16:3つの遠征パート3 ーそれぞれの進展ー
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
実はこのシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズン1が終わった後に公表したいと思います。
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
では、ソフィアの交渉はどうなっているのであろうか?
また覗いてみよう。
彼らはすでにウォーターシティに到着していた。
そしてまずこの無骨な軍事要塞の天に聳える巨大さとソルジャー達の緊迫し張り詰めた空気に驚かされた。
まさにここは戦争のど真ん中なのだと実感した。
この要塞の司令室よりハドソン湾から北極海にかけて回遊している無数の潜水艦に向けて指令が出されている。帝国から絶えず発射されるロケット弾を迎撃しているのだ。
時たま、この要塞の巨大シリンダーのようなロケット発射口からも轟音と共に発射されるのだが、それはその潜水艦軍団が迎撃そびれたロケット弾をスウィープするためのものであった。
ソフィアは、ステンレス材で覆われた、アールデコの建築様式にも目を奪われていた。
『なんと 美しい建築物なんだろう!』と心の中で思った。
確かに無駄を削ぎ落としたミリタリーユースの用途を重視した構造と引き算のインテリアデザインなのだ。例えて言うならば、戦車やジェット機のような無駄を削ぎ落とした戦うためのデザインが格好いいと感じるのと同じ思いにあたる。
そして、3人は最上階のガラスルームの中にある司令室に案内された。
ソフィアはヨーロッパ連合のソルジャー2名にガードされた密使という見え方で、ここの市長兼司令官の紳士と向き合っている。
まずは、ソフィアから切り出した。
「今回は軍事的な提案があって参りました。私は日本に所属している世界平和を望んでいる者です。今回は帝国との戦時下にあるこのカナダエリアの戦況にお役に立ちたく、また帝国の息の根を止めたく伺いました。すでに統括市長にはご説明しておりますが、日本の代表と交渉し、日本製軍事兵器をベストプライスでご提供できることになりました。」という挨拶をしてから日本からの軍事兵器の明細を細かく説明し始めたのだった。
ソフィアの説明に険しい表情で耳を傾けていた司令官は、突然「君はこの前ここにきた女性と瓜二つだね?」とジュリアのことを思い出して言った。
ソフィアは、説明の途中であったが、「はいそうです。ジュリアを覚えてらっしゃるのですか?」
「もちろんだよ。彼女をアトランティス王に紹介したのだから。今彼女はどうしているのかな?」
「彼女は、今ごろ、再度アトランティスを訪れているかと思います。お陰様で王に気に入っていただいたようです。」と卒なく答えた。
「なるほど。彼女は神秘的であったから、多分アトランティスの王も気に入ってもらえると感じたんだよ。それはよかった!」と初めて笑顔が現れた。
「君は、あの彼女とは瓜二つだから双子なのだと察するが、内面が全く違うんだね。実に面白い双子だと感じるよ。君も君で聡明で気配りもあり、また違った魅力を感じるなー。」と言いながら腕を組んでいた。
そして、一拍おいて続けた。
「なるほど、君たち2人がいればこの戦況を変えられるような気がしてきたよ! 君からの提案はわかったから、軍事兵器明細を大佐と詰めてもらえると有り難いな。ただし、条件があるんだが・・・」
「はい、わかりました。有難うございます。その条件とはなんでしょうか?」
「君たち双子の姉妹にも、この戦争を終わらせるために協力を願いたいのだが・・・」
ソフィアは、今彼女らが準備し進めているバンカー攻略皇帝抹殺作戦は内密に進めようと思っていたのであるが、彼の提案を聞いて少し考えた。
