3: ベネチアに着いて
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
このエピソードからはSeason4ー余燼よじんが燻る編ーのスタートです。
実はシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズンが終わった後に公表したいと思います。(文芸:ヒューマンドラマにて)
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
エッセイもその他カテゴリーのエッセイにて投稿中です!
短編集もやっています!!
スピンオフ『JOE TEMPEST』も宜しくお願いいたします!!
そのような会話を続けながら、約10時間走り続けて朝にはリベルタ橋を渡りベネチア本島のローマ広場に駐車した。
「お疲れ!!あんた夜通し走って疲れたでしょ??」
「そうですね。かなりきましたね。ここからは車が入れませんので、歩きで30分ぐらい行くとサン・マルコ広場に出ます。今日はその近くのホテルに泊まりますので。」
「わかったわ!ありがとうね!!」
疲れた足取りで、ダニエルは3人をホテル・ドナパレスまで案内し親戚の家に泊まると言って街中に消えていった。
3人がチェックインするとホテルのスタッフが部屋へと案内した。
「確か、ダニエルがここの習慣とかでチップをやるとか言ってたわね!?」と言いながらイザベラがチップを渡した。
すると「ありがとうございます!ここは場所がいいところで、そこの窓から名物の運河が見えますよ。今日はどちらに行かれますか?」と聞いてきた。「まあ、人気の名所としては、このホテル前のサン・マルコ広場の先にサン・マルコ寺院があります。ビザンチン建築の代表作で2階からの眺めは必見ですね。そして、今は美術館になっていますがドゥカーレ宮殿もあります。でもやっぱり、ここに来られたら、折角なのでゴンドラに乗って頂きカナル・グランデから水の都と言われる風景を堪能していただくのが良いかと思います。リアルト橋、スカルツィ橋、アッカデーミア橋、ローマ広場歩道橋の4つの橋がかかっていまして、そのどれもが人気の撮影スポットになっているほどなのです。」と3人の反応がないため簡単に見どころを説明してくれた。
「あら、有難うございます! 今日はそのようにしてみますわ!」とシノが代表して答えた。
「とりあえず、明日7時から情報収集に動くとして・・・今日はそうしてみる??」とイザベラが他2人の反応を見ると、
「そうね、でも、まずは眠いから寝てから午後から動きましょう!」ということになり、イザベラ、ルイーズはダブルベッドに、シノは追加のシングルベッドでぐっすり寝てしまった。
念のためにシノがセットしたアラームで3人は起きた。
すでに昼を回っており、3人は目をこすりながら窓から運河を眺めてみると何艘かのゴンドラが観光客を乗せて狭い運河を賑やかに行き交っているのが見えた。
「じゃー取り敢えず、ランチにしましょうか? シノここのお金あるわよね?」
「あるわよ。ダニエルにもらったから大丈夫よ。」
「しかし、ポイントじゃない実物のお金っていうのが不便よね〜 なんか使い古されて汚いしね。」
3人はホテルの部屋を出て広々としたサン・マルコ広場を歩きベネチア最古のカフェと言われる『カフェ・フローリアン』に入っていった。というより店の前にある回廊の席に座り広場を眺めているところだ。眩いばかりの黄金に輝くロココ調の店内からはピアノとバイオリンの調べが聴こえて来ている。そこに白ジャケットをきちんと着込んだウェイターがオーダーを取りに来たのだった。そして彼からカフェラテの発祥の地であるとの説明を受け、3人はカフェラテと彼女らがイメージつきやすいクラブサンドをオーダーした。
「しかし、このカフェ凄い歴史があるのね!店内の絵画とか音楽とか、私たちの世界では見かけないものね。」とイザベラが珍しくカルチャー的なことを言っている。
「そうね、やっぱりそこなんじゃない??」とシノが反応した。
「そことは?」
「そういうカルチャーっていうものなのかしら?歴史と言ったらいいのかしら?はたまたこわだりと言ったらいいのか? 私たちの世界にはあまりそういった趣味趣向を表す概念や表現がないんじゃないのかしら?」
「確かにそうよね。だからシンプルな世界になっているのかしら?」
「そもそも私らの世界じゃそう言ったものに価値はつかないしね。」
