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5:風変わりな兄妹

この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。


実はこのシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズン1が終わった後に公表したいと思います。

そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。


2人は再度E-BIKEに跨り、ウラジオストクの市内にある駅へと向かいハバロフスク方面に行く列車に飛び乗った。


「ロシアの列車ってレトロよね。いまだに車輪がある列車が走ってるなんて・・・私達はほぼ日本に住んでいるんだけどリニアモーターカーがメインなのよ。でも、なんかレトロでガタゴトと風情があっていいわよね。」

「そうですね。帝国は軍備ばかりにお金をかけて、地方の人民の生活は未だに旧式なのです。というか、かなり貧しいと思いますわ。」とサーシャが怒りを含めている。「日本の生活ってどんななのかしら?想像がつきませんわ。」

「お兄さんを回収したら、私達はまず日本に戻るから楽しみにしておいてね!」

2人はウラジオストク ー ハバロフスク間の約800kmを走り、約9時間で到着したのだが、すでに深夜になろうとしていた。


「しかし、遠かったわね〜 久々にお尻が痛くなったわ。まあ、でも、ぐっすり眠れたからいいか! で、その森ってどのあたりかはわかるの?」とソフィアが尋ねると、

「わかります。でもかなり距離があるので車じゃないと無理ですね。」

「わかったわ。じゃ、ここで4WDの車を拝借しましょうか?」と言いながら、ソフィアは

駅前に駐車してある目ぼしい車を探し特殊ツールでロックを解除した。

「しかし、ロシアはまだ4つの車輪がある乗り物がメインなのね。これも驚きだわ!この車は日本製のEVだから信頼できると思うわ。ナビも付いているから場所をインプットしてくれる?」

「わかりました。森の入り口あたりまで行って、そこからは徒歩で入って行きますが、私達兄妹は指笛で会話ができるのです。だから居そうな場所に着いたら呼んでみますわね。」

ソフィアは「指笛なの?」と少し驚いた。


早速 駅から郊外を抜けてアムール川に沿いながらソフィアは車を走らせて行った。

そして川の三角州が終わったあたりに森林の入り口が見えてきた。

「この辺りはユダヤ人居住区になっているのです。だから帝国の監視があまり届かないエリアなのです。多分この森の奥に兄はサバイバルしていると思いますわ。もうかれこれ半年近くになるかしら。兄がこの森に脱げ込んでからは連絡が取れなくなってしまったのです。無事なのはわかりますが心配です。」とサーシャが状況説明をした。


荷物を持って2人は、トーチで照らしながらゆっくりと森に入って行った。月の明かりはあるものの流石に森の中には届かず真っ暗な空間であった。獣の声なども時折聞こえる中、さらに奥深くまで足元を確認しながら一歩一歩進んで行った。すると森の真ん中であるにもかかわらず月明かりで照らされた広い空間が見えてきた。2人は不思議に思いながらその明るい空間に向かって歩いていくと、森が急に開けてその一区画だけ何故か草原になっていた。

周辺を確認してみたがとりあえず自然にできた空間のようで、人為的な危険はないことが確認できたため引き続き2人はこの草原を進んで行った。地盤が緩いのでかつては沼か何かであったのだろう。

そして、この丸く広い草原を進んでいくと、対岸にあたる森と草原の境目にいくつもの光る点が見えた。


ソフィアが「あの光は動物の目に見えるわね〜」とサーシャに話しかけた。「そうですね。あの大きさからすると狼の群れだと思いますわ。」とあたかもロシアでは当たり前に出くわすかの如くさらっと答えた。

「えっ 危なくないの? 狼たちは初めて見るわ。」

「危ないですよ。彼らは群れだから。こちらの出方を観察しているのです。」

「襲ってきたらどうしましょう?ブラスターガンはリュックに隠し持ってはいるんだけど、音を出したくはないわね・・・」

「そうですね。もし襲ってきたら素手で戦っても大丈夫だと思いますわ。」

とまたもやサーシャはさらっと答えた。


このサーシャの言動は、自然体なのか? 怖がってはいるのだが、それを表情に出さない機械みたいな反応の変わった子であるのか?それともそれ相応に獣たちの扱いに慣れている子なのか?ソフィアにも判断できない風である。

