24:再会!?
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
このエピソードからはSeason2ー新たな出会い編ーのスタートです。
実はシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズンが終わった後に公表したいと思います。(文芸:ヒューマンドラマにて)
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
あの時と同じようにすでに駐機地にはジャイロが2機停まっていた。ジュリアは、『あの時メイルアンドロイドが潜伏していたこの建物内ってどんな感じだったんだろう?』と純粋に興味本位で建物内に入ってみたくなったのだった。ジャイロを降りて建物の正面のオートドアまで歩いてきた。あれからやはり修復されてすっかり元通りになっているようだ。
室内に入ってみると天窓があるが外よりは暗い空間になっており、要所要所にスポットライトがあたり、他は天窓から入る光を利用した間接照明により明るさを賄っている省エネ照明である。『この中はなんだろう?』とゆっくりと歩いていたら、いきなり、「こんにちは、何かお探しですか?」という男性の声が聞こえて一瞬驚いた。聞き覚えがあるような声だったからだ。室内のその声がする方向を見てみると中肉中背の若い男性が立ってこちらを見ているのに気が付いた。
ちょうどスポットライトから外れており顔の表情がわからないのであるが、この施設の制服を着ているのでスタッフのようである。「ああ、ごめんなさい。人がいるとは思わなくて・・・この前ここである有害物体が破壊されたので、現場がどうなっているか確認しにきてみたのです。」と、当たり障りがないような理由で答えた。「本庁の方ですか? それは、もしかしたらアンドロイドとかいうものの襲撃の話ですかね?」と踏み込んで聞いてきているので「ええ、そうです。私が対処したものなので気になっていて…」と答えた。「えっ あなたがですか? 驚きです!」と言ってジュリアに近づいてきた。
その男性はスポットライトが当たる下に歩いて来ており顔が確認できるようになっていた。ジュリアが、「あなたはここの施設の方ですか?」と聞いた瞬間一瞬言葉が詰まった。「ヒデ!あなた ヒデなの?」とジュリアの顔が驚きのあまり凍っていた。
「えっ なんで僕の名前を知っているのですか?」と不思議に思ったのと同時に彼女の驚いた表情を見て、「どこかでお会いしたのでしょうか?」と首を傾げている。
ジュリアは、『もちろんよ!あなたと付き合ってるじゃない!』と言いたかったのは山々だが、一瞬冷静になり考えてみると、『そうだ!ここはパラレルワールドだったのだ。だから同じ人間がいてもおかしくないのである。そうか、彼はここの世界のヒデなのだ。だから、もちろん私のことは知らないのだ。』と瞬時の理解ができたのだった。
「すいません!知り合いに似ていたので」と言い訳をして、突き詰めるとなぜとなるため、その話から逸らそうとして、「あなたは、ここのアグリカルチャーエリアの研究者ですか?」と聞いてみた。
すると、ヒデが、「いえ、私は商人でインターナショナル・マーチャント・インスティチュートI M Iのメンバーなのですが、ここ湯沢の品種改良されたイネが必要で物色していたのです。あなたは?」と素性を説明し聞いてきた。
「商人の方なのですね? 私はこの日本の外交施設の者なのです。あなたは日本の方ですか?」と軽く自己紹介したのだが、ジュリアの心臓はバタバタと騒いでおり、戦いでは全くあり得ないような珍しく動揺した様子であった。
「はい、僕は日本出身なのですが、今はスロバキア王国のグスタフ王の下でお抱え商人をしています。今回はその王の依頼で来ているのです。」と彼の役割を説明しながら、ヒデの目線はジュリアに釘付けであった。
