で狩猟をしているんだ、だから弓なら使えるぜ!だからあんたらの戦いをこの目で見ながら後方から援助はできるぜ!俺も斬鉄の矢尻を使ってみるよ。俺はアドラーだ!よろしく頼む!」と俺でも貢献できるという熱意を感じるのと、やはり自分の作品を自分の目で確認したいという職人の強い意志を感じた。
ジュリアが、「わかりました。では、私たちのパーティーに歓迎します。ただ特別扱いはしませんよ。それとパーティーリーダーは私なんで戦闘中は私の指示に従ってもらいます。」と少し強い口調で確認した。
「わかった。じゃ、早速その斬鉄剣の製造方法を教えてくれ!」と言うことで、最初はどうなるのか?と思ったが、意外と良い方向にまとまり、おまけにメンバーが1人増えたのだった。ジュリアが剣を見せながら加工の秘伝をアドラーに伝えている間に2人は工房を眺めていた。
確かに彼が言うように素晴らし剣が沢山下げられているしアーマー類も作っているようだ。その中に混じって金属製の弓もあり機械制御のボウガンもあった。マルクは興味津々でそのボウガンを手に取り狙いを定めてみている。「アドラーさん、これすごいな!!」、「そうだろう! それが俺のボウガンだよ。」とドヤ顔で答えた。「これは企業秘密でお願いしたいのだが、この山の麓にはダイヤモンドが取れる洞窟があるんだ。斬鉄剣を作るにはダイヤでの加工が必要になるだろ!? 純度が高い鉄鉱石も採掘できるからな。好き好んでこんな廃村に住んでいるわけじゃねえんだけど、ここじゃないと仕事にならねえんだよ。」と今更ではあるが俺は変人じゃないと弁解しているようである。「そもそもの出身は?」とリンダが言いた。
「俺は、バイエルンで生まれ育ったんだ。」
「やっぱり!そう思ったわ。訛りでわかるわ。私もバイエルンだから。」と黙って彼を観察していたリンダであったが同郷かどうかの探りを入れていたようだ。
「えっ、あんたもか?まあ、ドイツ人らしい顔つきだよな!」と言って笑った。
これで2人の距離は一気に縮まっていった。
アドラーには、リンダの剣を2本、マルクの両槍そしてジュリアの方槍(中国槍のような折り畳み可能な2mの槍)をお願いし、2週間で仕上げてもらうことになった。そして2週間後に城から武器と一緒に彼を迎えに来る手筈となったのだった。