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38:空中散歩

この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。


このエピソードからはSeason2ー新たな出会い編ーのスタートです。

実はシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズンが終わった後に公表したいと思います。(文芸:ヒューマンドラマにて)

そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。

さて、諸々とひと段落したジュリアは最近趣味の時間がある。実は彼女は今アビエーターなのだ。今までの日本に対する貢献への謝礼として属代表からプレゼントをもらったのであった。


それは飛行艇のように海上からも飛び立てるモーターグライダーの一種で、専門的に説明すると方向舵をもつウイングレットを備えた中翼単葉の前翼機である。タンデムシートのコックピットとキャノピーは流線型のデザインで、一旦風に乗るとグライダーのようにソアリングできるのだ。簡単に言うと最後部にプロペラがついた2人乗りの軽飛行機である。それに循環エネルギー仕様のため航空時の風力発電とソーラーパネルもボディに備えているためプロペラ1つを動かすには充分な電力供給が可能なのだ。


ジュリアは浮島に繋げてあるこのモーターグライダーに1人飛び乗った。一応パトロールも兼ねているためボディーアーマーを着用しロングソードも持っている。防弾ガラスの流線型のコックピットを閉めてシートに座った。彼女は無骨な計器類が規則正しく並んだこのタイトな空間が気に入っているのだ。


そしてモーターをスタートすると後ろのプロペラがゆっくりと回転し始めた。そう、愛用のホバージェットもそうだが彼女はこの古風なプロペラが好きなのだ。EBSなどに付いている未来風のジェットよりも全然気に入っている。特にこの機体のプロペラはスムースでほとんど音が出ないのでその静けさが好きなのだ。まるで水鳥が飛び立つようにスーッと飛び立っていく。上昇し気流に乗った時点でモーターを止めるとまるで空中を散歩しているかのようにゆっくりと浮かんでいる。そう!まるで風になったかの如く空に浮いているこのひと時が彼女の憩いの時間となっているのだ。


右側の対岸にはモロッコ、チュニジア、アルジェリアの砂漠が遠くに微かに見えている。コバルトブルーの地中海そして雲ひとつない青い空にジュリアの白い機体が風に乗ってゆっくりと進んでいる。まるで映画のワンシーンのような光景だ。マヨルカ・サルデーニャ島を上空から眺めてイタリア方面へと向かっているが、彼女の目的地はシチリア島の先に浮かぶマルタ島なのだ。


ここの世界のマルタ島は、首都はバレッタだが、海岸線の上昇により入り組んだ美しい入江の港は残念がら水没している。しかし密集した人家がある旧市街は高台の上にあったため街の造形としては助かったのだった。そのためイスラム教建築とキリスト教建築が美しい割合で混ざる中世の歴史を物語る街が残っているのだ。海岸線からは城壁が見えその奥の丘にはバロック様式の堂々とした聖堂のドームが聳える。


そしてその聖堂を囲むようにベージュ色の石造りの中世建築物が旧市街を構成しているのだ。ここも緯度的に高温化してしまったため、今では人々が生活できない街となってしまった。そのため街下にある街道は今では滑走路代わりにもなるのである。ジュリアはこの海に浮かぶ街並みを眺めるのが好きなためしばしば時間を見つけて訪れていた。


今日も来てしまった。これで何度目になるのであろうか? ジュリアは着陸後コックピットを開けてマルタ島の風景を眺めた。この島は地中海の真ん中にあるのと地理的に放射能による空気汚染が低いエリアのためヘルメットなしでも短時間であれば大丈夫なのだ。碧い海に浮かぶこのサンドベージュの街並みのコントラストが彼女的にはたまらないのである。乾いた空気、そしてこの高温化した中でも生き延びている木々にそよぐ風、しかし人影はなく、まるで時間が止まっているような空間なのだ。旧市街に移動しいつもの誰もいないカフェに腰を下ろした。彼女の日課としてはここでメディテーションするのだ。そして目を閉じると風だけの空間となる。


しばらく彼女は瞑想に耽って頭を空にしていた。

『カタ』と街の反対側から音がした。その音はいつものこの廃墟と化した街の中には存在しない類の音であったため、彼女は咄嗟に目を開けてその音の方向を眺めてみると1人の男が壁にもたれて立っていた。一瞬で立ち上がりロングソードを抜いた。

「姉ちゃん、おっかねえな!俺はお前さんを眺めているだけだ。ライフルはここに置いてあるぜ。」とその男は言った。確かに男が立っている場所のテーブルの上にはレーザーライフルが置いてあった。あれはあの男が置いたときの音だったのだ。


「おまえ、何者だ?」と対戦モードの時の口調になっている。

この男の風貌は背丈が180センチメートルぐらいブルネットの長髪というより伸ばし放題、左目には黒い眼帯をあてている。そして無精髭を生やし使い込まれた簡易アーマーを纏っている姿だ。目鼻が整い日焼けした浅黒い肌がワイルドな雰囲気を醸し出していた。

