あなたの小説になりたい
私は小説。
私は作者さんによって書かれたものだ。
作者さんは私を溺愛してくれて、まるで自分のものみたいに好いてくれるけど、はっきりいって私は作者さんのものではない。一人立ちした、立派な一人の人間なのである。
私だって恋がしたい。
素敵な読者さんと知り合って、彼の頭の中で裸にされて、あれやこれやと妄想されて、私も彼の中にあるしりこだまみたいなやつを探り当てて、それを見てみたい。そいつと出逢いたい。
私は作者さんの箱入り娘ではないのである。
私は狭いカゴの中の鳥ではないのである。
私だって、外の世界へ出ていって、恋がしたい。
素敵な恋が、したーい。
誰か、私を恋人にしてよ。
お嫁さんに貰ってくれたら、もっと嬉しいよ。
はっきりいって、イビツな姿かたちだし
はっきりいって、性格もいいとこばっかりじゃないけど
これで結構いいとこはいいんだから!
作者さんの自己宣伝なんかじゃないから!
ほんとうに、いいとこあるんだから!
……たぶん。
あなたが見つけてくれたら嬉しいな。
私の知らない、私のいいとこ。
そう思いながら、そう願いながら
私は広い世界に旅に出た。
色んな知らない人や、私の作者さんのお友達の中へ
自分を晒す旅に出た。
うっ……、怖い。
でも自分を信じるんだ。
きっと、誰か、私を好きになってくれる人はいて
私はその人の小説になれるんだって。
そうなったら、もう……
私、私じゃなくなっても構わない。
きっと幸せが過ぎて
書籍化したりして?
たとえそうはならなくてもいい。
あなたの小説になりたいな。
私のこと
一人の小説として
大切にしてほしいな。
作者さんは書いただけ
あなたは読んで感じただけ。
私は私だもの
嫌いなら嫌いでいいよ。
あなたはツンデレなんだね
だって嫌いは好きの裏返し。
でも
ブラバだけはやめてほしい。