23:通商ルート問題
この物語は双子姉妹(Blanc Twins)の冒険談を『夢とは?』いうテーマで描いたパラレルワールドでの物語です。彼女達にぼんやりと見える『夢』を無意識に追いかけて行くとそこに『幸せ』が見つかるのか?を綴っていきたいと思います。
このエピソードからはSeason3ー余燼が燻る編ーのスタートです。
実はシーズン1の前にプロローグ的な『成り行き』の詳しいお話があるのですが・・・それはこのシーズンが終わった後に公表したいと思います。(文芸:ヒューマンドラマにて)
そしてこの双子は稀に見るとびっきりの美人姉妹なのです!まるで光と陰。ロボットや兵器類も言葉では7割しか描けませんがカッコいいはずです。荒廃したパラレルワールドでの彼女たちの活躍とクールな兵器類をイメージしながら、世界地図を片手に読んでいただけると楽しめると思います。これって現実なの?それともSF?と言う狭間で大人も楽しめるギリギリのラインでどんどん進めていこうと思います。
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ソフィアからこの話を聞いた担当のジュリアとしては『どうすれば一番効率がいいのか?』を考えていた。
そして、スロバキアからマルクが単身急いでホバージェットでこちらに向かっているとのことである。もちろんスロバキアがメインの案件ではあるが、このオフショア・シティの収益にも深く関連することのようだ。そもそもスロバキア・ギルドからのクエストのため、取り急ぎクルーセイド・フォーチューンで受けるのだが・・・籠城しているということはあまり時間の余裕もないわけであるから、つまり先遣隊が行って状況を把握する必要がある。とは言っても、ここで彼女以外に対応できるパーティーメンバーはリンダとハナだけである。
ジュリアが久々に直属の部下であるリンダを呼び事情を説明した。
「とりあえず、私が先遣隊として先に現場に行ってみるから、あなたは、マルクが到着したら一緒にきてほしいの。」
「ジュリア、わかったわ!でも、1人で大丈?」とリンダが言ったのだが、言った意味が意図とは違うと思い言い直した。
「一人で寂しくない?ってことよ!」
「心配してくれて有難う!でも、私1人は慣れているから大丈夫よ。それよりも、マルクと仲良くやってね!」とニコッと笑った。
実は、リンダは王子であるマルクに密かに強い憧れを感じているのだ。『えっ、王子様と2人の空間で過ごせるわけ!?」と、この振って沸いたようなラッキーな申し出に実は内心パニクっている状態なのだ。それをもしかしたら鋭いジュリアには勘付かれてしまったのだろうか?という少しの動揺も含まれている。
「わかりました!大丈夫よ!」とその場をさらっと流すことにした。
さてマルクにリンダをセッティングしたジュリアはこれからどうするのだろうか?
色々と作戦をシミュレーションしていたのであるが、なんと、彼女はいわゆる普通の山賊相手であるにも関わらずアルティメイトウェポンのEBSを選んだのだった。そう、未来型EBSは今まではジュリア機単騎で戦地に出征したことはなかったので、言ってみれば初の試みになる。
彼女は敵地の現状が全く掴めていない中、効率的なアプローチを模索していたのであったが、アルティメイトウェポンを選んだのはいかなる理由なのであろうか? それは・・・装備にフライングエンジェルがあるため目的地まで飛行が可能であり陸路で山脈を越える必要がなくなる。もしかしたらこの要因が一番大きいのだろうか? 武器類はお決まりロングソード2本に今回は珍しくパワードブラスターマシンガンを右肩から射撃できるように装着し背中に回して格納した。そしてEBSボディ背面の格納庫にガリオンも格納し早速飛び立っていったのだ。
一方マルク達がホバージェットで通るであろうモロッコの陸路は、スパインからジブラルタルを経由しアフリカ大陸に渡った後、海に沿ってタンジェ、ラバト、カサブランカと行き、そこから砂漠に入りマラケシュに着く。そしてマラケシュからは山賊が出るという山脈の峠道となるのだ。オート・アトラス山脈とアンチ・アトラス山脈に挟まれたヘアピンカーブが連なる峠道を抜けて目的地であるワルザザートに到着するルートなのだ。ホバージェットは水陸両用で大変便利なヴィークルであるのだが、ボディーが陸地から浮いている分峠道が大の苦手なのだ。補助用の車輪を下ろしての走行となる。それをEBSを使えば文字通り一っ飛びで行けるわけだ。
