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魔女の劇団  作者: 倉敷純次
プロローグ
1/72

マディオス大陸

 かつてマディオス大陸では、西に(へだ)たるデリスランド、東に隔たるチルディールの二大大国が、約1000年にもわたる戦争を繰り広げていた。

 両国の国境線付近では、常に互いの兵士が昼夜に別なく剣や弓を放っていた。

 国の発展繁栄をそっちのけにしたこの長きにわたる戦いにより、家も畑も焼けただれた両国は物理的に疲弊(ひへい)していった。

 果てしがつかぬ戦――。もはや戦いの目的は両国の(おさ)ですら見失っていた。


 その立ち込めた暗雲(あんうん)に光の矢を放ったのは、不思議な力を使うある種族であった。


 突如として現れたその種族は、自分たちを『アダルアの(たみ)』と名乗った。

 アダルアの民は、火、水、風、といった自然を操る術を成す。

 血で血を洗う暗黒の時代に、魔法を使う謎の種族が忽然(こつぜん)として現れたのだ。


 アダルアは、デリスランド、チルディール両国に有無を言わさず、マディオス大陸の中心、つまり両国の国境線にのさばり国を作った。

 小さな円を描くようなアダルア王国は、デリスランド、チルディール、二大大国の境界線すべてを補うようなものではない。しかし、両国はアダルアの民がもちいる不思議な術に恐れを成し、戦場となっていた国境付近に近寄ることができなくなった。

 結果的に緩衝地帯(かんしょうちたい)となったアダルアのお陰で1000年にも渡る戦いは休戦となった。


 戦に嫌気がさしていた民の顔に、マディオスの空に、10世紀ぶりの光が差した。


 しかし、デリスランド、チルディール両国は、それから100年の歳月を要し、魔法を上回る兵器の開発を虎視眈々(こしたんたん)と進めた。

 発展した科学が新しい兵器となると、両国の長は調子づいた。そして再び、暗澹(あんたん)たる道へ進路をとらせた。


 第二次マディオス大戦の始まりである。


 鉄砲、毒ガス、爆弾といった最新兵器がマディオス大陸全体を縦横無尽じゅうおうむじんに飛び交った。

 国境線で剣を振り回していたあの頃とは違い、アダルアの魔法はもはや役には立たなかった。デリスランド、チルディール両国にとって、魔法など恐るるに足りぬ芸当と化してしまっていたのだ。

 よって、かつての緩衝地帯も、自国の存続を死守するのが精一杯だった。


 その後、第二次マディオス大戦は10年の月日を経て休戦を迎えた。

 それが、今から約20年前の出来事である。


 しかし、なぜそのような不思議な力がアダルアの種族に宿されているのかは、100年経った今でも解明されていない。一節には自らを神の子と自称するアダルアの民は、海、川、山、空、といった万物ばんぶつの神と交流があるのだという。


 ……だが、真意のほどは未だ分からない。


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