24:対オムスク―前哨戦ー
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
実はこのシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズン1が終わった後に公表したいと思います。
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
また久々にBLANC姉妹が揃った。
やはり姉妹は揃うと迫力がある。2人はなんだかんだ言ってこのタスクの中で人間的な成長が見えている。最終的なミッションに向かって日々精進していることがわかるように以前と顔つきも違ってきていた。無理もないだろう。その最終的なミッションを果たせない場合は2人はもちろんこの地球上から人類も抹殺されてしまうのだから。姉妹はそんな人知れず重圧を背負った人類の救世主であり、しかもそれを知っている者は関係者のみなのだから。
オンエアー効果を狙うのと、ルージュのアイコンとしても拡散した方がいいので、サーシャのみならず、ソフィアとジュリアのバトルツースもなんとピンクにカラーリングすることになった。
これを恥ずかしがったのがジュリアだった。彼女は自分が身につけると言う意味で可愛いものが大の苦手なのだ。
まあ、でも単にブラックがピンクに塗り替えられただけなので、デザイン的には変わらずカッコよくてセクシーであるのは違いない。実を言うとピンク版もあっていいのでは?というぐらいこれはこれで目立ってイケているのだ。
それとブラスターガンを前後に装備したカモフラカラーのバギーも2台調達できた。
2人乗りEVでありフロントスクリーンは防弾仕様になっている。
これで役者は揃った。
すでに11月になり、そろそろ冬将軍がやってくる季節になってきた。
これ以上突撃を延ばすと、雪が降ってくることになり攻める側の彼女らが不利になってしまうのだ。
ついにアンドレイとツインズはスーパーソニックジェットに乗り込み。前回のように低空飛行にて再度アルタイ山脈に向かった。
すでに現地入りしているサーシャとは、カザフスタン側のオムスク付近で合流となる予定だ。
そして3人はこのまま日本に帰らずバンカー攻略に進めるように、ジュリアのホバージェットにサバイバル物資を詰め込みモバイルホーム的に持ってきたのである。その中には主であるガリオンももちろん健在だ。
ソニックジェットは丘陵地に着陸し、ジュリアのホバージェットとバギーを降ろした後すぐに飛び立って行った。
3人はしばしここでサーシャを待つことになった。
このホバージェットは小さめのタイプで席数としては4席あるのだが、前列の2席がリクライニングしフルフラットになる構造のため2名しか就寝できないのだ。なので、またもやアンドレイはテントで寝ることになるのであろう。
暫くすると、ピンクのバイクが疾走して向かってくるのが見えた。
「あっ、サーシャだ!」とアンドレイが叫んだ。
「ほんとだわ!かっこいいわね!」とソフィアが言った。
そして、3人は外に出てサーシャを出迎えた。
「お兄様、ソフィアさん、ジュリアさん!ありがとう! 本当に今回は感謝しています!」
と言ってバイクを降りて駆け寄ってきて、まずはアンドレイと固くハグした。
そして、ソフィアとジュリアともハグして全員再会を喜んでいた。
この頃になるとジュリアとサーシャの距離は無くなっていた。
そして中に入り、戦略の打ち合わせとなった。
サーシャが、「私、クラブ・ルージュにお願いして、オムスク城の地図を手に入れました。これです!」
そしてテーブルの上に地図を広げた。
「なるほど、なるほど・・・レーザーキャノンがやっぱりあるわね。」とソフィアが見つけ、
「城の正門付近に4門もあるから、これはまず私がレーザースナイパーガンで潰さないといけないわね。そして、城に入るにはメインゲートを破らないといけないから、ここはアンドレイの持ち場かしら?アンドレイがバギーで先行して、その後をサーシャがバイクで、
