25:海上都市計画スタート
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
このエピソードからはSeason2ー新たな出会い編ーのスタートです。
実はシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズンが終わった後に公表したいと思います。(文芸:ヒューマンドラマにて)
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
それから、クリスマスも過ぎすでに1週間ぐらいが経過していた。
ジュリアは瞑想による精神統一と剣術の稽古をしながら、ロンダにいるイメルダとガルシア、そしてモスクワにいるサーシャとアンドレイに連絡をとり、今回の地中海プロジェクトの案内をしていた。彼らの反応もとてもよくベースができた頃に遊びに行くという反応であった。
一方、ソフィアはすべての機械関係やコンピューター系の準備をしていた。特に真っ先に使う大元の工作ロボットはすでに湯沢で製作しており、それを現地に運べばその機械をハブに他のロボット群を生み出せるようになっている段取りである。
さてさて、2人はこの湯沢で準備が可能な事柄を全てコンプリートして、ソニックジェットに工作機械や外部の襲撃に備えて前回使用した着ぐるみのようなパワードスーツのラップアラウンドスーツ、そしてジュリアのホバージェットとその主人のガリオンを格納したところであった。
あの無敵のEBSは現在日本が誇る技術開発部の田辺部長が最優先で開発中である。そしてこのソニックジェットは目的地でベースができるまで仮の住まいとして日本から借りることにしたためジュリアが操縦することになった。
今回は珍しく姉妹2人での水入らずの出発である。まず離陸したら中国上空を横断し中央アジアを抜けて地中海に入るシンプルなルートである。まあ、現在の世界情勢は安定しているので、攻撃を受けることはないであろうが一応シールドをオンにして飛行している。この世界では土地には価値がなくなっているため地権などを気にする者はおらず、例えば、彼女らが『ここに街を造ろう!』と決めれば、それはそれで基本的に誰も文句を言わない世界なのである。
そこで2人がその目的地に設定したのが、本当のヒデがいる世界、つまり私達の世界のスペイン・ミハスコスタあたりとなった。ここの世界ではその海岸線は水没しているものの、まだかろうじてビーチと言えるような場所が点在している。ただ、土地も海も放射能汚染されているためそのままでは住むことができないのであった。
ミハスコスタに到着し、まず彼女たちは高気温と放射能対策としてのバトルアーマーを着用し外に出た。
「やっぱり、まだここは暑そうね!」とソフィアが言った。「まずは居住用ドームを作り、その中で生活できるようにしましょう!」と言いながら、湯沢から持ってきた装置の一つを取り出して丁度透明な風船のようなバブルを作り出している。それがどんどん膨らんでいき50m半径ぐらいの巨大な半球となってまるで透明で大きなバブルの中にいるかのような雰囲気になった。
そして、その後に未来社会でデータを失敬して製作した放射能除去装置を稼働させて、バブルの中の土・空気の除去も始めた。とりあえずソニックジェットのクリーンエネルギーエンジンの電力を発電機のように活用し、バブルの中に設置した巨大なエアコンも動かして環境を整えているのだ。これでまず第一段階が終わった。
「これで、まずは、バトルアーマーなしでもいけるわよ!」とソフィアが言い、自ら普段着に着替えている。気温は30度を上回るためヒッコリーのカバーオールにピンクのTシャツという作業着であるが可愛いカジュアルな格好に仕上がっていた。ソフィアに言われて色々な物だしとセッティングなどの力仕事をしていたジュリアもバトルアーマーがうっとおしくなってきたようで、やはりダメージデニムのボーイフレンドにカーキのティーシャツに着替えた。やはりこのツインズのファッションテイストはいつもいつも対極的である。とりあえず、この段階で明日から取りかかる海上都市建設のためのワークスペースが確保できたのだ。