「あなたは、服装からすると軍人のようですが、もの凄くお綺麗ですね!なぜあなたのような方が戦う生き方をされているのですか?」と疑問に思ったことを唐突に聞き、また続けざまに、「ここでお会いしたのは何かの縁だと思いますので、湯沢市内に戻ってまたお会いできたら食事でもしながらゆっくりと話をしたいものですね。いかがですか?」とジュリアに積極的にジャブを入れてきた。今はあまり時間はないといった様子であった。彼自身も理由はわからないのであるが、なぜかどこかで会ったような初対面とは思えない懐かしい感覚があったのだろう。
ジュリアは、少し驚きながら「ええ、いいですわ!では、ガバメントビルの隣のタワーマンションの24階の2425室に住んでいます。よかったら是非いらしてください。色々と旅のお話を聞かせてもらいたいですね。」と熱い思いが込み上げてきながら嬉しさで表情が崩れるのを必死に抑えながらポーカーフェイスを装って答えた。
という話の途中で、研究室の内ドアが開いて「ヒデさん、見つかりましたよ!」と言いながら、ここの研究員らしき男性が出てきた。ヒデは、「では、行かなけえばならないので、明日昼時にお邪魔したいとお思いますが、ご都合はいかがですか?」と別れ際に聞いた。
「明日の昼ですね?大丈夫ですよ。では、お待ちしていますね。」と言って2人は別れたのだった。
ジュリアは、ジャイロを市内に向けて操縦しているのだが、心ここにあらずの状態で興奮がおさまらない様子である。『私、こんなにもヒデを愛していたんだ!』と今更ながら驚いている自分がいるのだ。また同時に、ヒデには当分会えないと思っていたところに電撃が走って曇っていた頭が冴え渡っているのに気が付いたのだった。そして、帰宅してすぐにラボに直行しソフィアにもことの始終を話した。
「えっ、本当に? まあ、あり得るわね!ここはパラレルワールドなんだから、同じ人間がいても不思議じゃないわよね。私も会ってみたいわ!明日、お邪魔じゃなければ私も一緒にいてもいいかな?」とソフィアも反応した。
「いいわよ。今回は私だけ独り占めするのも悪いと思うから。とりあえず私達の仲間に引き入れましょうよ。今度の地中海のプランにも入ってもらいましょう!商人だから、何かと役に立つと思うわ。」といつになく積極的であった。でもジュリアの内心は、『私が知っているヒデとこの新しいヒデをどうやって区別したらいいんだろうか?』という一種の混乱状態でもあったのだ。
その晩はよく眠れずに朝を迎えたジュリアは久々におめかしをしている。稀に見るドレス姿であった。とは言ってもランチなので、ミディアムグレーのフラノでできたAラインワンピースドレスに小ぶりなパフスリーブが付いたデザインのものである。彼女の銀髪にとても似合っている。今日は珍しく綺麗にまとめたショートボブにブラックのカチューシャをしていた。
約束の時間にインターフォンが鳴ってヒデが来たようだ。ドアを開けるとヒデがブラックスーツに身を包んで赤い花束を持ってそこに立っていた。
ジュリア的にはもうたまらなくカッコよくていきなり心拍数が上がりドキドキとなってしまった。だが、それを押し殺して、「あら、こんにちは!折角だから上階のスカイラウンジを予約したの。そこでランチをとりましょう!」と言った。
ヒデは、「こんにちは!今日はクリスマスイブなので、是非これを部屋に飾ってください。グリーンハウスで栽培しているので冬でも花が咲くのです。」と言って素晴らしいバラの花束を渡した。「まあ。ありがとう!とても綺麗ね!」と言いながら表情が満面の笑みに変わっていた。
2人はスカイラウンジに入っていきリザーブしてある席に案内されて座った。ヒデがメニューを見ていると、ジュリアと瓜二つの女性が近づいて来たのでヒデは驚きの表情に変わっていた。視線はソフィアに釘付けであった。そして目の前のジュリアと比べているようだ。そしてソフィアが彼らのテーブルに近づき、「初めまして、ジュリアとはツインズのソフィアです。」と冷静に自己紹介をした。