『これはもしかしたら、このカナダエリアの連合軍と連動できるまたとないチャンスかもしれない!』と感じたのだ。
「司令官! 実は内密にお話があるのですが・・・」と言って、他の参謀を退出させた。
そして、ソフィアは、そのバンカー攻略皇帝抹殺作成の詳細を説明し始めたのであった。
司令は、ソフィアの話を面白そうな表情で聞き入っており時折相槌を打っている。
ソフィアの話を慎重に全て聞き終えた司令は、
「よくわかりました。あなた方と作戦を共にしましょう!私の大隊は、あなたの提案通りに
タリンをまず攻略しましょう。そして、敵の首都であるモスクワを落として見せましょう!」
ということで、ソフィアにとっては予想外の大進展があり、交渉としては願ってもいない最善の結果となったのだ。
そして司令は最後に付け加えた。
「私は、キーウ出身で長年帝国に踏みにじられている同胞の解放を目指していたのだ。帝国内は数々の民族が長年圧政を受けているのだよ。ごく一部の支配層である皇帝血族やその一派が一掃されれば、国内の民衆はそれに対して歓迎されても文句を言うものは皆無であろう。また、我々にとっても帝国内が新たなブルーオーシャンとなり、逆に経済復興的にも歓迎されるだろう。」
また、少し間をおいて、
「君たち姉妹には、一筋の光を感じたよ!これはお互いの命題として絶対にやり遂げようではないか!」と言って、握手を交わした。
と言うことでソフィアの交渉は大成功を収めたのだ。
そして司令からの提案もあり、ここの戦闘力及び兵士の戦意なども体感したいため、せっかくヨーロッパ連合のガルシア・イメルダもいるのだから交流も兼ねてしばらくこの軍事拠点に留まることにしたのだった。
アンドレイとサーシャのミッション
さて、では、アンドレイ達は・・・
軍事情報の入手にはかなり苦戦していた。
極東地区から移住してきた兄妹という設定で、ここの住民との触れ合いも兼ねて、世間話の中に探りを入れてはいるのだが、なかなかその類の情報は出てこなかった。
たまりかねた2人は1ヶ月ぐらいテント生活をできる装備と食材などを大きな登山リュックに詰め込んで、路線バスでそのバンカー付近に向かったのだった。
そして、まるでグリーンカーペットを敷いたような丘の上にある大木の下に風景写真家キャンパーのような見え方で大型テントを張ってキャンプを始めている。
雄大な大自然の中で山岳テントとタープを張って、まるでモバイルホームのように快適な設備の中、2人はキャンプ用のキャプテンチェアにゆったりと座りビノキュラスでバンカーを観察している。まるでバードウォッチングでもしているような見え方だ。
サーシャにとっては大好きな兄と四六時中一緒に居られるので、幸せいっぱいのミッションとなっていた。そして成り立ての恋人同士のようにウキウキ気分でもあるようだ。
まずは、金曜日の夕方に守備隊員入れ替えのジャイロが定期的にバンカー上部のポートに着陸することがわかった。5人規模での入れ替えなので、ある程度の駐在スタッフがいることもわかった。
バンカーはアルタイ山脈の終着点となる山裾の斜面が削られセットインされた形状でそこから地下に伸びている。その施設のグランドレベルはハッチが開いて兵器が出て来る設定のようだ。その上がポートとなり奥の壁面にエレベーターが見えている。それがこの要塞への唯一の侵入路となるようだ。問題は、こちらから見てその山裾がなだらかに広がる手前に自然の湖が広がっていることだ。まさに難攻難落の自然の要塞の構えとなっている。アンドレイは今となってはバトルモビールを水陸両用にしておいて良かったと思った。戦場となるここの地形図を様々な角度で撮影しメンバーの共有ホルダーにアップした。
こうやって2人はしばらくの間この地道な観察が続きそうだ。
ソフィア、カナダ軍との対面
あれからソフィア達はどうなったのだろうか?