もちろん、ソフィアはこの手の獣であっても素手で撃退可能ではあるが、このぬかるんだ地盤でサーシャを守りながらこの数の狼を相手するとなると少し厄介だと思ったのだった。

サーシャの見た目はスキニーでどう見ても戦闘経験などは全くなさそうに見えるからだ。

しかし日本が入手したデータでは、この兄妹は強力な戦士に成り得る人材とのことなのだが、果たしてどこかに特殊能力が隠されているのであろうか?と不思議に思っていた。


2人が月の光があたる草原に立ちじっと狼達の様子を見ていると、狼達の中の数頭が様子見に森から現れてきた。狼の中でも巨体にあたる大きさなので、この4頭はリーダー格なのであろうと察しがついた。

彼女らの様子を見ながらゆっくりと歩き出したと思ったらいきなりものすごい速さでこちらに向かって突進して来たのだった。他の狼たちもリーダーに遅れて付いて来ており、全体で20頭ぐらいの塊の群れが今にも2人に襲いかかろうとしている。


まずは先陣の4体の狼を撃退すべく2人は咄嗟にファイティングモードになった。

ソフィアは動物を痛ぶるのは性格上好きではないのであるが、襲われているわけだから仕方がないという風に割り切り、まずは1頭が突進してきたところを横から蹴りを入れて横腹に命中した。その狼はまともに喰らったためそのまま倒れ込んでしまった。

もう1頭も間髪を入れずにソフィアに襲いかかってきたのであるが、まずは右腕で払い除けて着地したところを蹴った。少し宙に浮いて最初の1頭と同じように倒れ込んだ。

ソフィアとしては力半分ぐらいの力量での格闘であるので、その2頭は死にそうになったという状態ではなくショックでうずくまっているといった表現が当たっている。


サーシャは?と右方面を見てみると、まさしく2頭が左右から飛びかかろうとしている瞬間であった。ソフィアはまずい!と思ったが、足元が緩く対応が間に合わなかった。しかし彼女はまず右腕で1匹を振り払い、もう1匹を左足でキックした。普通の軽い動作であったがその2頭はかなりの距離を飛ばされていった。


そして、そのリーダー4頭の戦いを見た他の狼達は怯んでいきなり突進をやめ、そのうち森の中に退散して消えていったのだった。


ソフィアが、「サーシャ、すごいわね! こんなにスリムなのに凄い力があるのね?」と驚きながら彼女の無事を確かめた。

「大丈夫ですわ。これぐらいのことは!」と余裕の発言である。

「よかった安心したわ。実はあなたスリムだから、実際戦闘ができるのか?心配していたのよ。それじゃ、また何か来ないうちにあなたのお兄さんを探しにいきましょう!」


対岸の森に入りさらに奥へと進み巨木が生い茂るあたりに来た時、サーシャはなんとなく兄の気配があると言って指笛で兄を呼んだ。すると10秒ぐらい経って遠くから指笛が返ってきたのだった。

「あら!あれは兄ですわ。」と言いながら、サーシャは先ほどの指笛よりも複雑なメロディーでまた何かを語りかけているようであった。その返答として短い指笛が戻ってきた。


「お兄様、無事だったんですわ!よかったー 少し待っててください!ここに兄が来ますので!」

と言ってサーシャから初めて笑顔がこぼれた。


暫くすると風もないのに森の木々がざわめき、そのざわめきが2人に近づいてきた。

そしてちょうど2人の真上にある巨木から一人の男が飛び降りて来たのであった。

いきなりアーミースーツにサバイバルリュックを背負った身長180cmぐらいの細マッチョな男性が現れた。

顔は面長で整っておりいわゆるイケメン顔をしている。まるでショップにディスプレーされているマネキンのような風貌であった。そして目はブルーに髪型はサバイバル生活で伸びたのであろうか?センターパーティングで肩に触るぐらいの金髪のため、まさにサーシャとは兄妹と一瞬でわかるぐらい似ていた。