そして、レーザーを潰した時点で私とジュリアがバギーで向かうと言う段取りかしらね?」
と作戦を説明し始めた。
続けて、「まず、アンドレイは開門中に敵の攻撃を受けるでしょうから、シールドを構えながらあなたの怪力で開けられるかしら?」
「城壁に弓兵もいるだろうから、奴らはソフィアがレーザーでやってくれないか? スーパーチェーンソーは持ってきているからそれを使えばできると思うよ。」
「わかったわ」ソフィアが答えた。
「その後、アンドレイとサーシャが開いた正門から侵入し、まずは1陣をやっつけると・・・サーシャは可能な限りバイクで奥まで突っ込んで行って!それをアンドレイが他の残兵をやっつけながらフォローする。そして、私とジュリアが空いた先目掛けてバギーで突入し、いけるとこまで行ったら降りて戦うわ。ジュリア、今回はガリオンも使う?」と聞いた。
「もちろんよ!ガリオンはいつも一緒よ!バギーについて来させるわ。」
アンドレイが「ガリオンにやっと会えるんだね?」と聞いた。
ジュリアが「何言ってるの?彼はそこにいるわよ!今は眠っているけどね。」と言って後方のカーゴルームを指差した。
サーシャが「本当ですか?」と言ってアンドレイとカーゴルームを覗きに行った。
アンドレイが、「あっこれがガリオンなんだ!君の装備の塊かと思っていたよ!」と驚きながら戻ってきた。
サーシャが、「思ったより小さく見えましたが、丸くなっているせいかしら?」
アンドレイが「でも、十分怖そうに見えたぜ!」と変顔で笑わせた。
「で、オムスク伯をやっつけるわけだけど・・・奴はどこにいるのかしら?」とソフィアが
アンドレイに確認すると、
「城は5階建だから、最上階にいるはずだな。でも各階にはいずれも手練れの重臣が我々のいく手を妨害すると思うよ。各階少なくとも2名で守っているはずだから・・・10名以上にはなるね。」
ジュリアが、「それは面白そうだね!私とソフィアがその奴らの相手をするから、アンドレイとサーシャは先に進んで親分を打ち取って欲しいわ!」
サーシャ、「わかったわ。ジュリアさん、有り難うございます!是非そうさせてもらいますわ!」
ソフィアが、「じゃ、これで作戦の概要は決まったわね?今日はこのホバージェットで見つからないように城の近くの森まで移動してキャンプと行きましょうか?そして明日の朝一に決行ね!」
全員が「了解!」と言って話がまとまった。
サーシャのバイクをバギーに括り付けて、そしてその2台を牽引しながらホバージェットは静かにゆっくりと進み場所を見つけた。
そして全員明日の準備とキャンプの準備を始めている。
ホバージェットのオーナーであるジュリアは久々の来客で天手古舞だ。
いつもは一人で気ままにゆったりと過ごしているし、最近は遠征ばかりで全然これを使っていなかったため勝手を忘れかけていた。しかもガリオンにも久しぶりに会ったのだ。
クリーンエネルギーで動力源が循環するようにセッティングして、それが終わるとテーブルやイス類、ランタンやクッキングバーナー、焚き火台などをカーゴルームから引っ張り出してきた。
ベースキャンプ造りとしてまずはタープを張り、その下にシャワーもセッティングしている。
そしてプロキャンパーのアンドレイはすでにキャンプグッズで上手に料理を始めていた。
もちろん食材は湯沢からのものがメインであるが、彼はみんなを喜ばせようと工夫を凝らしているところなのだ。
サーシャはアンドレイと寝る空間を作るために、タープに入り口が重なるように前も使ったテントを張った。そう、あの時のバンカーウォッチングを思い出していたのだ。アンドレイと2人だけで過ごした貴重な時間であった。今夜は2人だけではないが、またアンドレイと一緒の空間にいれるので幸せ一杯の表情をしている。明日が決戦とはまったく持って思えない雰囲気である。
