34:初クエスト
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
このエピソードからはSeason2ー新たな出会い編ーのスタートです。
実はシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズンが終わった後に公表したいと思います。(文芸:ヒューマンドラマにて)
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
マルクはホバージェットを手配し、スロバキア王国自慢の食材をカーゴルームに詰め込んだ。先方へのお土産のつもりのようである。ツインズも出発の準備をしているところに、またあのメイド達が来た。
「ご準備中申し訳御座いません。第一王子がジュリアさんとの約束を守らなければならないと申しております。今すぐに闘技場にお越し頂く事はできますでしょうか?」と額に汗して焦っている様子である。ジュリアは何事なんだろうとふと考えていたが思い出したようである。
「もしかしたら、剣のお手合わせってことでしょうか?」と、まさかこのタイミングで?と驚きながらメイドに確認した。
「さようでございます。出掛けに申し訳御座いません。第一王子も明日から領地内を公務で周ることになるので是非ともお願いしたいと申しております。」と言いながら汗を垂らしているのが見える。
ソフィアも「特に出発の時間が決まってるわけじゃないから、折角のお誘いだし付き合ってあげれば?」と後推ししている。
「わかったわ。じゃ今から行ってくるから準備お願いね!」と呆れた顔で、メイドに連れられて部屋を出て行った。
ここはまたあの闘技場だ。第一王子ヴラディミルはすでにフルアームドでジュリアを待っていた。やはり第一王子のお願いのため必ず彼女は来ると踏んでいたようである。
「ジュリアさん、帰国前に申し訳ない。今度はいつお会いできるかもわからないので、無理やりお願いすることになってしまって。」と一応詫びを入れている。
「王子、真剣でいきますか?」とそれを気にせず聞いた。
「真剣でお手合わせできるとは、有り難き幸せ!」と言いながら、闘技場のファイティングポイントに立った。ジュリアも合わせて向かい合いお互い剣を抜いた。
2人はお互いの様子を冷静に観察しつつ間を詰めている。王子もジュリアと同じロングソードである。まずは王子が一振り浴びせたがジュリアはそれを軽く払った。身長が180cmあるぶん振りは重かったのと、意外に剣術の型をきちんと習得したスキがない構えと振りであるのに驚いた。ジュリアは、いつもと違い彼女の方から攻めにいく素振りを見せて後ろに下がったのだが、助走をつけながら跳躍し外振り中振りと勢いで大柄の王子を押して行った。後退りして上半身が後ろにそれた瞬間に脇があいたのだが、その一瞬の隙を利用してジュリアは左に猛スピードで旋回し彼女のロングソードを振り回し、王子の剣に激しく当てた途端に彼の剣が右上空に抜けて飛んで行った。そしてその時ジュリアの剣は王子の喉元一寸手前にあった。まさに真剣でそれを狙ったかの如くであった。
「素晴らしい!さすが私の剣姫!!」と叫び、1本取られたという表情ではあるが感激の表情でもあった。「あなたが、私達王族と友人でいて頂くだけでこの国は安泰です。どうぞこれからも宜しくお願いします。それとまだ未熟者ですが弟のご指導も宜しくお願い致します。」と深々と頭を下げた。これで第一王子は満足したようである。
ジュリアは意外と良いやつなんだなと思いながら戻ってみると、ソフィアはすでに準備を終えており、駐機場にはもう一台マルクのホバージェットが止まっていた。
ヒデが出てきて、「ジュリアさん、準備できています。いつでも出発できますよ。」とわざわざ知らせてくれた。マルクも出てきてよくみると2人はさらに冒険者のような出立ちとなっておりフルアームドであった。
マルクは、「冒険者ギルドに行って、スロベニアの山賊討伐のクエストをもらって来ましたよ!だからコンプリートすれば我々パーティーへの初報酬もでますよ。」と嬉しそうな表情で、若い2人は冒険に飢えているようにも見えた。「後ろから付いていきますので、これで通話しながら行きましょう!」とヒデは遠距離用トランシーバーを渡した。
帰りの操縦はソフィアの担当となり来た道を2機で引き返しているところだ。マルクのホバージェットは連合軍のものをどこかで手に入れたのだろうかイメルダのものと同機体である。マルクとしてもこの道が安全な通商路になり得るのかきちんと検証しなければならないため、ヒデと一緒にこの遠征でマップを作成するのも一つのタスクである。やはりポジョニ城からスロベニアまでは何の心配もないわかりやすい1本道であるが、地図によるとそろそろ問題のスロベニアの林に入る頃だ。その時ソフィアからトランシバーに連絡が入った。
