18:アニメ大作戦
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
実はこのシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズン1が終わった後に公表したいと思います。
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
さて日本との時差が2時間のノボシビルスク付近のアンドレイ兄弟は今どうしているのだろうか?
丁度夕暮れ時となり、二人は寄り添いながら陽が沈んで行くのを絵画を鑑賞するが如く無言で眺めていた。地表と空を繋ぐパープルとオレンジの微妙な色彩がこの世のものとは思えないぐらいドラマティックでついつい無言になってしまうようだ。
サーシャが、「お兄様、何度見てもここの夕焼けは素晴らしいですわね?私、今回のミッションではお兄様と二人きりになれたのでとても幸せを感じます。子供の頃はお会いすることすらも叶わなかったわけですから。私、あの頃からずっとお慕いしていたのですのよ。」
アンドレイが、「サーシャ、ありがとう!やっぱりなんだかんだ言って、君といる時が一番落ち着くね。体は失ってしまったけれど僕らの魂の繋がりは永遠のものだと思っているよ。」と返した。
髪型が二人ともブロンドのセンターパーティングなのも影響し、二人の雰囲気は兄妹とも愛し合っているカップルとも判断がつかないような絵を見せている。
「もうここに3週間ぐらいいるのかな?そろそろ日付がわからなくなってきたね。人間の体なら3週間はキツイと思うけど、僕らはどうってことないでしょ?色々なエネルギー源を確保できるのと厄介な排泄自体が省略できるのが便利だよね。ただ、もうこれ以上は情報的にも進展がないように思えるな。サーシャのサポーターの反体制派のメンバーは実際どのくらいいるのかな?」
そもそもサーシャは生前というか、サイボーグになる前からその姫的な美貌からサポーター軍団が存在していたのだ。それも若年層を中心に男女とも強烈なファン層であり、サイボーグになったこと自体はまだ隠蔽されてはいるのだが、サポーターには『皇帝の裏切りによるルージュ姫両親の抹殺 そしてその復讐を!』というストーリーが共通の認識になっていたのだった。まさにサポーターの男女にとっては、この不満だらけの帝国を変えることができる掛けがいのない救世主のお姫様として映っていた。
帝国内の内情としては、軍部は武力とプロパガンダを牛耳り、民衆に対しては警察国家と化している。その頂点に立つのがもちろん皇帝であるピョートル2世である。
しかしながら帝国領であるユーラシア大陸全土の統治には限界があり、サーシャが潜伏していたウラジオストクなどの辺境では管理がずさんになっている。そこでこのお姫様然としたサーシャは独自のチャンネルでファン層との繋がりを構築し、その構成要員は日に日に増殖し続けているという・・・
そのファン層を掴んでいる彼女の魅力とは何か?
持ち前の高貴な家柄と華奢な可愛い美貌はもちろんのこと、彼女の言葉により夢心地にさせ信じてしまう不思議なパワーと、なんとコスプレなのであった。この圧政下の帝国では反体制なプロパガンダや写真はNGなのであるが、アニメーションは検閲から漏れていたのだった。なぜかというと子供のものという判断基準により、社会に秘密裏に潜伏しそのアンダーグラウンドな環境で様々な物語のアニメキャラクターが生まれていった。彼らはオタクな特殊用語を使いコミュニケーションを取るため大人達はそれを理解することができなかったのだ。
そしてコスプレーヤーとしてその世界の頂点に立っているのがサーシャなのである。
嘘のような本当の話であるが、サーシャがイカしたコスプレをしてPVを作成し、そのショートムービーの中の物語にメーセージを隠すのである。
この世界でもインターネットで繋がるネット環境が存在し、それを通じてファンに配信されているのだ。別の言い方をすれば若者を動かすアイドル的な存在となっている。
サーシャは、「そうですね。私のファンの方々は日に日に増えていっているので正確には把握が難しいのですが・・・ロシアエリアの人口が約5千万人だと思うのですが、その中の少なくとも半数以上の3千万人はそうなのではないでしょうか? それもファンクラブのリーダーの方には、帝国側が入らないように精査して頂いての数になっています。」そしてそれに付け足すと、ユーラシアの他のエリアである中国・インドなどもすでにサーシャ姫に侵食されている勢いなのだ。
彼女の兄であるアンドレイは、あまりにも近くにいる妹のため、その妹の実力を今まで全く知らなかったのだ。
アンドレイが、「サーシャ!君はもの凄い人気者なんだね!今更ながら驚いたよ!そんな君のファン達もこれから僕らが描く世界の中に是非招待しようじゃないか! きっと彼らも喜ぶよ!」と驚きながらも提案してみると・・・
サーシャが、「お兄様がそう言われるのでしたら・・・でも実際何をすればいいのでしょうか?」と首を傾げた。
アンドレイが、無言で考えているようである。
しばらく無言が続いた。
サーシャは心配そうに兄を眺めている。
「わかった!!これは名案だと思うよ!」
「まず、最初に確認したいんだが、ファンにとっては君にお兄さんがいてもいいのかな?」
「それは、兄妹なので大丈夫だと思いますわ。」
