4:救出作戦スタート!
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
実はこのシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズン1が終わった後に公表したいと思います。
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
次はしばし休憩を挟み、4人でテーブルを挟んでの作戦会議から始まった。
「俺たちはまたこの前のカナダの時のように、ホバージェット2台で向かうってことでいいんだよな?」とまずガルシアが口火を切った。
「そうね。そういうことになるわね。」とジュリアが答えた。
ソフィアが、「私たちはホバージェットで日本海に出てウラジオストクに向かうの。ステルス塗装をしてあるからレーダーには映らないとは思うんだけど、目視では見つかる可能性があるわね。ただ今回はロシア人レジスタンスの回収が目的だから、なるだけ出所を隠して戦闘は避けたいわ。でないと隠密行動の意味がなくなるから。」
イメルダが、「わかったわ。もし見つかったら戦わず速攻で逃げるってことよね?」
「そのロシア人女性のサーシャは街中で一般人に紛れて生活しているらしいの。日本側がコンタクト取れたらしくて。無線で交信すると見つかってしまうと言うから私たち姉妹で直接迎えに行くわ。その間付近の森にホバージェットは停めておくからそれを守って欲しいの。」とソフィアがこれからの行動を簡単に説明した。
ホバージェットとは、ホバークラフトのようで更に強力なジェットエンジンを積んだ水陸両用の移動ヴィークルでありクリーンエネルギー仕様の水素系ジェットエンジンに似たもので推進する。
ジュリアのタイプは小型で4人乗りだが、ある程度の荷物も積むことができ、新開発の循環エネルギー仕様のため燃料補給いらずの自立型キャンピングカーのような生活も可能なのだ。また軍用ではないのだが戦闘用にレーザー砲を2門備えステルス塗装も施している。それにガリオンのネストでもあるのだ。
イメルダのものは連合軍の軍用6人乗りタイプのホバージェット・カーゴで、ぶ厚い装甲に大荷物も詰めてレーザー砲は4門備えている。今回の滞在中にステルス塗装も施したようだ。
彼女たちはソフィア・ジュリアチームとイメルダ・ガルシアチームに分かれて、武器および食料等を準備した。新潟からウラジオストクまでの距離は約830kmだ。
まずは港町のウラジオストクの手前に上陸し、人目に付かずに河口から入った森林にベースを置く予定なのだ。
そしてサーシャを確保しホバージェットまで連れ帰るには、目立たなくロシアでは一般的な移動手段が必要である。そう、この場合ロシアで一般的な移動手段はエレクトリックバイク(EーBIKE)なのであった。
たまたま、ソフィアとジュリアはサイクリング用にビーチクルーザータイプのものを愛用していたので、ジュリアのものに後部座席になるものを応急処置で取り付けた。そしてその2台をカーゴタイプのイメルダのホバージェットに格納し準備が完了した。
彼らは無事ウラジオストクに上陸し半島の港とは逆側にあたる東の森林地帯に艇を隠した。
そしてソフィアとジュリアがE-BIKEに跨り早速予定通りに作戦開始となった。
ジュリアが「じゃイメルダとガルシア、見張り番よろしくね!」と言い残してデニムスタイルの普段着でサイクリングのように出発した。
港からの潮風を感じるメインストリートのスヴェトランスカヤ通りの裏道にあたるプーシキンスカヤ通り沿いの古いアパートにサーシャの部屋があるらしいのだ。そして歴史を感じる煉瓦造りの街並みにカフェやダイニングバー、ショップなどが並ぶ目抜き通りの教会付近にその住所を見つけた。
「ジュリア、このあたりね。」、「そうね、この住所からするとここのアパートの2階になるんじゃない?」 2人はEーBIKEを入り口前に停めて、早速2階に上がるとサーシャの部屋を見つけて呼び鈴を鳴らしてみた。しばらく様子を見たが、残念ながら留守のようだ。
「困ったわね・・・」「そうね、いつ戻ってくるか全く予想がつかないわね。どうする?」
「前の通りのあそこのカフェでブランチでも取ってましょうか?」とソフィアが提案した。
「ロシア料理は初めてだから、どんなものがあるのかしらね?」とジュリアも旅行気分で興味津々のようである。
