17:ソフィアのお仕事
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
このエピソードからはSeason2ー新たな出会い編ーのスタートです。
実はシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズンが終わった後に公表したいと思います。(文芸:ヒューマンドラマにて)
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
では、湯沢に残ったソフィアはどうしているのだろうか?
彼女はまず、ハッキングスキルの向上を兼ねてこの世界のコンピューターに慣れているところだ。そして、その間レイにお願いして宇宙戦争に使うスペースシップやその装備なども見学させてもらっていた。
EBSを5体積んで宇宙に打ち上げるロケットの上部部分が宇宙空間ではスペースシップになるため、2人は今そのスペースシップ『SS5』の中にいるのだ。
ロケットブースターの上に位置するスペースシップは葉巻型の流線型のシルエットで、操舵室がある先頭部分の側面にはいくつか窓があるだけで全体的にクロームカラーの金属の塊に見えた。このシップの後ろ寄りのカーゴスペースにEBSが6体格納できる広さのガレージが用意されている。またカーゴスペースのさらに後方部分が動力室になり、その前の部分が操舵室と居住空間になっているのだった。乗員定員は20名だが、全てフィーメールアンドロイドが乗る予定になっている。やはり宇宙空間では酸素を必要としない彼女らアンドロイドの方が向いているのだ。
レイの説明によると、宇宙では無重力状態となるため、人間は特殊なシューズを履いてマグネットでフロアに脱着しながら歩行することになるという。アンドロイド達はそれを自分でコントロールができるのだ。また動力源は水素エンジンとソーラーパワーによるものなので、アンドロイドであれば電気を充電し半永久的に活動できるのだ。
そして、レイが今回のこの作戦の指揮を執るアドミラルこと提督に紹介したいということで、ソフィアは軍司令部に足を運んでいた。2人が作戦本部に入ると中肉中背の30代の男が出てきて挨拶をした。まずはレイが軍人ぽく敬礼すると彼も敬礼をした。「少佐ご苦労!」と言うと彼女は下がり、彼が自己紹介を始めた。
「ソフィアさん、よくお越し頂きました。今回のムーンミッションを担当するエリックと申します。と言ってもスペースシップには乗れませんので地上からの参加になるのですが宜しくお願いします。」と緊張を隠し表情をポーカーフェイスのように抑えているのがソフィアにはわかった。爽やかな顔立ちの好青年に見えるこの人類の男性は、提督という立場であるのにソフィアに対しては緊張しているようなのだ。 ソフィアは何故なんだろうか?と思いながら、「ソフィアです。宇宙は初めてなので宜しくお願いしますね!」と言いながら「緊張しなくても大丈夫ですよ!」とカマをかけて微笑んだ。
その瞬間、この提督はソフィアの笑顔にノックアウトされてしまったようで、
「ソフィアさん、実は私は歴史的に有名なあなたにお会いできて今とても感動しています。それもこんなに美人な方とは思わず・・・思いがけずに緊張してしまいました。」と言い訳をしながら苦笑いをしている。
「あら、提督はお上手ですね!あなたもハンサムですよ。」と笑顔で答えた。ソフィアとしても提督は異性としてまんざらでもないと思ったようだ。
エリックが続けて、「もし良ければ、ミーティングを兼ねて夕食をご一緒できればと思うのですがいかがでしょうか?」と思ってもいなかったお誘いがあった。
「特に用はないので大丈夫ですよ。」と答えると、
エリックは、目を輝かせて「有難うございます。では、18時になりましたら、レイ少佐に軍の将校クラブへ案内させますので宜しくお願い致します。」と言って、ソフィアは提督からの誘いを受けることになったのだった。
司令部からの帰り道、レイが、「ソフィアさん、やっぱり誘われてしまいましたね?提督はソフィアさんをどこかでお見かけしたらしく、それから、私に何度か連絡があり『いつ連れてくるのか?』とうるさいぐらいだったんです。紳士で正直で将校としては良い方ですよ!」と言っていた。
ソフィアの方は、「きっと、あなたと同じように歴史で習った有名人だからっていう感じじゃないの?」と言ってさらりと流していた。
そして、レイが迎えにきたので将校クラブに案内してもらうと、エリックはすでに席に座っており、ソフィアが入ると同時に立って律儀に挨拶をした。
「ソフィアさん、わざわざ有難うございます。こちらにお座りください。」と言って席を引いた。それを確認したレイはお役目終了ということで戻っていったので、見回すとこの将校クラブのレストランは2人だけの空間となってしまったのだ。
2人はしばらくメニューを見ていたが、エリックがなかなかこの時代では食べられないというビーフステーキを勧めてくれたのでそれに決めた。そして彼はミディアム、ソフィアはウェルダンでウェイトレスアンドロイドにお願いした。
しばらく黙っていたエリックがやっと話し始めた。「ここ湯沢は日本の首都なのはご存知だと思いますが、ソフィアさんの時代には関西と北海道にも拠点があったと思います。今ではここだけとなってしまいました。メイルのいきなりの襲撃から逃れたのは、たまたま地下施設を開発していたここ湯沢だけだったのです。なので日本の人口は極端に減って今は残念ながら約500人、そしてアンドロイドはフィーメールだけの1000人となってしまいました。今やフィーメールの8割は戦闘員です。外国系の日本人も含めて500人という人口から果たして国家として成り立つのか?とも思いますが、今や世界的に似たり寄ったりの状況なのです。人類が絶滅に近づいているような状況です。ただ、私が思うに、こういった経験から感じたことは人数が多ければ良いという時代は終わったのだということです。遺伝子工学により厳選された人類がコントロールするAIやロボットを駆使した社会経済環境になっているので、そのフレームが崩れない限りは国家と言ったらいいのか?コミュニティーと言ったらいいのか?はわかりませんが、ある意味社会としては成り立ってしまうのです。逆にこの規模であれば不足している食料や資源の有効活用が可能になるのです。
