14:3つの遠征パート1 ーそれぞれの思いー
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
実はこのシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズン1が終わった後に公表したいと思います。
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
早速アンドレイとサーシャはバイクのイグニションを点火した。アンドレイはアクセルを回してエンジンの調子を確認してから、ヘルメットを被りゴーグルを開けた。
「じゃ、行ってくるよ!定期的に連絡は入れるから、連絡がない場合はこの場所に迎えに来てくれよな!」
サーシャも準備してバイクに跨った。
「お兄様、準備できました。いつでも行けますわよ。」
ソフィアが、「とにかく無理しないでね!まず2人が無事でいてくれるのが一番よ。本当に気をつけてね!」と言い、全員で手を振って見送った。
2人ともエンジンをブンブン回して、ジェットの下にスラントして開いたカーゴハッチを勢いよく降りていった。そして手を振りながら高原を走り視界から消えていった。
2人を見送ったスーパーソニックジェットは、次の目的地カナダに向かった。
ここから再度日本海に戻るのであるが、また入念に索敵レーダーに引っかからないように
低空飛行で抜けていった。そして高度を上げてサハリン上空を飛び、千島列島も過ぎて太平洋上空にあっという間に達していた。
そのまま高度を保ち、アラスカ上空を通過し、ロッキー山脈を超えてからカナダ領空に入っていった。もう安全地帯である。
そしてエドモントン空軍基地と連絡を取り、あっという間に軍空港に着陸した。
ソフィア達の交渉の旅
ここでは、ソフィアとイメルダ、ガルシアチームが出発する。
すでに3人はイメルダのホバージェットに乗り込みジェットファンを回していたが、
ジュリアに挨拶をしてから降機した。まずはここエドモントンの統括市長への挨拶から始まるようだ。
そして、ジェットはまた浮上しあっという間にアリューシャン列島が見えてきた。
暫く飛ぶと、あの思い出のドーナッツ島が前方に微かに見えてきたのだった。
ジュリアが、急いで機内のインターフォンでアキラに繋いだ。
「アキラ、この辺りでいいわ。下ろしてくれる?」
そして高度を下げてから、両翼の先端1/3を上に畳みファンを回して垂直に海上に着水した。まるで水上艇のような見え方になっている。実はジェットボートにもなるのであった。
ジュリアの瞑想の旅
早速、ジュリアは、久々にホバージェットに乗り込みカードハッチを降りて海上に出ていった。
着水して大きなうねりの中でホバージェットが安定するとハッチドアを開けてデッキに出た。見渡す限りの大海原。気付くとすでにスーパーソニックジェットは飛びたっていた。
前回もこの大海原でヒデと2人で仲良く海の藻屑となっていたことを思い出したようだ。
『懐かしいな・・・あの時は2人で楽しい旅だったな・・・』と、
この心細い今の心境と比較して、その時を懐かしく思い出していたのだ。
『そうだ、あのドーナッツ型の島 私達がマーメイドアイランドと名付けた島は、多分ここから10kmぐらい先にあるんだろう。まあ、あの時には時間は巻き戻せないのだから、ガリオンと一緒にまたあの島に寄ってみよう。』と思い久々に愛機のステアリングを握った。
ジェットから島が見えた方角へジュリアはホバージェットを飛ばして行った。
そうそう、前回は海賊船のレーザー攻撃でモーターの電気回路がショートしたのであった。すでにその修理を終わっており愛機は全て順調なようである。
暫く進むと予定通り島影が見えてきた。
『他のみんなのミッションは私のより日にちがかかるだろうから、私はこの思い出のマーメイドアイランドで今日は泊まってリフレッシュしようかな。』と思っていたのだ。
