15:南米レジスタンス
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
このエピソードからはSeason2ー新たな出会い編ーのスタートです。
実はシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズンが終わった後に公表したいと思います。(文芸:ヒューマンドラマにて)
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
「この南米のレジスタンス状況をヒアリングしたいんだけど、知っている情報は全て共有しもらいたいの。」と、まず、ジュリアが言った。
「わかった。レジスタンスはそれほど残っていない状況だ。今確認できるのは、アマゾンに1つとペルーの高原に1つぐらいかな。あとは、そもそものギャングに殺されたり、飢えや病気で死んでいった集落がほとんどだ。ここが一番規模がデカくて約300人、だからレジスタンス3つ合わせても500ぐらいじゃないかな。ちなみにリーダーとは連絡が取れるぜ。」「あっ、そうそう、アマゾンの連中は特殊だぞ。」とサントスがニヤケながら言った。
「わかった。有難う。その特殊とは?」と予想がつかないという表情で聞いた。
「そうだな、驚かないで欲しいんだが、ここブラジルではかつての政府が高温化した地表に住める人間の品種改良として、オジロスナギツネのDNAを配合して研究を進めていたんだ。そのキツネ知っているかい?砂漠の70度の環境で地下に巣を作り生活しているんだ。聴覚が飛び抜けてて、耳が大きく尖っているかわいいキツネだよ。 で、その中で数体がその遺伝子配合に成功してなー 男女だったから、子孫が増えていって1つのコロニーができ上ったんだ。それがアマゾンだよ。」と説明してくれた。
「それはすごい話だ!今まで聞いたことがないな。そこに調査に行ってみたいがリーダーを紹介してもらえるかな?それと、サントス、アトランティスって聞いたことがあるか??」と探りを入れてみた。
サントスが、「わかった、そこのリーダーはメスだぜ。OK、OK!連絡するよ。場所を教えるから行ってやってくれ! アトランティス?? 聞いたことがないな・・・」
「わかった、有難う!我々はあまり時間がないから、もっとここに留まりたいとは思うんだが、次に行くよ。日本から武器類が届くと思うから受け取って、もしアンドロイドが来ても対応できるように体制を整えておいて欲しい。もし対応が厳しそうだったら、我々が駆けつけてあげるよ。君にはここの人類社会を死守して欲しいんだ。頼んだよ!! サントス、会えて良かった!」とジュリアは最後まで男性口調を通して言った。サントスも「俺はこんな綺麗な剣鬼は初めて見たぜ!また会おう!無事でいてくれよ!」と言って別れた。
2人はジャイロに乗ってアマゾンへ向かっている。
サンパウロからは北の方角にはなるが、南半球のため夏と言うこともあるのと北に行けば行くほど赤道に近づくためさらに暑くなってきていた。既に外気は軽く50度以上になっている。
ジャングルの中にツリーハウスのような住居を作り集落を形成しているという話をサントスからは聞いているが、なかなかそのようなものは上空からは見えてこない。本当に彼らに会えるのだろうか?と不安な心境にもなってきていた。取り敢えずサントスから渡された座標地点に到着したのだがやはり見えてこないのだ。
ジュリアが、「このあたりらしいんだけど・・・もう暗くなるから、河畔に降りて今夜はキャンプしましょう。」と言って、マナウス付近のアマゾン川河畔にある砂地に着陸した。もの凄い熱帯林に覆われたジャングルで、まさしく猛獣達の楽園という雰囲気であった。シノが、「この川にはピラニアがいるので危ないですよ! 学校で習いましたから。」と言って、彼女らしく控えめに忠告している。
2人はジャイロの外に出てみたのだが、蚊やブヨなどに刺されるのと厄介な爬虫類も多く外でのキャンプを諦めることにした。それに夜になっても湿度が高いせいかまだまだ暑く快適には過ごせない環境でもあったのだ。2人は諦めて中に入り念のために敵襲に遭わないよう機体をバニッシュモードにした。
シノが、「ここの人達って、いわゆる獣人みたいなものなんですよね?」と聞いた。
ジュリアが、「あの話だとそういうことになるわね。アニメみたいに耳が動物の耳なのかしらね?」と言って笑った。「しかし、この環境でスーツなしで生活できるのって凄いわね! まさに環境に適応し進化した人類の進化系ということも言えるかも!? 興味あるわ。」
シノが、「全く想像がつきません。一体どんな・・・」と言いかけると、ガラスシールド越しに灯りを持った人間のようなシルエットがジャングルの中に見えてきた。
「ジュリアさん、あれ、見えますか?? 獣人でしょうか?」と言った。
「向かうからは見えないでしょうから、少し様子を見ましょう。」