「なるほど!じゃ、これから新しいキャラを加えて物語を作ってもイケるかな?」
「その物語にもよりますが、おそらく大丈夫かと。」
「これはどうかな?」と言って、アンドレイが思いついた仕掛けを説明し始めた。
「まず、僕とサーシャは皇帝を恨んで倒そうとする兄妹だ。そして仲間はツインズのソフィアとジュリアね。あの二人もアニメキャラとしてもキャラが立っていると思うんだよね。
そして、実際バンカーを攻略して皇帝を君がやっつけちゃう!という流れ。」
サーシャが、「それは私たちがこれからやろうとしていることと同じですが、それをアニメ風にして配信するという意味でしょうか?」
アンドレイが、「そうそう!さすがサーシャ、飲み込みが早いね!! 前段階で序編を作り
トレーラーを流してファン層に刷り込んで行って、いざ当日!予告なしでいきなり配信する。
そして、ミッションである皇帝を倒したら君はみんなに語りかける。今から皆さん、自由を勝ち取りましょう!という内容でね。君はそのアニメのヒロインになるだけでいいのだけど、君のファンなら動いてくれると思うんだよ。でも、実際国民が武装蜂起した時に武器がないと始まらないから、ソフィアに頼んで日本製の武器を密かにウラジオストクに輸入しておくとする。そして、それを君のファンクラブのリーダー達に全域に回るように秘密裏でさばいてもらう。多分オタク層が多いと思うから、『サーシャ姫の自由のための資金集め』という名目で軍資金は集められるんじゃないかな?てのはいかがかな?」
サーシャが、「お兄様!よくもそんな短時間でそんなことが思いつきますわね?」と逆に感心している。
「そして、これからの国づくりで君は広告塔となって国民を誘導する。そして今までになかった幸せの国づくりを始めるっていうストーリーはどおかな?」
サーシャは、「なんだか、よくわかりませんが、良さそうな気がしてきました。というか、なんか楽しそうな気がしてきましたわ!」と肯定的であった。
アンドレイが、「よーし! これはイケるよ! サーシャ!!」とガッツポーズが出た。
そして、この貴重な存在の妹を抱きしめていた。
サーシャが幸せ気分になったのは間違いないだろう。
アンドレイが腕を組みながら「これは一旦事前にソフィア達とミーティングが必要だな!!」 「連絡して明日迎えにきてもらおう!」
とは言ったが・・・再度アルタイ山脈を超えて元の場所に戻る必要がある。
明日からの移動で、三日後に迎えのスーパーソニックジェットを頼んだのであるが、
アンドレイはふと考えた『もしかたら、サーシャにとっては、このロシア内でファンクラブをコントロールした方がいいのでは?』と。
ということで、また離れ離れになることを嫌がる妹を説得した。
サーシャは、準備のためにここノボシビルスク市内にとどまることになった。
彼女は、そのXデーまでに、まずはファンクラブをさらに組織化し、アニメ序編を作成する。
そして、実際の戦闘風景を撮影するクルーをファンから募りドローンで遠隔コントロールをするのだが、実際のリアルな映像にフィルターをかけてアニメ化するデバイスがあるので、
それを経由してオンエアーしてもらうという編集チームを作るというのが目下のミッションとなった。
そして、アンドレイは、再度バイクでアルタイ山脈を抜けて、元の降機地に戻りスーパーソニックジェットに拾ってもらった。
日本の湯沢に戻ったアンドレイとソフィア・ジュリア姉妹の三人のミーティングである。
アンドレイは、今サーシャと進めている案件を細かく二人に話した。
驚いたのはソフィアであった。「えっ、あのサーシャがそんな力があったのね!!普通のお姫様かと思っていたわ!でも、すごく面白い案だと思うわ。その武装蜂起用の武器は属代表に打診するわね。支払いがあれば問題ないと思うけど問題は在庫よね。」
アンドレイが、「そうなんだよ。兄の僕も詳しくは知らなかったから無理もないね。でも、多分、本人はなんとなく恥ずかしくて表立っては言えなかったんじゃないのかな?」
そしてその場でジュリアが備わった超能力に関しても一応共有しておいた。
アンドレイが、「そのジュリアの魔法って、それも本当にアニメみたいで受けると思うよ!」と言ってただ大笑いした。
ジュリアも、真剣に修行して得られた超能力に対して、笑うとは!という少し怒った表情を見せたが、「まあ、私達アニメのキャラクターになれるって、滅多にないことだから面白いかもね!やるならド派手にやっちゃいましょう!」と驚く事に単純に乗ってきたのだった。
ジュリアのいいところは、あまりクヨクヨと考えない簡単明瞭な男ぽいところなのだ。
続けて、ジュリアがソフィアに頼んだ。
「そうそう、考えていたんだけど、やっぱりガリオンの戦力は重要になるし、今のアニメの話の中でも、彼が目立った方が面白いから、彼の新型スーツの背中の上にブラスターマシンガンを装着してもらいたいのよね。できるかしら? そうすれば一人の重戦士代わりになるから、いつものように私とペアで動けば、アンドレイとサーシャもペアで動けるわよ。そうすれば、ソフィアもスナイパーに専念できるでしょ?」
ソフィアが、「なるほど!そうね。ブレイン部分のコンピューターと連動させれば可能よね。私がやってみるわよ。」と言ってくれた。そうそもそものソフィアの専門はコンピューターなのだ。
という具合に、アンドレイが考案したこの『アニメ大作戦』が進んでいくことになった。