次にソフィアは明日使用する工作用ロボットを組み立て始めている。カーゴスペースは限界があるためパーツの状態でもってきていたのだった。その間ジュリアは愛機ホバージェットに乗り込みソニックジェットの逆側ハッチを開けて地中海に入って行った。汚染されて荒れ果てた海岸はどこからともなく集まってきたペットボトルなどのプラスチック類で見渡す限り海一面が敷き詰められていた。彼女はそのおびただしい数のプラスチック類をホバージェットにつけたフィッシング用の網縄で地道に回収しているのだった。
それが集まった頃、ソフィアは再度パドルアーマーを着用し波打ち際に移動していた。そこで、今度は3m3ぐらいの大きさの3Dプリンターを組み立てている最中なのだ。ジュリアが集めたプラスチック素材を再利用しリサイクル製強化プラスチックを生成しガビオン構造の浮体式基礎パーツを作っていくのである。それがこの海上都市の浮体基盤のパーツとなるのだ。ジュリアも再度バトルアーマーを着用し、プラボトルをどんどん機械に流し込んでいる。そうしていると浮体パーツがどんどんと出来上がってきた。次は2人でその浮体パーツをビーチ上で地道に繋げていき、できあがっては少しずつ海面に伸ばしていっているのだった。浮体式基礎パーツの下面には、力学的に波の動力と逆方向に動く言わば振り子のような構造が内蔵されているため、ある程度の波であれば相殺されて全く地上と変わらない浮島が出来上がる予定だ。すでに早くも100m2の島ができ上がってきており、まずはその大きさの浮島をいくつも繋げて海上都市を造っていくというプランなのだ。早速一つ目ができたので先ほどと同じようなバブルドームを作った。そして、この1号島が陸地と海面を繋ぐ足場となったのだった。
汗を流しながらソフィアが、「順調ね!でもそろそろ疲れてきたから、このあとはゆっくりしましょうか?」と言いながら、ジュリアを見て状態を確認している。ジュリアもそれなりに剣技では見ることがないほど汗だくで疲れているようである。
今日の成果を眺めてみると、まずは、居住空間のソニックジェットに繋がるようにバブルがありそこには作業空間がある。また、そこからシャボン玉を繋げたようなイメージでバブルが繋がっている先が、先ほどできた浮体ベースの浮島であった。
ジュリアが、「いやー疲れたわ・・・まあ、初日にこれだけできればいいんじゃないの?」と言いながら座り込んだ。ソフィアが「明日は、火星で居住空間を造る時に使う未来のマシーンかあるの。それでビーチの砂をケイ素と結合させてできる素材で陸地の建物を作っていくわ。だから、今日はこの辺にしておきましょう。」と事前に明日の予定を軽く説明しておいた。
2人は流石に疲れ果てた様子でソニックジェットに入って行った。そしてソフィアは機内の2階部分にあるダイニングエリアの長テーブルに海上都市の完成イメージ図を広げた。ジュリアもコーヒーを片手にそれを一緒に念入りに見ている。
「結構、大きな海上都市がイメージなのね?1km× 1Kmぐらいのエリアになるの?」とジュリアが聞くと、
「まあ、あくまでもイメージで造ってみないと詳しくはわからないんだけどね、また、どのぐらいの人が集まるか?でも決まってくるわね。簡単に説明すると。まずは1kmの直径の大きさの浮き輪のような外環施設を造るの。今日造った浮島もある程度の波だったら吸収するんだけど、地中海は外洋ほどの物凄い波は来ないとは思うけど、大波やうねりには対応できないからそのドーナッツ状の外環でそれを防ぐの。そして、そのドーナッツの中に浮島をいくつも浮かべて繋げていくわけ。」
ジュリアが、「なるほど〜 もちろん緑の農園とかもあるんでしょ?食料を作る施設とかも?」と聞くと、