ジュリア機は急がず時速800kmぐらいで飛行中である。まあ輸送機並みのスピードなので約2時間で到着予定だ。モーターグライダーでの気楽な空の旅とは打って変わって、速くて重いメカニカルな雰囲気のコックピットの中で逆に安全性と優位性を感じていた。『まあ、たまにこんなんで空の旅も悪くないかな!?』と思っているところだ。
EBSの頭部の感覚機関と連動しているメルメット内部のゴーグルに眼下の景色が映し出されている。ちょうどアトラス山脈を越えているところだ。またその先の広大なサハラ砂漠の中に緑のオアシスが点在しているのも見えた。そして砂漠が広がる手前にワルザザートの街も見えてきた。ということはその手前に例のカズバがあることになる、『あっ あった!あれか!?』 ゴーグルのマップと照合してみるとぴったり合った。堅牢な城壁に360度囲まれたカスバの正門前に山賊と思われる軍団が武装軽車両を30台ぐらい固めて正門ゲートを塞いでいる状況が確認できた。人間は60ー80人ぐらいいるであろうか? 城壁にはブラスターマシンガンが幾つか装備されているが奴らはその射程圏外にいるようだ。やっと彼女なりに状況が把握できたため降下することにした。
「ギーーーーン!! バッタン!! ゴゴゴゴゴーー」と重いEBSが、空からゆっくりと背中のロケットを噴射しながら正門前に山賊方向に向いて着陸した。
すでに城門のガードには連絡を入れてあったため、味方がやっと来てくれた!という反応である。
逆に山賊達は、『いったい何がきたのか??』と混乱状態である。そして一斉に銃器を構えて見守っているようだ。
「こちらは周辺警備隊だ。お前らのリーダーと話したい。」とEBSから外に向けてアナウンスがあった。このアナウンスはジュリアの声にボコーダーが加わり男性のようなロボットのような声に変換されているため中の操縦士が女性であるとは全くわからない設定になっている。
すると慌てふためいている山賊の中から、体格の良い武装した男性が出てきた。
「俺がリーダーだ。お前は一体誰なんだ?」と言ってきた。
「通商路をガードする警備隊だ。ここから緊急支援連絡が入り到着した。お前らの要求はなんだ?一応聞いてみよう。」
「俺らの要求を聞いてくれるのか? 優しいじゃねえか!! 俺らはサハラ砂漠のオアシスから来た旅団だ。住んでいたオアシスが枯れて住めなくなったんだ。だから住めるところを探して移動中なんだが、ここのカスバは金持ってそうだから、住む場所の提供をお願いしただけなんだ・・・」
「では、お前らは最近出没している山賊連中ではないのか? 商隊がいくつも略奪されて被害にあっているのだが。」
「はあ、そんなの知らねえ。俺らはやっとの思いでサハラからここに到着したばかりだ!」と男はそう言った山賊ではないと否定している。
『確かに男だけではなく女子供もいるようだ。ファミリーの集まりなんだろう。この男の話も嘘には聞こえない。』
「わかった、これから下に降りるから、お前と1対1で話し合おう!大丈夫か?」
「よし、わかった!降りてこいよ。」
リーダーを先頭に腕っぷしが強そうな頑強な男連中20人が彼の後ろで腕を組んで見守っている。
「わかった、まずペットを降ろすがちょっかい出すなよ!お前らすぐにやられるぞ。」と言って、ジュリアは、まずガリオンを格納庫から下に降ろした。背中の格納ハッチが開き、ガリオンが飛び降りてEBSの前に立った。
連中は「なんだ、こいつは?」と言いながら後退りしている。
そして、ガリオンは得意の咆哮を腹の底から噴出した。
「グワワワーウォー!!」 連中はビビっているようだ。
そして次にEBSの胸部ハッチが開いてブラックバトルアーマーに覆われたジュリアが姿を現した。ハッチに立って連中の様子を見回している。
連中は、このスタイリッシュで頑強そうなアーマーに隠された人間は一体どんな奴なんだどう?という点に興味が集中しているようだ。
そして、ジュリアはワイヤーに捕まって地上に降りた。