島のドーナツの海に沈んだ部分がこの島の入り口にあたるのだが、前回と同じそのままである。ジュリアはそこを通って島の中に静かに入っていった。
この小さい無人島は上空から見るとまるでドーナッツのような形でその一部が海に沈んでいるため、そこの部分から島の中に入ることができるのだ。そして内部はまるで夢のような真っ白いビーチが広がっている。そしてドーナッツ部分は熱帯の木々や草花が覆い茂っているトロピカルアイランドなのだ。
ジュリアはまた今回も前回と同じ白い砂浜にホバージェットを停めた。
そして1人ではあるが、あたかもヒデと一緒に寛いでいるかの如く、オーニングを広げて、その下にハンモックを吊るした。そこは今夜のベッドである。
それから念の為にガリオンを起こし索敵モードにして水着に着替えた。
今回の水着も前回と同じコバルトブルーのワンピースだ。
ジュリアの透き通るような白い肌にプラチナブロンドのショートボブヘアーそしてこのコバルトブルーの水着は、この島にベストマッチでマーメイドのような彼女を迎えて常夏の白い砂浜が息を吹き返し生き生きと見えている。
彼女は白いビーチから海に入り、ドーナッツ部分の真ん中あたりまで潜っていった。
海中は今日も色とりどりの熱帯魚が泳いでいる。
そこに立つと肩から上が出る深さなのだ。
ジュリアは、ビーチのホワイト、熱帯の木々のフレッシュなグリーンそして常夏の空のブルーのコントラストをボーッと眺めていた。
『とても懐かしいかんじ・・・』
『この水のあたたかさ まだ記憶にあるわ。』
そして全身の力を抜いてゆっくりと水の上に浮いた。
雲一つない真っ青な空
ドーナッツの森に囲まれているので海風がそよ風に変わる
そしてそのそよ風が顔を撫でる
『このひととき 幸せ』
『ヒデがいればもっと・・・』
ジュリアにとっては大切な思い出
なかなか忘れることはできないのだ。
そしてその思い出の中に入っていった。
彼女は暫く海の上に浮いていた。
余りの気持ち良さで記憶の彼方に入り込んで
暫くそのまま浮いて寝てしまったようだ。
一瞬風が吹いて小さな波が彼女の顔を掠めて
ふと現実の世界に戻った。
『あっ 寝てしまったんだ・・・』
ビーチまで泳いで戻った。
そこには椰子の実が1つ流れ着いていた。
『そうだ、これもヒデと飲んだんだわ。』
その時はヒデが穴を開けてストローを差してくれたのだが、
今回は彼女がそれをしてハンモックに寝転んで前回のように飲んでみた。
海からのそよ風が本当に気持ちいい。
ビーチのホワイトとその先のドーナツの真ん中のコバルトブルーそして大西洋のマリンブルー、その先のスカイブルーと繋がるグラデーションを無意識に眺めていた。
そうジュリアは、こうして無心で自然とシンクロしている時間が一番好きなのだ。
そう言う価値観がヒデと気が合う一番の理由なんだなと今更ながら再確認していた。
そして折角の機会だから、今日は存分にヒデの記憶と向かい会おうと決めた。
ヨガが趣味のジュリアは、ハンモックに揺られながらメディテーションに入って行った。
彼女がこういった時間を過ごしている中、
続ソフィア達の交渉の旅
ソフィアとイメルダ・ガルシア達は、カナダエリアの予算を統括するエドモントンの統括市長に挨拶をして目的の軍備増強案の詳細を説明した。日本からの軍事兵器の商談もまとめる事に成功しとりあえず目的のハドソンベイにあるウォーターシティーの市長を紹介してもらえることになった。さすが、ジュリア!思わく通りに進んでおり、そしてハドソンベイに向かっている最中であった。
ジュリアからの説明があったように、廃線のレールのゲージにホバージェットの内蔵タイヤを合わせてまるで電車のように走っているところだ。とりあえずこれでウィニペグあたりまでは行ける。そこからは、川に沿って下降していくとハドソンベイに着くはずだ。