初老の大佐と兵器明細の打ち合わせをした後、現場を指揮する少佐に誘導されてその夜は軍事施設内の下士官用のダイニングでの食事となった。
この少佐は女性でありマチルダというカナダ人だった。
全身カーキカラーの軍服に身を包んでいる。
歳ははやりソフィアと同じぐらいの20代後半に見える。
ルックスはと言えば、身長は170cm強ぐらいで軍人だけあって筋肉質だがフィットだ。
赤毛で肩ぐらいの髪の長さであるが後ろの低い位置で固く縛っているのが見える。
グリーンの瞳で色白そして化粧気は全くなく顔中にソバカスが目立っているが、顔自体は童顔で可愛い感じなのでソバカスが絶妙に似合い、顔と体格がアンバランスな不思議な印象に仕上がっている。化粧をすればさぞかし美人に仕上がるだろうという素体であった。
自己紹介が済むと、マチルダはいきなり、「あなたがジュリアさんのお姉様ですか?」といった。
ソフィアが、「そうです。なぜ、ジュリアをご存知なのですか?」と不思議に思って聞くと・・・
「実は以前、ジュリアさんがここを訪れた時に司令室にご案内したのです。多分ジュリアさんは私のことは全く覚えていないと思いますが。」と、答えてさらに続けた。
「私、ヨーロッパエリアの士官繋がりで、ジュリアさんがBAになった話を聞いていまして、一体どんな方なのだろうとズッと思っていたのです。私が案内した時は、ジュリアさんだとは知らなかったのですが、初めて会った時から、只者ではないオーラがあったのでどんな方なのだろうと不思議に思っていたのです。そしたら、後であの女性がジュリアさんだったと聞きまして、気付かずとても残念な思いをしたのです。」
すると、ソフィアが、「なるほど、あなたもジュリアのファンなのですね?」とまたもやかという表情で微笑んだ。
「実は、恥ずかしながらそうなのです!」と、顔を赤らめて軍人のように答えた。
「最初はあなたを見て、あっジュリアさんだ!と思ったのですが、見た目は同じなのですが、雰囲気が全く違っているので、もしかしたら、双子の方かな?と思ったのです。以前ジュリアさんにはそっくりな双子がいると聞いていたので。」と、まるでストーカーレベルの前知識がありソフィアも驚いていた。
「すいません!つい興奮してしまって。ジュリアさんは、私の憧れの存在なのです!」
それを聞いて、ソフィアが、「いえいえ、私の妹の大ファンの方にお会いできて嬉しい限りですよ。大佐からマチルダ少佐と戦略のミーティングをしてくれと言われているのですが、今回のミッションにはジュリアも加わっているので、彼女にも少佐のことを話しておきますね。」
マチルダが、「本当ですか? ジュリアさんもメンバーなのですか?有り難うございます!もの凄く嬉しいです!すいません!余計なことばかり喋って!では、早速、ここで軍の日替わりサパーを取りながらミーティングしましょう。」と言い、トレーを取りみんなをカンティーンに案内した。
そして、全員がテーブルについて、
ガルシアが、「ここの食事はうまそうだな。毎日こんな食事ができるのかな?カナダエリアは?」とマチルダに聞いた。
「そうですね。お陰様で!あなた方は連合のヨーロッパエリアの方々とお聞きしていますが、あちらはどんな状況なのですか?」
イメルダが、「私たちはスペインのレジスタンスで、ロンダにあるんだけど、ヨーロッパは基本的に地表が高熱で住めないから地下が拠点になっているのよ。こっちの方が全然裕福な暮らしができていると思うわ。」
「ここはまだ、地表で作物が取れますからね。それとそもそも人口自体もヨーロッパより少なかったので、もろもろと余裕があって食料も回ってくるのです。ただ、問題もあり軍役についてる人間も少ないのです。今は防御に徹しているので、帝国から飛んでくるロケットを撃ち落としていれば害がない状況ですがキリがないのも事実ですね。」
そして、マチルダはさらに続けた。
「あなた方のロシアに上陸し侵攻する提案の概要は聞いています。私が現地の司令となることになりましたので、より具体的に戦略レベルで打ち合わせしたいと思っています。」
と言う流れで食事をしながら4人でバンカー攻略も含めて詳しく情報を共有した。