「あー悪りい悪りい。俺は海賊さんだぜ。たまにこの島に寄ってお宝探しをするんだぜ。今日はお前さんを見つけたってとこかな。」


『何!海賊だと!?』と内心焦ったが、「仮に本当に海賊ならおまえの海賊船はどこに止めてあるんだ?」とジュリアは退路を考えるために仕掛けてみた。

すると、男は引っ掛かって来たのだった。「俺の船はお前さんが来た側から見ると反対側の水没したプロムナード側にあるぜ。お招き致しましょうか?お姫様。」とふざけた感じで答えた。『ということは、モーターグライダーに乗れさせすれば、海賊船に撃ち落とされることはない。』とチャンスを伺うことにした。


沈黙しているジュリアを見て男は続けた「お前さん、ここら辺ではお目にかかることができないぐらいやけに綺麗じゃないか?どこから来たんだ?」 ジュリアは、海上都市の存在をやたらに海賊に知られるのは得策ではないだろうと踏み「ロンダから来た。」と答えたのだった。


「ロンダ? てっきり最近できた海上都市から来たんだと思ったわ。ただ、見た目からするとただものではないな〜 おまえさん一体何者なんだ?」とその男もジュリアを牽制しているようである。あいにく出くわしてしまったというようなシチュエーションなのかと感じた。


「たまに、ここに来てゆっくりするのが好きなんだ。」とジュリアが正直に言うと、

「俺もここが好きなんだ。気が合うじゃねえか!ずっとおっかねえ顔してねえで、ここで会ったのは何かの縁なんで、少し話そうぜ!」無反応なジュリアを見て、男は再度「武器はここに置いてそこに移動するから切らないでくれよ!」と笑いながら、すでに置いてあるレーザーライフルの他にブラスターガンとサーベルも置きジュリアが座っているカフェに近づいてきている。ジュリアはとりあえずロングソードを鞘に納めて男の動きを見ていた。


「よお!改めて、よろしくな!ここに座っていいか?」というなり椅子に座った。

ジュリアも座ると、「オレらはブリテンから来てこのあたりで海賊をやってるんだ。そもそもやりたくてやってたわけじゃねえが、それしかできるものがなくてな。元々貿易商を仲間とやってたから船はとりあえずあってな。」と脈絡がなく話している。「お前さん、てっきりあの海上都市から来たんじゃねえかと思ったから、一緒にお仕事できねえかな?とか思って聞いてみたんだわ。」と正直に話しているようである。


「そうか、で、おまれら何ができる?」とジュリアが男口調で聞いた。

「まあ、多分海賊達と連んで海軍ごっこってのはできると思うぜ!だが、俺たちは住む場所が欲しいんだよな〜 あの海上都市楽しそうにも見えるからな〜」と言った。


ジュリアは、『なるほど、イスタンブール付近に集結しているイスラム連合軍に敵対するときに海路で兵器を運んだほうが安全ではあるし、こいつらはヨーロッパからの海賊だから、アラビア・アフリカの海賊にも対峙できるのかもしれない』と咄嗟に思った。

「おまえらの海賊仲間はどこから来てるんだ?」


「オレらは10隻ぐらいの仲間がいるが、ブリテンとスカンジナビアだな。それを聞く理由はわかるぜ!アフリカの奴らをやっつけられるか?ってとこだろ?」ジュリアが軽く頷くと、「もちろんやれるぜ!」と男の目がキラッと光り真剣になった。


「そうか、わかった、話を聞こう!撤回しよう。私はあの海上都市の創造主だ。と言っても仲間もいるが。」とようやく真実を話すことにした。


「やっぱり、そうだと思ったぜ!船に乗っているとき、お前さんの飛行機が海上都市の方角からやってくるのを見たからな。オレの船には4人仲間がいる。お前さんらの海上ルートでの貿易をエスコートしてやれるぜ。それに多分アフリカからのお金持ちにも来てもらいたいんだろ?それもオレらがガードしてやるぜ。それでどうだ?」「おっそうだ、わりーわりーオレはブライアンだ!よろしく頼むぜ!」と言った。


「わかった。私はジュリアだ。では、明日おまえの船で仲間を連れて海上都市のピアに来てくれ!他のメンバーに紹介して決めることになるから。」と答えた。

「オッケー オッケー 昼頃には到着すると思うぜ!歓迎のパーティでもやってくれよ!」と言って無防備に背中を向けて、武器を回収し街中に消えていったのだった。


ジュリアとしては不覚だった。寝起きを襲われ不意を突かれた気分だ。あの場でもし撃たれていたら致命傷をおっていたかもしれない。まあ、そんなに悪いやつではなさそうではあるが、まだ信頼はできない奴だと感じた。そしてジュリアはすぐにモーターグライダーことモーグラに戻りこのバレッタから離脱した。一応攻撃を想定してシールドを張っていたが何事もなく帰還することができた。そして、その海賊の話をソフィア、ガルシア、イメルダにもした。


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