本来はそこから海に入って海の要塞ウォーターシティに行くのであるが、夜間になってしまい潜水艦から誤射されてもつまらないためと言う口実を作って、河口付近にある都市チャーチルに今夜は泊まることにした。
なぜならば、以前ジュリアも会ったことがあるガルシアのカナダエリアのミリタリー友達が、今はチャーチルに駐屯して出番を待っているからであった。
今夜はソフィアの諜報活動という名目で久々にガルシア達が盛り上がる呑み会が行われることになった。
続アンドレイとサーシャのバイク旅
アンドレイ兄妹はというと、彼らとは真逆の自然との対話の中で、
アルタイ山脈の山岳路をバイク2台で超えていた。
季節はすでに秋に入っているため、この辺りも紅葉をしている。
紅葉というよりはまさに黄金色に染まり始めているのだ。
遠くに聳える白い雪を被った山脈と真っ青な湖が、ますますそのコントラストを強めている。
途中モンゴル遊牧民族がちらほらと見える。
と、思ったが、この辺りは少し民族が違うようだ。
ウルギー・カザフ民族らしい。
住居もゲルではなくウイというらしく、似てると言えば似てるのだが、内部は装飾が煌びやかで美しい。服装もモンゴルと比較すると華美であり、鷹匠がちらほらと見受けられた。
そんなまるで異世界のような景観の中、広大な高原を2人はバイクで疾走している。
高原の先は地平線となり遠くの雄大な山脈に繋がっているようだ。
アルタイ山脈の西側を山脈と平行に移動しフィティン峰の麓に到着する予定なのだ。そしてさらに北に聳えるタバン・ボグド山群を抜けるとロシア領に入るといったルートだ。
ただ1日ではフィティン峰までは辿り着けなさそうなため途中どこかで野宿となった。
2人はウルギー・カザフ族のウイが点在する平原で今夜は野宿をすることにした。
人々が付近に生活していると安心して寝られそうだからだ。
バイクを停め、日が暮れる前に2人用の山岳テントを張った。耐水圧は3000mm
でポールはジュラルミンでできているためとても軽くて強靭なものだ。
やはり野営地を集落近くにして正解だ。もっとも重要な水場が近くにあったからだ。
サーシャが湧水の場所まで水を汲みに行き、アンドレイは、今日は時間がないので持ってきた人工肉をホワイトガソリンのワンバーナーで焼き、味付けしてパンに挟んだ夕食を用意していた。
そしてサーシャが汲んだ天然水を使いパーコレーターでコーヒーを沸かした。
2人は夕暮れ時の日が沈むまでのゴールデンタイムを食事をしながら鑑賞している。
「お兄様、ここの大自然の風景は今まで私達が見たこともないような美しさですね。」
とアンドレイの隣に寄り添った。
「そうだね、僕は森でサバイバルしていたから、自然の美しさは体験しているつもりだったけど、この高原と山脈の大地の大きさは、実際ここに来てみないとわからないパースペクティブの広がりだね。本当に感激するね! ここに住んでいる彼らは、毎日それを堪能できるわけで、生活自体は大変なんだろうけど、ある意味それがあれば何もいらないって心境になれるのかもね。僕はそういった心境になれるのは羨ましいと思うよ。」
「それに、この夕焼けは言葉を失いますわね!こうやって無事お兄様と一緒に眺めることができて、サーシャは幸せです。私達を焼いたあの恐ろしい火事の記憶をこの夕焼けで塗り替えたい気持ちです。」と言いながら涙が溢れてきていた。
「そうだね、あの苦しい記憶は封印したいね。今からこの夕焼けのオレンジに僕たちの記憶を塗り替えよう。そして僕たちはせっかく新しい体に生まれ変わったんだから、僕らの仇、両親の仇でもあるあの忌まわしきピョートル2世には必ず死を持って償わせよう!」と言っていつも冷静なアンドレイが興奮しながら拳をにぎっていた。
そして2人は抱き合いながら、この夕焼けをバックに『たとえ命にかえても皇帝を抹殺し帝国を解放するぞ!』と誓いを立てたのであった。
そして、夜が更けると異常気象の関係もあり、ピンク色のオーロラの帷が降りてきていた。