すると、その灯りはどんどんこちらに近づいてきており、やはり人間のような輪郭が浮かび上がってきたのだった。目視で確認できる距離になると、やはり人間の形であり男性のように見える。そして、こちらに向かって何やら叫んでいるようであった。このジャイロの通訳機能を使い、彼が言っていることを聞いてみたところ、「サントスからの紹介の人達ですか?」という意味のようであり、なかなか来ないから迎えにきたという内容であった。特に危険な反応はないため、バニッシュモードを解除し、2人とも外に降りた。
「我々が、その紹介された者だ。」と通訳機能を通して告げると、男は近くに寄ってきた。我々は耳がいいからこの辺りだとわかって来てみた。シャーマンのマヤに言われて迎えに来たということらしい。2人はガリオンを残し、再びバニッシュモードに戻して、念のためにフルアームドでその男についていく事にした。
男の後についてジャングルの獣道を進んで行くと、空からは見えなかったのだが樹齢100年というような幾つかの大木を支柱にしたツリーハウスの集合体の立派な村落が見えてきたのだった。なぜか辺りに靄がかかっているのでカモフラージュされていたのかもしれない。そしてその靄の中に朧げな光が見えている。近づいて行くと、その大木の間をかなり高い位置で吊り橋が繋いでいるのが確認できた。
3人が吊り橋の端に着いた時に、上から声がして木の板とロープでできたリフトのようなものが降りてきた。乗ってくれと言っているので3人が乗ると上に上がっていったのだった。上にはもう1人男性がおり、どうやら今度はその男が引き継ぎジュリアとシノをシャーマンに会わせるようである。そして立派な吊り橋の回廊を移動して大きな屋敷のようなツリーハウスに着いた。『ここだけ住居の様式が違うな。教会のようなものか?』とジュリアが思った。中に入ると、無数の赤いキャンドルが辺り一面を照らしている部屋の中央に祭壇のようなものがあった。その中心に背の高い細身の女性が森の妖精のような衣装を纏って立っている。それは驚くほど幻想的な世界であった。
「あなた方がジュリアさんとシノさんですか? 私がこの村の長をしていますマヤと申します、サントスさんより聞いていますよ。ようこそいらっしゃいました。」と言って笑顔で歓迎しているようである。
ジュリアが、「マヤさん、ジュリアです。こちらがシノです。初めまして。」と返した。
「サンパウロのサントスとも友好条約を結んできたのですが、よければ私たちがここに来た目的をお話ししたいと思います。よろしいでしょうか?」と、ここではいつものジュリアの口調で尋ねている。
マヤが、「はい、サントスさんからは既に色々と聞いています。あのヴァンパイヤ達をおふたりでやっつけたとか!一体何者なのか?と思いましたよ。そしたら現れたのは綺麗な女性おふたりじゃないですか。もの凄く驚きましたよ。要するに、あなた方がここに来た目的というのは、あなた方が対峙しているアンドロイドとかいう者達に対して防御線を張れという事ですよね?」と簡潔に表現した。
ジュリアが、「そうなんです。理解が早くて助かります。ちょっとお聞きしたいのですが私たちが上空からアプローチしたときにはここの存在が見えませんでした。それは何か特別な仕掛けでもあるのでしょうか?」とマヤに聞いた。
マヤが、「実はそうなんですが、そもそもはムシや害獣を寄せ付けない煙を村中で焚いているのです。それがこの街のカモフラにも役に立っているようなのです。」
ジュリアが、「なるほど。そういう事なんですね。それと、単刀直入にお聞きしたいのですが、あなた方の戦闘力はいかがなものなのでしょうか?そもそも敵とは戦いますか?」と少し不思議な質問を投げかけた。
マヤが、「戦闘力ですか?普段は木の上で生活していますが、何かあれば、地下に避難施設があるのでそこに避難します。今まではそこまで追い込まれることはありませんでしたが。」と答えた。
ジュリアが、「やっぱり! そういうことだと思いました。では、守りに徹した方が良さそうですね。ここに2、3日宿泊させてもらえますかね?それで何が必要なのか考えてみます。もしかしたら、何もいらない可能性もありますが。」と言って笑った。
マヤが、「そうぞどうぞ、ここにはなかなかお客様が見えないので嬉しい限りです。客室を用意しますので、是非ここの生活を楽しんでいってください。」ということになったので、ジュリアとシノは感謝の握手をしようと思いシャーマンの方に歩みよった。暗闇の中で蝋燭に照らされたマヤの顔がはっきりと見えてきたときに2人は驚いたのだった。顔自体は普通の人間と変わりはないのだが、耳が大きく尖っていてまるでおとぎ話のエルフそのものの耳なのだ。
2人は、ドキッとした表情に変わったため、マヤが気づいたようで、
「気が付きましたか? 私たちの部族は耳が大きくて聴覚や感覚が通常の人類より発達しているのです。でも見方によっては可愛いでしょ?」とイタズラっぽく言った。
彼女はエルフ顔ではあるものの、細身で長身でもあり、細面の美人の外見である。年齢は人間的に表現すると30過ぎぐらいであろうか?他の者が褐色なのに対してこの女性はアルビノ的に全身が白い皮膚組織で髪の色もホワイトであった。