「もちろんよ! 海上にもガラス張りのグリーン施設を作るけど、軌道に乗ってきたら海中にも日光を取り入れて菜園を造るつもりなの。そうすると酪農もできるようになるからね。そうそう、この浮体式基礎パーツは海中に入っているから、その底面で海産物の養殖もできるのよ!まあジュリアは食べられないと思うけどね・・・」と言って笑った。こういった説明をしているソフィアはとても楽しそうに映っている。
2人はそのイメージマップを見ながら、料理が苦手な姉妹は湯沢から積んできていた加熱するだけのディッシュプレートを夕食として食べている。
ソフィアがさらに続けて「明日造る予定の海岸の建物は、宿泊場所もあるけど、陸地への足がかりと海上都市入り口の警備、そして船舶類の発着場所としてのハーバー機能があるの。それができたら、私たちの部屋をそこに作りましょうね!」とジュリアが好きそうな話に持って行った。
「これで、やっとあなたが好きな念願の海を眺めながらの生活ができるのかしら?」と言ったのだがあまり反応がない。その理由を推察して、「ジュリア、あなた、この前会ったヒデのことで頭がいっぱいなんじゃないの?」とちょっと意地悪な姉のようにニヤけながら問いただした。
「うーん、なんかね、頭がザワザワしているの。」とジュリアは本当に困った表情をしている。「とりあえず。そのバーバー施設を造れば、人が住めるようになるのよね?」
ソフィアが、「まあ、そうね。人数にもよるけど。」と何を言いだすのだろうと思いながら答えた。
「じゃ、イメルダとガルシアにこの件を話したら、ノリノリで協力するって言ってたから、連絡してこっちに来てもらうわ。」とジュリアが。「いいわよね?」
「えっ ええ、もちろん、大歓迎よ! 1人より2人、2人より4人の方ができることが広がるから。」と。「それと、山賊と海賊の襲撃の可能性もあるから守りを固めないとね!」
ジュリアが、「今ある私たちとガリオンのパワードスーツでもある程度は行けると思うけど、やっぱり海上都市の鉄壁の守りをするなら開発中のEBSが欲しいわね。あなたのスナイパー装備と私のフライングエンジェルで2体あればとりあえず守りは完璧だと思うわ。」
ソフィアが、「折角建築したのに、乗っ取られたとか?壊されたとかになると目も当てないわよね!わかったわ、田辺さんにまた連絡して急かしてみるわね!」と言った。
「まあ、仕事の話はここまでにして・・・ねえ、あなた、ヒデと会いたいんじゃない?」とソフィアがジュリアの真意を知りたくまた尋ねてみると、
「まあ、会いたくないと言えば嘘になるけど、私たちはここで海上都市を造って未来に繋げていくというミッションをやることに決めたんだから・・・とにかくある程度の形になるまでは、それはお預けだと思っているわ。私ももう子供じゃないから。」と、まるで姉に強がりを言っている妹のような感じである。
ソフィアが、「まあ、この海上都市のシナリオには、商人たちとの交流も重要だから、ベースができた時点でヒデ達を呼んでみましょうよ!」と元気づけてみると、
ジュリアは、「そうね。しかし、シンガポール、凄かったわよ!ここもあんな感じになるといいわよね。海に浮かぶ不夜城!ソフィアだったら、そんな都市のモナーク(女王)に相応しいわ!! なんか、もう目に浮かぶわね!」と姉を揶揄いながらも少し目に輝きが戻ってきていた。
「そう! だから、その浮き輪施設の真ん中にはシンガポールみたいな、簡単にいうと巨大なブイみたいな建物を造って海面から出ている上階はコマーシャルエリア、そして海中はホテルの短期のレジデンシャルエリアにしましょうよ!絶対受けるわよ! このヨーロッパ方面にはないものだから。」と少し乗り気になってきているようだ。
ソフィアも、「そうね、ツーリスト達の短期滞在型の人達はそういった施設で受け入れる方が管理しやすいから犯罪が少なくなっていいわね。それってゴージャスな環境でしょ?そこでお金を吸い取るのよね? わかるわかる。そして、住むための住居としては、その浮き輪の中に造って増殖していくって感じかな?」とイメージを共有しているのだった。
ジュリアも、「私もイメージが見えてきたわ! なんかやる気が出てきたわよ!ソフィア!」とまた元気な時の彼女に復活しつつあった。