表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

運命の人とはジャッジしない

作者: 鈴木美脳

 恋は、運命の人とすべきものであって、運命の人とは、心を見てくれる人であって、心以外でジャッジする人ではない。

 だから、運命の人と恋をするには、心以外でジャッジするのではなく、心を見たほうがいい。


 そのように、心にこそ価値や実体を見る人達は、自分自身もまた心で定義していて、本物の自我がある。

 逆に言うと、ほとんどの人達には、本当は自我がない。


 人が人と出会うとき、無意識にジャッジする。

 外見の等級、経済力の等級。

 履歴書を見れば、学んできた学校の等級、担ってきた職務の等級。

 何らかの枠組みで、何らかの常識で人を測り、多くの人は満足している。


 そしてそのジャッジは、この世界で生きていくために合理的だ。

 人間の社会には秩序があり、秩序は力関係によって形成されている。

 秩序に背けば排除され淘汰されるから、与えられた価値観で他者を測ることは合理的だ。

 しかしそれは、保身で派閥を選ぶことと変わらないし、だから人間はみな、無意識な権威主義者だ。


 人間は、権威主義という常識によって画一的に整頓されていく。

 したがって、権威主義は利己主義であり、与えられた価値観で生きる人達には自我がない。

 川辺に小石が転がっているように、肉体はあっても肉体の中には自我はない。


 自我のない人達は、他者を本当には愛していないし、自分自身を本当には愛していない。

 ただ、肉体への苦痛や本能への不満を避ける存在であって、主観的な感覚を客観的な常識の下に置いている。

 逆に言うと、自我のある人達は、客観的な常識の下に主観的な感覚を置くことをしない。

 料理をブランドではなく自分の舌で味わうように、恋する他者を主観的に体験している。


 人の内面を正しく測るには?

 その人が実践する行動を確認したり、あるいは言動に欺瞞を嗅ぎ取ったりして、推測することもできる。

 しかし、目を覗き込んで、直接、心を見ることもできる。

 目には心の、莫大な情報量があって、感度の良い人達ほど、見つめ合うことで莫大な情報交換を行えている。


 目の中にある情報量に比べれば、目の外にある肉体や世界なんて、実体のない夢のようなものだ。



 異星人は実在していて、人間の子供達に少数だが混ざって生まれてくる。

 異星人達は、周囲の大人達の思考のロジックに、知的限界を感じている。

 学校で勉強をしたほうが偉くなれると言われても、異星人達にはジョークにしかならない。

 資産を形成して周囲から尊重される人生が幸福だと言われても、異星人達にはジョークにしかならない。


 なぜなら、常識と正義とはあまりにも乖離しているから。

 人間の社会で地位を得るのは、有能というよりも俗物だから。

 俗物つまり派閥と保身で生きる者でなければ、人間の社会で高い地位を得られない。

 異星人が高い経歴や財産を形成することもあるが、本人はそれに価値を感じない。


 異星人は自身の目が賢いから、ブランドで他者をジャッジする必要が初めからない。

 異星人は、ジャッジしない。

 自我のある者にとってほど、社会における権威の階級や、常識的に定義される暗黙の貴賤が意味をなさない。

 地位や経歴の悪い有能がいても、地位や経歴の高い無能がいても、異星人は少しも驚かない。


 与えられた価値観でジャッジしない者達は、そのように、常識の外側で生きている。

 ジャッジしない者達にとって、ジャッジする人々にとっての唯一無二の現実世界は、何の価値もない夢にすぎない。

 そして、異星人達は、異星人であることを自覚している。

 異星人であることによって資産や命、家族や幸福を奪われても、異星人であることを譲ろうとはしない。


 異星人は、常識の外側で見つめ合う。

 美しい他者が結果的に異性であったり、美貌や資産を備えていることがあるかもしれない。

 しかし、美貌や資産、性によって他者を選び、その結果として相手が美しいということはありえない。

 それが絶対にありえないと知っている異星人達にとっては、物質世界は夢にすぎない。


 異星人は見つめ合い、主観的に体験される情報としての他者とともに生きている。

 互いの自我によって、互いを深く愛している。

 そのように運命の相手との恋を楽しみ、自我よりも価値のあるものは他にないと考えている。

 自らの舌で味わってこそ、世界は彩りに満ちているからだ。



 このように、運命の人とする恋ほど、すばらしいものはない。

 だから、恋は、運命の人とするのがいい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