クレセントムーンという名をくれたから。
「なろうラジオ大賞5」参加作品です。
ヒューマンドラマ、かな?ジャンル迷子です。
「ミカ、ただいま~」
「うにゃん!」
僕の飼い主が帰ってきたにゃ。
いつもお仕事ご苦労様にゃ。ご飯いっぱいとれたかにゃ?
「はー。疲れた。すぐご飯用意するからね~」
「うにゃにゃ!」
飼い主はいつも僕のご飯をいっぱいとってきてくれるにゃ。なかなか仕事のできる優秀な飼い主にゃ。
「はい、ミカ。いっぱい食べてね」
「にゃふふ! にゃふふ!」
飼い主のとってくるご飯はいつも美味しいにゃ。
「ふふ。ミカはかわいいね」
僕は本当は男の子にゃ。でも飼い主は女の子みたいな名前を僕にくれたにゃ。
三日月の夜に僕のことを拾ってくれたから、三日月のミカにしたらしいにゃ。
「にゃふ~」
「ふふ。落ち着いたわね」
ま、名前なんて何でもいいにゃ。飼い主が一緒にいてくれるなら、呼んでくれるなら、僕は何でもいいにゃ。
「……ふう」
「うにゃん?」
飼い主はたまにすごく疲れた顔をするにゃ。
やっぱりお仕事は大変みたいにゃ。いつもいっぱいご飯をとってきてくれるけど、やっぱり疲れるんにゃ。
「ごろにゃん」
「……ふふ。ありがと」
せめてスリスリするにゃ。
飼い主にはいつも笑っててほしいにゃ。
「……ただい、ま」
「うにゃ……にゃっ?」
「……」
どうしたにゃ?
飼い主が泣いてるにゃ。ご飯とれなかったにゃ?
「……ぐす」
大丈夫にゃ。僕、ちょっとぐらいなら我慢するにゃ。
「……ごめんね、ミカ。すぐご飯用意するね」
「……うにゃん」
ご飯、あるのかにゃ?
無理しなくてもいいにゃ。
「はい。ゆっくり食べてね」
「うにゃん!」
ご飯にゃ! 美味しいにゃ!
「……」
「……うにゃ?」
ご飯は美味しいけど、飼い主が泣いてるからいつもより美味しくないにゃ。
「ごろにゃん」
ご飯は途中だけど、慰めるにゃ。
「……慰めてくれるの?」
泣くのは悲しいにゃ。
僕もお母さんが死んじゃった時はいっぱい泣いたにゃ。いっぱい泣いてお腹すいて、もうダメだって思ったら飼い主に拾われたにゃ。
優しくて温かい飼い主。ミカって名前をくれた飼い主。いつもご飯をくれる飼い主。
「……ミカは温かいね」
泣きながら抱きしめてくれる飼い主。
僕を温かくしてくれたのは飼い主にゃ。
だから、今度は僕も飼い主を温かくするにゃ。
「ちょっとね。お仕事で悲しいことがあってね」
「うにゃん」
いっぱい聞くにゃ。
僕にはよく分かんないけど、いっぱいお話聞いて、いっぱい温かくするにゃ。
僕をミカにしてくれた飼い主を、僕が守ってあげるのにゃ。
「……ありがとね、ミカ」
「ごろにゃん」