「そろそろよ。武器を準備して警戒してね! とりあえずシールドは貼っておいてくだいね。」
道は細く林に囲まれ潜んでいる者がいても全く分からない状況なので、一行はスピードを落としつついつでも停止できるように進んでいた。昼前の明るい時間帯であるにもかかわらず、背の高い木々に日光が遮られて暗い視界となっていた。ということは夜間の通行は極めて危険ということにもなるのであろう。
2/3ぐらいの行程をクリアしたあたりで、いきなり林間からレーザー砲の攻撃があった。シールドで回避できたが、発射された場所を特定できないため一行は急停止しまずはガリオンを偵察に放った。そうガリオンの探知機で場所を特定できるのだ。しばらくすると人の喚き声が聞こえたので、どうやらガリオンが捉えたのだろう。すると前方から10機ばかりのヒューマノイドロボットがブラスターガンを撃ちながらこちらに近づいてきていた。そして後ろからはさらに10機が同じように近づいてきている。「敵襲だ!外へ出て!」とソフィアから無線が入った。咄嗟に4人は武器を持ちリアハッチから出てファイティングモードとなった。
「後ろは俺がやりますよ! ヒデ、ブラスターガンを宜しく!」と言ってマルクが飛び出してきた。ヒデがシールドを構えながらブラスターガンでロボット目掛けて応戦しているところをマルクが両槍で果敢に攻撃している。なかなか素早いいい槍捌きだ。まずはグルグル振り回しながらロボット達を混乱させてその合間から素早く突いている。そのため10機いたヒューマノイドロボットも1機づつヤリの餌食に合い回路がショートしたまま立ち尽くしているのだった。そして仕上げに、マルクは背中からソードを抜いて次々と首を刎ねていっている状況であった。
前方の10機もまずはソフィアのブラスターガンの射的になりフリーズして立っているところに、いつもの如くジュリアの斬鉄剣が振り下ろされて首が次々と飛んで行った。
ソフィアが、「マルク!すごいじゃない!!意外にやるわね!」と彼女なりに勇敢に戦ったマルクに労いの言葉をかけてあげた。
すると、全て破壊し終わったところで、マルクが、「有難うざいます!本当に楽しかったです!僕はこんな形で王国や人々に役に立てるのに幸せを感じるのです!」とまさに模範的な勇者といった印象である。その間ガリオンがレーザー砲を撃っていた賊の人間をくわえて引き摺って戻ってきていた。
「コヤツ、気絶してますね!この賊どうしますか?」とヒデがマルクに聞いた。
「衛兵に連絡して、こいつを回収にきてもらうことにするよ。城で賊仲間を聞き出して一掃する方向で考えよう。」と答えて、目立つ大木の幹に縛りつけたのだった。
そして「マルク、あなたの戦い良かったわよ!これであなたも私達の一員ね!」と剣姫ジュリアに褒められて有頂天になっていた。『剣姫に言われるなんて、なんて俺は幸せなんだろう!』という表情を浮かべている。そしてパーティーはこの先を順調に航行しスペインの砂丘からソフィア達の海上都市が見えてきた。
トランシーバーで、ヒデが「あれが、海上都市ですね!すごい!!これをソフィアさん達が2人で造ったのですか〜?」と驚き呆れているような声である。
「そうよ!すごいでしょ! でも、今は、ガルシアとイメルダという強力な助っ人もいるのよ。着いたら紹介するわね。」
砂ぼこりをあげながらこちらに猛進してきているホバージェット2機を捉えたガルシア達もゲイトウェイに出て出迎えていた。
到着してみると人が50人ぐらいに増えているのだ。彼らはその50人に囲まれて、
「ソフィアさん、ジュリアさんお帰りなさい!お世話になってます!我々イメルダさんからここの話を聞いて真っ先に入植してきました。ほんと海を見ながら生活できて最高です!!」といきなり大きな声で感謝されたのだった。
ソフィアが、「皆さん!歓迎しますよ!これからこの街を興していくのでご強力お願いしますね!それと、ここにいる方ですが、実はスロバキア王国の第二王子のマルティン王子です。先ほど通商条約を結んできました。ということは、我々はなんとここの海産物をスロバキアの農産物と畜産物に交換できるのです!!食材が増えて素晴らしいことでしょ!!」と簡単な演説をした。
ガルシアが、「ソフィア、やったな!!素晴らしい!!俺は嬉しいよ!こんな風景のところに住めて、おまけに今まで食べられなかった物が食べられるなんて!それも苦労を共にしてきた仲間と一緒だぜ!」と大きな声で感激しながら珍しく感激の涙を見せていた。
途中からではあるが、彼が中心になってこの海上都市を建築してきたわけだから感無量なのだ。すると、どこからともなく拍手が起こり1つの大きな喝采となっていったのだった。