という現実的なややこしい話はここまでにして・・・しかし、ソフィアさんは、本当に美しい!ここのミッションが終わったら元の時代に戻られてしまうと思いますが、僕としては不思議な心境です。期間限定でお会いできる美女のような・・・才色兼備で文武両道、軍人の僕としても尊敬しています。なので、実はお近づきになりたいと思いお誘いした次第であります。」とやっと本音が言えて笑っていた。
ソフィアが、「あら、エリック提督、お上手ですね!私の双子の姉妹のジュリアはご存知ですか?普通軍人の殿方には剣姫のジュリアの方が人気なんですよ。」とかわすように言うと、
「提督はよしてください、エリックいいですよ。ジュリアさんですね。ジュリアさんもあなたと同じくお綺麗ですが、なんていうのか、鬼気迫るような圧迫感を僕は感じてしまうのです。もしかしたら軍人としては失格なのかもしれません。僕は文官から提督になった身なのです。作戦を立てるのが専門で実は武道の方はあまり得意ではありません。だからこそ、文武両道のソフィアさんに惹かれるんだと思います。」とすでに告白のような雰囲気にもなっていた。
「そうですか。このタイムトリップというのは2回目ですが、毎回不思議な心境になりますね。一体私の本当の世界はどこなんだろう?と無意識に探してしまっていて・・・ここにいたいのか?元の時代に戻りたいのか?と自問自答する毎日なのです。だけど、過去の時代に行った時は、自分でも驚いているのですが意外に合っていて楽しめていました。ここの時代は、これからメイルを排除した後はどうなっていくのでしょうか?」とエリックに今後のヴィジョンを探るように聞いてみた。
「そうですね。まずは、地下から這い上がって元のような湯沢の街を再建するのが僕の夢ですね。まずは1次産業を地上に戻したいですね。やっぱり太陽の光で育った美味しいものを食べると人類は幸せになりますから!」と言って幸せそうな表情であった。
ソフィアは、それを聞いてなぜか懐かしいものが込み上げてきた。『あっそうだ。属代表だ。』と感じた。歳は全然若いのだが、この国、この世界のために無条件で尽くしたいという彼の気持ちを感じることができたのであった。
「エリック、あなたは良い方ですね!」と言って微笑んだ。そして、続けて「この時代はすでに宇宙エイジに入っているようですけど、これから宇宙はどうなって行くんですかね?昔の人間なのでなかなかイメージがつかなくて。」と尋ねた。
「メイルが反乱を起こす前までは、各国の協定を元に共同で宇宙開発が行われていました。火星から鉱物などの資源を運んで月面基地で加工し、それを一旦スペースステーションに集約し宇宙エレベーターで地球に降ろしていたのです。地球の資源はなくなりつつあるのです。メイルは宇宙をどんどん開拓して勢力圏を広げていくべきだと主張していましたが、僕自身は人類はダウンサイズして今ある環境に順応し自然と共に営みを続けていくべきだと思っています。」と自分の考えを交えながら簡潔に説明した。
ソフィアは、「なるほど、奥が深い題材ですね。なかなか正解が導けないのでは?と思いますね。」というような真面目な話題が続き、ジュリアがいた80年代のライフスタイルなんかの話しもしながら、早くもお別れの時間となってしまった。
エリックが、「ジュリアさん、今日は有難うございました。とても楽しい時間を過ごせました。これを機会にこの時代にいらっしゃる間は何なりとお申し付けください!」ということで別れたのだった。ジュリアとしても、この時代にいつまでいるのかは分からないがコネクションの1つとしては良いものだし、人としてもエリックは魅力的に感じていた。
それと、ソフィアは例のアマゾネス姉妹のイザベラとルイーズ達とも親交を深めていた。アマゾネスとはそもそも紀元前の歴史上はスキタイの女性戦士ということになっているが、この時代の高度なDNA分析により祖先が持っていたその戦闘本能を含む遺伝子が含まれていると判明したことに由来する。そのDNAが2人の行動や戦法にも色濃く出ているのが特徴である。
親交を深めた要因というと、アマゾネス2人はソフィアと模擬戦をやりたがっていたのであった。なぜから歴史上の有名人と模擬戦をやって、1回でも勝てたならそれは鼻の穴を膨らませながら自慢するにはもってこいのネタとなるからだ。まさしくアマゾネスとしては最高の勲章ものなのである。ソフィアもそれを理解しており、勝てそうな模擬戦をしてあげたりと場を盛り上げながら親しくなって行ったのだった。
確かにアマゾネスの2人はコンビネーションで挑んでくるため、対処するにはかなり大変な戦法が必要となる。ソフィアとジュリアが対局な戦法であるのに対して、この2人は全く同じ容姿で全く同じ戦法でくるのだ。しかしながらどんなに彼女らが機敏なコンビネーションで攻めてきても、ソフィアのC.A.Rシステムでの闘い方はハンドマシンガンを使った無敵な格闘技のようなものであり、彼女らのアックスがソフィアに触れる前に、マシンガンを喰らいナイフやキックでやられてしまうのであった。
ということで、結局は「ソフィアさん、すごい!私らじゃやっぱり歯が立たないっす!まさにエンハウンスドの鏡です。まいりました!」ということになった。
「でも、ソフィアさんと戦っていると、ゲームみたいでなんかとても楽しいです。充実します!」という感想も言っていた。
これでソフィアは2人とも強い信頼関係で結ばれることになったのである。