「森の番人の狼たちが騒いでいたから、侵入者がいると思ったらサーシャだったんだな!」

とその男が言いながらサーシャに近づいてきた。

「あっ、お兄様!」と言って2人はいきなり深く抱きついた。

久々の再会であるからか?暫くまるで恋人同士のように固く抱き合っていた。


落ち着いたところを見計らって、ソフィアが、「あなたがアンドレイね!初めましてソフィアよ。日本からあなた方を迎えに来たの。」と簡単に自己紹介をした。

「ごめん、ごめん、妹とは久しぶりに会ったからついつい興奮してしまって失礼した。僕は兄のアンドレイだ。よろしく!サーシャから指笛で簡単に聞いたけど、僕らを迎えにここまで来てくれて本当に感謝しているよ。ありがとう!流石に半年ぐらい森で暮らしているからそろそろ体ぼ節々を調整しないといけない時期なんだ。」とソフトに自己紹介をした。


「体の調整? てなに?」と少し不思議に思ってソフィアが尋ねると、

「あれ、サーシャからは聞いていないのかな・・・なるほど、まだ秘密にしているんだね?」

とアンドレイがサーシャに向かって聞いて頭を撫でている。

「そうですよ。まだよく知らない方々だから余計なことは言わないほうがいいかと思いまして・・・」


ソフィアが、「まあ無理はないわね。今日会ったばかりだしね。でも知っていてもいいことは教えておいてもらった方がいいわね。私達はこれからチームになるんだから。」と諌めるように笑顔で言った。


「わかった。じゃ僕が説明しておこう。驚くかもしれないけど実は僕たち兄妹はサイバネティック・オーガニズム、わかりやすく言うとサイボーグなんだよ。」

ソフィアが予想外の返答に驚いて、「え、あなたたちサイボーグなの? この世界で可能だったんだ・・・」と半ばショックで口を開けた状態でいたが、取り直して続けた「と言うことは、帝国があなたたちをサイボーグにしたわけ?」


「そうなんだ。僕たちの両親は民衆派で帝国貴族院の中枢にいたんだけど、仲間の右翼幹部貴族に裏切られて謀反を企んでいると言う濡れ衣を着させられてしまい、いきなり処刑されてしまったんだ。その時同時にその裏切り者達には屋敷も放火されて、僕らは全身重度の火傷を負って生きるか死ぬかの状態になってしまったんだ。で、その時帝国はサイボーグ兵士の実験をしている最中で、僕らの体はちょうどいい具合にその実験材料となってしまったわけさ。両親のことは何も聞かされていなかったから、サイボーグとして仕上げられたあとは、僕ら2人はペアで帝国のために国内外でスパイ活動を行っていたんだ。そしてある時、僕らの両親は敵に殺されたわけではなく皇帝に処刑されたという事実を知ったんだ・・・」


ソフィアが、「なるほど、そう言ういきさつだったのね?さっき狼たちと戦った時にサーシャが細身なのに強い力だったから驚いていたところなの。それで帝国軍から逃げてここに隠れていたわけね?」