ヒデは、「いやー驚きました! ジュリアさんとそっくりな方が近づいてきたので、一瞬頭がおかしくなったのかと思いました。双子なのですね。それで納得しました。」と笑顔になっていた。
ソフィアもやはり珍しくドレス姿であり、ブロンドの髪をいつも通りポニーテールでまとめてホワイトのファンシーツイードのタンクワンピースであった。そしてジュリアの隣りに座ったのだった。
ヒデは2人揃った状態をマジマジと眺めて、『本当に瓜二つだな』と思い驚きの表情を隠せない状態で動揺していた。『しかし、2人とも超美人で、全く僕の好みドンズバだ!どちらがいいかなど見た目では選べない贅沢さがあるな。』と内心では思っている。そしてやっと口を開いた。
「初めまして、ヒデです。いや、ほんと超美人姉妹を前に緊張してしまいまして
・・・」と言いながら頭を掻いている。
ソフィアが、「ジュリアからは、IMIに所属していると聞きましたが、どんな商材を扱っているのですか?」と唐突に商売の話を始めたのであった。そのほうが初対面のヒデにとっては話がしやすいのでは?と踏んだからなのだ。
「僕は、スロバキア王国のグスタフ王のお抱え商人の1人でして、王家から要望があるものを中心に世界中で調達しています。」とまずは簡潔に答えた。
すると、ジュリアが、「グスタフ王は知っているわ。私達はユーラシア帝国崩壊に協力したので、その時に王とは盟友になっているの。話はロシア人貴族のサーシャを通してだから、直接会ってはいないんだけどね。」と言った。
「そうなんですね。僕はしがない商人なので、ただただ王に言われる通りに動きます。」
ソフィアが、「実は私たちには新しいプロジェクトがあるのです。地中海のかつてのミハスコスタあたりに海上都市を作ろうと準備中なのです。地球上のパワーバランスを保つのがそもそもの狙いなんですが、私達は以前のように人類が人間らしく幸せに暮らせて自然と同居した環境を造りたいと考えています。それを商人のあなたに色々とサポートしていただけると助かるんですが・・・」と今後の意向を正直に話した。
ヒデが、「ヘー そんな素晴らしい計画があるのですね? もちろんです!是非お手伝いさせていただければ。楽しそうですしね!」と期待を膨らんで表情も嬉しそうであった。
と言った商売の会話が続きながら、2人はヒデとの会話は懐かしい気持ちが蘇り、また久々に楽しく食事をすることができた。この世界でのヒデとの遭遇でジュリアも昨日とは違い表情も明るく変わっていた。
ヒデと別れた後で、ソフィアが、「今回はイコールフッティングね!ジュリア? 今回は私もチャンスをもらってもいいのかしら?やっぱりこの世界のヒデもカワイイわね? でもなんなんでしょうね? 私達をこんなに惹きつける彼の魅力って? 見た目がいい男ってヒデには悪いけど沢山いるわけでしょ?それなのにね。」とソフィアも自分の気持ちを不思議がっているが、やはりヒデが気に入ったようである。
ジュリアが、「わかったわ。この前は私が不可抗力で奪ってしまった結果になったから、今回は正々堂々とハンデーなしで行きましょう!たとえソフィアが勝ち取ったとしても文句は言わないことにするわ。」と思わず宣言してしまった。
ソフィアが、「言ったわね!わかったわ。まあ、でも私達姉妹の関係の方が一番大切だから、まあ、ほどほどにやりましょうね!」と言いながらニコニコと笑っていた。
そして、数日してヒデはここでの仕事を終えて、一旦スロバキア王国に戻ることになったので、出発前に2人に挨拶に来たのだった。
「スロバキアに来た時には是非お立ち寄りください!中世的な世界で面白いところですよ。僕は大好きなんです。是非今度はおもてなしさせてもらいますので!」と言って握手をして別れた。それからのジュリアは単純な話ではあるが明るい表情に変わっており、それまでの人生終わり的な暗い雰囲気は全く消え失せていた。やはり剣鬼にも異性の存在は非常に重要なのである。
ヒデ?とジュリアの再会はいかに??