マチルダが、「場所は違いますが、この作戦では、ジュリアさんと共に戦えることに戦意が上がります。ここではそう感じる者は多いと思いますよ。それと、あなた方のバトルアーマースーツはかっこいいですね!どこの仕様なのですか?」と尋ねた。
ソフィアが、「これは日本製のスーツで高性能なの!それにセクシーでしょ!あなた方下士官達にも配給されるようにここの司令に掛け合いましょうか?」と。
マチルダが、「それは有り難いです!こちらで支給されるスーツはあまり敵との交戦がないためクウォリティがイマイチなのです。希少な戦力ですしね。それと装備はブラスターマシンガンとレーザーライフルなどの銃器がメインで、いわゆる刃物は情けないのですがアーミーナイフのみなのです・・・せめてジュリアさんから開戦前に武術を指導していただければ戦況が有利になると思われるのですが・・・」
ソフィアが、「なるほど、ガルシアは長槍が得意で彼も指導できると思うけど、ジュリアが今やってるミッションが終わればここに来てもらいましょうか?」と提案してみた。
マチルダが、「えっ 本当ですか? いやー それは大騒ぎになりますよ!戦意も上がりますね! ジュリアさんは今どこに?」
「彼女は、今アトランティスに行ってるの。」と。
「アトランティスですか? 何用で?」
「彼女には色々と考えがあるみたいなの・・・じゃ折角なので接近戦であれば私も指導できるので、私達3人がまずジュリアが来る前にご指導しておきましょうか?」とソフィアが提案し、イメルダとガルシアの反応を見た。
イメルダが「いいわよ! 私の同じ軍の仲間なんだから少しでもお役に立てれば嬉しいわ!」
ということで、イメルダとガルシアも賛成しそのままここに留まることになったのであった。
アンドレイの悩み
そして彼女ら3人はそれぞれの得意技、ガルシアは長槍、イメルダはアックス、ソフィアは接近戦でのブラスターガンと短剣での戦い方を、マチルダ及びここの男女下士官に指導している間に、潜伏しているアンドレイから連絡が入った。
『全然バンカー要塞には動きがなくて、付近の軍事施設の状況がわからない』と困っている様子であった。
早速、それをマチルダに伝えた。すると、彼女は、「では、敵の様子が見られるように、総司令に頼んで、大陸弾道ミサイルを1発試しにバンカーの近くの第3の都市ノボシビルスクを狙って飛ばしてみたらどうか?という提案だった。その際にバンカーが狙われていると思われてガードが固くなるとまずいので、もう一箇所第2の都市サンクトペテルブルクにも飛ばしてみると、いずれにしてもこちらとしても敵の索敵と迎撃能力がわかって今後攻め込むときのデータが取れて良いのではということでもあった。
そして、その許可が降り、アンドレイ兄妹とリアルタイムで交信しながらロケットを2発発射した。今まで帝国からのロケットの迎撃専門であったカナダ支部としては、なんと初の先制攻撃となる。
発射後、ノボシビルスクへの到着シミュレーション時刻をアンドレイに告げて、『果たして、ここのバンカーからはその迎撃ロケットが発射されるのか?』と言うシンプルな命題の観察を行うことになった。
サンクトペテルブルク攻撃用ロケットはやはり予想どおり、港湾から発射された迎撃レーザーで打ち落とされてしまったが、ノボシビルスク攻撃用ロケットの弾道高度は約1000kmにもなるためその迎撃レーザーでは対処できなかった。
そう言った場合は、バンカー付近から迎撃がされるのでは?と言う仮説である。
そして、その一連のシミュレーションは当たった。
バンカーがマウントされている山脈の頂上の1部分がいきなり両端に割れて、そのポッカリと開いた開閉部から5機のレーザーキャノンがゆっくりと浮上してきた。浮上するや否や真ん中のレーザーが稼働し照準を定める間合いがありレーザー砲を放ったのだ。これはいうまでもなくロケットに命中したのであった。
よって予想通りアンドレイ達は5機のレーザーキャノンの場所を特定できたのだ。
もしかしたら、他にもある可能性は無きにしも非ずなので、とりあえずこれは重要情報とし現地視察も含め更に観察を継続していくことになった。