「そうなんだよ。僕たちは復讐しようと誓ったんだけど、帝国はあまりにも強大で2人では手に余ると判断して、一旦潜んで機会を伺っていたんだよ。」

「なるほど、だいたい状況がわかったわ。それでサイボーグの度合いは?」

「度合いとは?」

「どのぐらいが、自分の体なの?」

「そうだねー 僕のオリジナルは脳と脊髄だけだね。サーシャもそうだよ。」

とアンドレイは苦笑いしながら頭を掻いて言った。」

「えっ、と言うことは全身が義体なのね??」

「そう言うことになるね。」


ソフィアが、「まー驚いたわ!今夜は流石の私も驚きの連続だわ!全身義体にする技術が帝国にあったんだって本当に驚いているの。」と真剣な眼差しで言った。

「しかし、帝国はあらゆる酷い実験をしていて、たまたま僕らは実験に合う素体であったから生き延びているだけで、奇跡的に成功した僕ら以外はほとんどが失敗しているんだ。ただ、この義体は調整が必要である程度こまめに調整していないと動作がギクシャクしてくるんだよ。君達の国にはそれに対応できる技術があるのかな?」


「なるほどねー じゃ まだあなた方二人だけがサイボーグなわけね!? やっと気持ちが落ち着いてきたわ。実はあなた達みたいな兵士が沢山いたらどうしようって思っていたところなの。」とソフィアは少し安心したという表情で答えた。

「日本に帰って設備さえ使えれば私が調整できると思うわ。こう見えても私の本職は科学者なんだから。」と言いながら笑った。


「僕らは日本に行くんだね?」と少し驚きながら「で、これから僕らはどうすればいいのかな?」

「森の入り口に盗んだ車があるから、そこまで戻って、あとはここハバロフスクからウラジオストクまでドライブして、そこに留めてあるホバージェットで日本に戻る予定なの。仲間もあと3人私達の帰りを待っているわ。」

「へえー 仲間って響き久々に聞けていいねー 半年も一人サバイバルしていたから、流石のサイボーグでも寂しくて死にそうになっていたところなんだ。」と冗談ぽくニヤけながらアンドレイは言った。


そして3人は車に戻り、このエリアに詳しいアンドレイがウラジオストクまで運転し、人目に付きにくい夜間に移動を終えることにした。


さすがサイボーグだ。休憩なしで一気に車を飛ばし、夜明けには3人が待つホバージェットに辿り着くことができた。

ちょうど3人は張ったタープの下で朝食を食べていたところだった。

「連れて来たわよ! アンドレイよ!サーシャのお兄さん みんな仲良くしてね!」とソフィアは姉御のように紹介すると、

「おっ よろしく! ガルシアだ。」と言って真っ先に握手を交わした。

そして「ガルシアの連れのイメルダよ。よろしくね!」と続いた。

2人をじっと眺めていたジュリアが、数秒間の間があり

「私はソフィアの双子の妹のジュリアよ! 初めまして!」と軽く握手をした。


「ねえ、あなた達、握手して何か感じなかった??」とソフィアが言い3人が沈黙した。


「そうかー 帝国軍さすがね!!」と触ってもわからないぐらいよくできているんだと言う意味でソフィアが言った。

そして続けてアンドレイが、「実は僕たち兄妹はサイボーグなんだ。」

そしてまたもや3人が唖然とした。


ガルシアが驚きながらも「いやー俺も実は左腕がサイボーグといえばサイボーグなんだが・・・」と冗談ぽく答えて2人をマジマジと眺めている。

「僕らは全身がそうなんだ。やっぱりチームメイトには知ってもらった方がいいと思って最初に打ち明けたんだ。」

そしてソフィアが、「すごい力よー」と付け足した。

次にイメルダがサーシャの体を触りまくっている。

サーシャが「くすぐったいのでおやめください!」と言いながら一歩引いた。

「あっごめんごめん! お姉さん 綺麗な可愛いカラダだからついつい触っちゃったのよ。普通の人間と差がよくわからないぐらいね。言われなければ全然わからないわよ!」


ソフィアが、「じゃ自己紹介も終わったことだし、早速日本に戻りましょう! ここからは見つからないようにしないとね! アンドレイ達はイメルダのホバージェットの方が広いからそっちに乗って親交を深めていってよ。いいわよね?」

イメルダが、「ええ、大歓迎よ! 色々とロシアのことも聞きたいしね!」

と言うことで、ホバージェットがようやく出発できることになった。


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