「多分、核戦争でそれまでの世界が消失してから、こういうカルチャーがなくなったんじゃない!?」
「うーん、奥が深い会話ね・・・」とルイーズが食べるに夢中で小声で言っている。
「あなたはやっぱり食い気? それよりも!これからどうする??」
「あっ、ごめん!あんまりこのサンドイッチとカフェラテが美味しくて!」とルイーズが言い訳した。
「でも、やっぱり、このベネチアって凄いところよね!だから、あの人がお勧めしていたカナル・グランデに行ってゴンドラにでも乗ってみましょうよ!」とシノが提案すると、2人もそのつもりだったようだ。
そして、3人はお勧め通りサンマルコ寺院から広場を眺めてから街中に歩いていった。
「しっかし、ここは全て路地って感じなのね!路地裏の文化ね。」とルイーズが興奮している。
「私この路地裏って好きかも! なんかワクワクしない?あれとか、オレンジやイエロー、サーモンピンクとか色とりどりで、なんかハッピーな気分になるわね!?」とイザベラも運河沿いの古い建物を指差しながら興奮気味で歩いている。細い路地は住民や観光客などの通行人で賑わっているのだ。
「この世界は絶えず戦争をしているとか言ってる割には、ここは至って平和よね!ここに居たら戦争があるなんて気が全くしないわね。」
「それはそのミュータントの居城だからじゃないかしら?」
「そういうことかな?しかし、一体どうやって探せばいいのやら・・・」
「今思ったんだけど、ここは海上都市でしょう!? 私達のオフショア・シティみたいな。」とシノが言うと、
「確かにそうよね! 雰囲気は全く違うけど。」
「ということは、一応ドイツ帝国に含まれてはいるけれども、自治権を持った都市国家ということなのかしらね?」
「そういえば、ダニエルがタックスヘイブンとかで企業に税金がかからないとか言ってたわね。そういうお金周りもこの世界は複雑ですね。」
「なるほど・・・」
「なんか、お金ってものが、世の中を複雑にしてるんじゃないのかな!?」
「と言うより、ここの人間は欲が深いってこと!?」とルイーズが的をついた事を言った。
「私らの世界はモノよりもコトというのか、うまくいえないんだけど物質よりも精神のほうが重視されているっていうのか・・・」
「うーん、その表現わかるわ!あと圧倒的に人間の数が少ないってことも影響しているんじゃないかしら?」と路地の人混みを見ながらシノが言うと、
「なんとなくわかったわ。要は、人が少ないから、競争がない、よって欲があまり出ない!って事じゃない??」
「そうね、私らの世界は競争がないから、人々はのんびり自分を大切にしながら生活しているっていう事なのかしら?」
「この世界は物が溢れ返っているから、そんなのを見て育つとある意味洗脳されて自然と欲がつくんじゃないの!?」とルイーズもそれなりに理解しているようだ。
という3人のそぞろ歩きの会話の結果は、『この世界の根源は”欲”』ということにまとまったようだ。そして、遂にアカデミア橋の上に立ってカナル・グランデの風景を眺めていた。
「凄い眺めね!! 天気がいいから綺麗ね〜 ゴンドラも多いし。」
「でも、やっぱり私はここって何故かワクワクするわ!何が出てくるかわからないみたいな。男との出会いも多そうな。」とルイーズがニンマリと言っている。
「路地裏文化よね〜 それって深そうね。うちらの世界には路地裏ってないもんね。」とイザベラも納得しているようだ。
「なんだか、ここってアミューズメントパークみたいな感じですね!」
「シノ!いいこと言うわね!そう!刺激が多いってことは欲も出るのよ!!きっと!」
「なるほどー」と刺激=欲という方程式にまたもや3人の意見もまとまったのであった。
彼女らは路地裏を冒険しながらホテルに戻ると、ロビーではダニエルが新聞を読みながら待っていた。
「やあ、ダニエル!まった? ごめん、ごめん!」
「大丈夫ですよ。観光してたんですか?」
「そうそう、このホテルのおじ様に勧められた通りに行ってみたわよ。」
「で、わかったことは一体どうやってヤツを探すのか??」ってことだけどねと言いながら3人で笑った。
「それが、ですね、僕の方でも聞き込みをしたんですが、ちょっと話したいことがあるんです。部屋に行けますか?」
「あら、乙女の部屋を覗きたいわけ? エッチね!でもダニエルだったらいいわよ!」とルイーズがふざけて言うと、「いえいえ」と言いながら顔を赤らめていた。