この辺りを見回してみると港町のせいか爽やかなブルーがベースカラーになっている建物やインテリアが多いのだが、その中でも飛び切りミントブルーな可愛い空間のカフェに入って行った。洒落たカフェが好みというより、サーシャのアパートを見張れるカフェはここだけだったからだ。
窓に面する2人がけの席につき、ソフィアはオイスター・シュリンプなどのシーフードの盛り合わせを、ジュリアはシーフード嫌いなのでロシア風水餃子をコーヒーと一緒にオーダーした。ヨーロッパの食事とも違い、もちろんアジアとも全く違っているのだが、無国籍風な食べ物が多く二人は興味が湧いた。今まで食べたことがないような味付けを堪能しリアルコーヒーも飲み干し、久々に姉妹でプチ旅行にでも出かけているような気分になりながらもチラチラとアパートを確認している。
ランチタイムになってきたようでこのカフェにも人が増えてきた。もちろん付近の住民達で賑わっているため瓜二つの彼女達は不思議な存在に写っていた。それでもしばらく粘っていると写真で確認したような風貌の女性が戻ってきたのだった。
「彼女 サーシャじゃない?」とジュリアが言った。「そうね。細身で私達ぐらいの背丈のブロンドだから間違いないと思うわ。」とソフィアが答えた。
「じゃ、行きましょう!」と二人は目立たぬようにカフェを出てアパートに向かった。
チャイムを鳴らすと、サーシャがドアの隙間から「あなた達どなたですか?」と警戒しながらロシア語で小声で言ったのがわかった。ソフィアもロシア語で、「私がソフィアよ、日本からコンタクトをとった。」と彼女も小声で答えた。サーシャはドアを開けて早く入りなさいという仕草をしたので、二人はとりあえず彼女の部屋に入りダイニングに座った。
そしてサーシャが「あなた方が日本から来たレジスタンスなのですか? 何か証明できるものはございますか?」と注意深かった。まあ無理もない。ここは帝国領で言論の自由などはなく全てが統制されている国なのだ。帝国に反論でもしようものならすぐに牢獄に入れられてしまうのだから。
ソフィアが「そうね。IDならあるわ。」と言って彼女の日本のIDを見せた。」そしてジュリアも「私達ツインズだからこれも見せれば納得するでしょ?」と言ってBAの称号が入った連合軍のサーティフィケイトを見せた。
「え!あなたはBAなのですね!帝国軍を一瞬で100体以上撃破したという!?素晴らしいですわ!ありがとうございます! レジスタンスを代表して感謝致しますわ。」と言いながら涙ぐんでいた。
すると、ジュリアが、「えっ、あなた、BAの意味知っているの!?」と驚きのあまり少し声高となってしまった。
サーシャは、すぐにジュリアの疑問に反応して、「私は、今アンダーグラウンドでレジスタンス組織をつくっているのです。今やメンバーはものすごい人数に膨れ上がって、彼らからは日々様々な情報が入ってくるのですが・・・それで得た情報なのです。帝国内の普通の人でしたら、まず知らないようなことなんだとは思いますわ。」と説明した。
そのサーシャの涙は彼女がこれまで帝国に抵抗してきた困難な道のりへの創傷感と安堵の気持ちが混ざったような涙であった。
「そうよ。まあでも私はロボット専門だけどね。」とジュリアが付け足した。
ソフィアが、「それじゃ、私達があなたを一旦日本に連れて行くから、すぐに必要なものをまとめてもらえるかしら?」
「わかりました。仰せの通りあなた方と共に行動致します。少々お待ちくださいませ。」と言って寝室に入って行った。
ツインズ2人は彼女の部屋を眺めながら、帝国の庶民の暮らしが質素であることと、彼女の涙に帝国に対する強烈な憎しみを感じていた。その憎しみに対しての理由を知りたかったのではあるが、ここでこじれると不味いし、まずはサーシャを安全に確保するのが先決のため後々ゆっくりと聞くことにした。
「できました。お待たせ致しました。」と言って古びたピンクの大きなリュックを持って着替えて出てきた。デニムパンツにエクリュの刺繍が入ったスモックブラウスの出立ちで、先ほどのスカート姿のフェミニンで可愛いい雰囲気とは少し違ったカジュアルな目立たないイメージに変わっていた。ロシア人ぽい色白金髪のセンターパーティングのナチュラルワンレングスにブルーの瞳の20代そこそこの女性であった。ツインズにとてもよく似たルックスなのではあるがどこかが違っている。彼女達よりも細身で華奢であるし、顔の形もアゴが少し尖った丸顔である。