ソフィアは珍しく残った作業をしている。
それは焚き火づくりだ。いつもは交渉ごとが絶えないのだが、こんな時には彼女としてもたまには焚き火の炎を見ながら1人でゆっくりと過ごすひと時は嫌いではないのだ。森の中からまずは焚き火になる枝を集めてきた。しかし、この新開発のルージュのバトルツースは彼女にもとてもお似合いだ。サーシャのそれが可愛く愛らしいとしたら、ソフィアのピンク姿はブロンドのポニーテールがセットでまるで動くセクシーフイギュアとなっていた。
さてさて準備も整い帝国攻略前哨戦の前夜祭である。
全員タープの下に集合しキャプテンチェアーに座った。
珍しく今夜はアンドレイが音頭を取るようだ。
湯沢から持ってきた日本酒をかざし、アンドレイは話し始めた。
「みんな、ここまで本当に有難う!そもそもはサーシャのアニメ戦略から始まったことだけど、ついに僕ら兄妹の怨念を晴らす時が来た。皇帝の前にあの忌まわしい中心人物であるオムスク伯を地獄に送ることができるのは亡くなった両親への何よりもの慰みになる。明日は金塊が眠っている城での宝探しと洒落込んで思う存分暴れようではないか!」と言って乾杯した。
ソフィアが、「アンドレイ!この料理美味しいわよ!さすがプロキャンパー、こういう男っぽいキャンプ料理うまいわよね。」と感心しながら頬張っている。
サーシャが「そうなんですよ。この前お兄様とキャンプした時なんかは、毎日この美味しい料理を作ってもらいましたのよ。本当に綺麗な自然の中で幸せでした。あの時は丘の上でのキャンプでしたので夜は満天の星空が見えて幻想的な時間を過ごせたのですが、今夜は森の中ですし、皆さんと一緒ですからまた違ったコージーな気分になりますわね。ソフィアさん!ジュリアさん!本当に有難うございます!明日私は久しぶりに思う存分戦いますわ!どうか私たちの背後をお願い致します。」
ジュリアが「わかってるわ!私も最近真剣に戦っていないから、鈍った体に丁度いいイベントになるわね。細かいことは気にしないで思う存分に暴れましょう!」とジュリアらしく元気づけた。
アンドレイが、「僕の料理を楽しんでくれてるようで嬉しいよ!しかしこの僕らの絆は宝物だねー!明日の戦いはカメラドローンがいくつか飛んでオンエアされるから、君たちもサーシャと一緒にアニメのヒロインになったつもりでオーバーアクションでヨロシク頼むよ!クラブ・ルージュの観客達を楽しませることで、彼らを巻き込んでこの国の革命を成功させるのが目的だからね。今ふと思ったんだけど、ある意味僕らはローマ時代のグラディエーターみたいなものなのかな?」
ジュリアが、「しかし、私ってこのピンクのスーツ似合わないわね・・・」
アンドレイが、「いや、そんなことないよ!確かにいつもの君とは違った雰囲気だけど、それはそれなりに魅力的だよ。クールブラックの君とは違うゴージャスピンクのジュリアを感じるよ!」と答えた。
それを聞いて、サーシャが、「まあ、お兄様、ほんとジュリアがお好きなんですね!」とまた拗ねてしまった。
アンドレイが、まずいと思ったらしく、「違うよ、サーシャ!僕なりに芸術的に表現してみたんだよ。」
ソフィアが、「まあまあ、チームなんだから仲が良いってことはいいことでしょ!誰も私のことは褒めてくれないわけ?」と言って笑った。
サーシャが、「いえ、ソフィアさんはまるでアニメのフィギュアに見えますよ!とてもお似合いですよ!」と間髪を入れずに答えた。
ソフィアが、「ありがとう!サーシャ。やっぱり女の子しか褒めてくれないのね?」とアンドレイにウインクして言った。
アンドレイは、「あっ、ごめん、ごめん!僕は言ったつもりだったんだけど、頭の中で言ってたのかな?・・・今更だけど、すごく似合ってるよ!まるでピンクに輝いているようだよ! 君はこれからブラックじゃなくピンクにするべきだよ!」と言って頭を掻きながらしくったという表情をした。