そしてツインズが若干クールなイメージがあるのに対してスウィートな柔らかい表情でどこか良家の子女のような品を感じるのだ。例えて言うならばミルクティーのような印象でもあった。
そしてそのルックスからは信じられないのであるが、そんな甘いイメージの彼女も前情報では帝国軍の精鋭部隊の一人だというのだ。
ソフィアが、「あなたのお兄さんはハバロフスクにいるのよね? 私達のホバージェットに戻ったら、次はあなたのお兄さんを救出に向かいたいの。連絡を取れるかしら?」
サーシャが、「彼は森の中に逃れて一人で生活しているのです。以前は帝国のシークレットエージェントだったのですけれど、私達の両親が帝国に捕まって処刑されてからは離脱して逃亡しているのです。兄も両親が殺されたので帝国に強い恨みを持っています。どうにか復讐したいのですが一人では何もできずに・・・そこにあなた方からコンタクトがあったのです。」
「そう兄との連絡ですね・・・郊外の森に行けばコンタクトを取れると思います。私達兄妹は凄く仲がいいですから。」と言って意味ありげに微笑んだ。
ジュリアが、「通信デバイスのようなものは持っているの?」と確認したが、
「ないですね。持っていると帝国に逆探知されてしまう恐れがあるのです。兄は重要戦犯になっているので捕まったら死刑なのですよ。秘密情報も持っていますし・・・」
続けてソフィアが、「彼は皇帝がいるバンカーの仕組みがわかっていると聞いているんだけど、それは本当かしら?」
「そうですね。兄はバンカーでの謁見も許されていましたし、皇帝お付きのバンカーの警備もしていましたから。」
かくして、彼女の兄はこの作戦の鍵であることは確認できたのであった。
「それじゃ、急ぎましょう!私達のE-BIKEで移動するわね。あなたはジュリアの後ろに乗って!」と言って3人でガルシア達が待つ森へと戻っていった。
ガルシアとイメルダがちょうど遅いランチを取っている最中に3人は戻ってきた。
イメルダが、「よかった!時間かかってるから一瞬捕まっちゃったのかなと思ったよ。」
そしてソフィアが、サーシャを紹介した。
するとガルシアが、「君も腹減ってるんじゃないか?これ食うか?」と言って2人も食べているハムサンドを手渡し「コーヒーもあるから、少しゆっくりしようぜ!」とマグカップにコーヒーを注いであげた。
彼女は「ありがとうございます!遠慮なくいただきますわ。」と言い、ハッチを開けたイメルダ艇の中の後部ソファーに座って寛いでいる。
イメルダが、「私達は自由主義連合の軍人なの。これから一緒の行動になるからよろしくね!」「詳しくは知らないけど、あなた達は帝国に恨みを持っているのよね?」
ソフィアが、「そうなの。さっき聞いたんだけど彼女たちの両親は帝国に処刑されてしまったらしいの。」と何度も説明するのが辛いのではと察し代わりに答えてあげた。
イメルダが、「そうか〜 それじゃ無理もないわね。」と納得した。
ソフィアが、「これから、ハバロフスクにいる彼女のお兄さんを救出に向かうわよ。森の中に逃れているらしいの。サーシャだとコンタクトが取れるらしいからとりあえずその森に行ってみるわ。」と言って、ツインズとサーシャはジュリア艇に移動した。
ソフィアが、「ハバロフスクはどうやっていけばいいんだろう?」
「海からはアプローチできないし・・・、陸路でもホバージェットだと目立ってしまうし・・・」と独り言を言って考えながらマップを見ていると、サーシャが反応し「陸路にて列車で移動するしかないと思いますわ。」と答えた。
「えっ、そうなのね・・・それじゃ折角迎えに行って戻って来たのに意味なかったわね・・・サーシャもまた一緒に行かなくちゃならないしね。」
「そうよね! じゃ、ここはシークレットエージェント役のソフィアの出番でしょ!」と言いながら珍しくジュリアは一歩下がりサーシャと行動するのを敬遠しているようにも見えた。
その様子を察したソフィアが、「やっぱりそうなるわよね。わかったわ!じゃ私とサーシャで仲良く列車でハバロフスクまで行ってくるわ! 一体どのぐらい時間がかかるのかしら?ジュリアはイメルダ達に伝えて待っててね。」と言って遠征の準備をし始めた。
水や必需品を小さなリュックに詰めて、万が一のための小型ブラスターガンも隠し持った。
サーシャも先ほど詰めた荷物の中から必要なものだけ取り出しウェストポーチに入れた。